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イスラエルのモサド、諜報技術を持つスタートアップに投資ファンド

佐藤仁学術研究員・著述家

イスラエル諜報特務庁であるモサドは、諜報に役立つ技術やプロダクトを開発しているスタートアップに向けた投資ファンドを設立することを2017年6月に明らかにした。イスラエルは特にサイバーセキュリティに関する製品は強い。サイバーセキュリティ分野に限らず、人工知能やロボット、暗号、プロファイリング、バイオ工学、エネルギーなどモサドの諜報活動に貢献できるような技術やプロダクトを持っている会社であれば、提案してほしいと呼び掛けている。

まるで近未来的な諜報技術

投資ファンドの名前は1940年にユダヤ人移民を現在のイスラエルに運んだ船にちなんでLibertad。投資ファンドと言っても、一般的な投資のように出資するスタートアップの株式保有ではなくて、開発された技術の使用ライセンスをモサドが取得する。1つの案件で最大200万シュケル(約6,500万円)まで投資する。モサドはまずは1年間で5つの案件に投資する予定。

以下がモサドが公開した動画「Libertad- The Mossad Technological Innovation Fund」

コンタクトレンズを着装し、そのレンズを通して街行く人と容疑者のプロファイルをマッチング。容疑者と一致するとその情報を瞬きしてメールで送るというもはや近未来のような世界の技術だ。だが、このような技術が実現するのも時間の問題だろう。

「ユダヤ人の国家を守る」という強い信念

イスラエルは特にサイバーセキュリティが強いが、まさに「情報がユダヤ人にとって命脈」だからだ。敵の情報を精確に知るためにハッキングを行い、ユダヤ人の安全を確保することが重要だ。さらにあらゆるシステムがサイバースペースに依拠するようになった現在、敵のインフラへサイバー攻撃をしかけてシステム破壊を行うと同時にイスラエル国内のシステムを敵からのサイバー攻撃から徹底的な防衛を行っている。

イスラエルの技術やプロダクトの根底には「2度とホロコーストの犠牲にならない」「ユダヤ人の国家を守る」という強い信念を感じるものが多い。モサドからの投資でサイバーセキュリティ分野だけでなく、イスラエルの諜報技術はさらに強化されるだろう。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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