ドローンが撮影したアウシュビッツ強制収容所:2016年は過去最高205万人が訪問

(写真:ロイター/アフロ)

第2次大戦中にナチスドイツが600万人以上のユダヤ人やロマを大量虐殺したホロコースト。そのホロコーストの象徴ともいえるアウシュビッツでは110万人以上が殺害された。つまりホロコーストの犠牲者の5~6人に1人がアウシュビッツで殺されたのだ。

2015年にドローンで撮影、1390万回を超える再生

ナチスがポーランドに設置したアウシュビッツは1月27日に解放された。そのため1月になると欧米のメディアはこぞってアウシュビッツやホロコーストの特集番組を行う。特に2015年は解放70年という節目の年だったことから世界中のメディアが特集をしていた。その中でも一番注目を集めていたのがBBCが作成したドローンによるアウシュビッツ強制収容所の撮影した動画だった。

アウシュビッツは世界史上最大の絶滅収容所として現在でも「恐怖の残骸」として残存しており、まさに怪物のようである。ドローンによって撮影されYouTubeにアップされた動画はショートバージョンで2年間で1390万回以上も再生。ロングバージョンは326万回以上再生されている。

アウシュビッツのガス室から生還した人は一人もいないが、アウシュビッツから生還した人は10万人以上もいた。しかし高齢化が進み、強制収容所の地獄の様子を語り継げる人々は年々少なくなってきている。情報発信力があるBBCがドローンを用いて撮影し、現在の全世界にアウシュビッツの様子を発信している。もちろんドローンでの撮影だけで、その無機質な跡地からは当時の地獄の様子は伝わらないかもしれない。それでも映像としてアウシュビッツを確認することができる。

▼ロングバージョンの動画。

2016年には大幅増の205万人が訪問

アウシュビッツ絶滅収容所に2016年の1年間に世界中から205万人が訪問した。前年よりも33万人も増加し過去最高の訪問者数になったと2017年1月に発表された。訪問者の国別ではポーランドが42.4万人、イギリス27.1万人、アメリカ21.5万人、イスラエル9.7万人、ドイツ9.2万人とほとんどがホロコーストと関連のある国からだ。

特に2016年7月にポーランド南部でカトリックの若者の祭典「世界青年の日」が開催され、多くの若者がアウシュビッツも訪問したことが増加の一因らしい。ローマ・カトリック教会のフランシスコ法王も2016年7月にアウシュビッツを訪問。多くのユダヤ人が銃殺された「死の壁」で黙とうをささげ、ホロコースト生存者たちと面会もしたことで話題になっていた。

アウシュビッツでは狂気の大量虐殺計画に沿って、最後の一人まで寸分の狂いもなく機械的に殺害された。アウシュビッツが悪名高い1つの要因は、人間処理工場としての効率性があげられる。絶滅収容所の役割は財産の押収と殺害であり、それらはシステマティックに組織的に行われていた。強制労働や実験への囚人の利用は絶滅への通過点に過ぎなかった。夥しい数の遺品、収容者の頭からそり落とした大量の頭髪、ガス室、バラックの跡などが展示されている。アウシュビッツで起こったことに疑いの余地はない。この「地獄の跡地」は世界史上における1つの警告の碑である。

絶滅収容所は訪問して決して気持ち良いものではないし、日本からは不便な場所にあることからアウシュビッツを訪問する日本人は決して多くない。だが、アウシュビッツの現場は「ドローンで撮影された映像をスマホで見る」だけではわからない空気が今でも感じられる。

▼日本ではあまり話題にならなかったが、2016年9月にはアウシュビッツに送られガス室で殺害された子供のおもちゃだった見られるミッキーマウスの磁器の置物が発見され、欧米では大きな話題となっていた。持ち主が誰だったかはわからない。アウシュビッツでは23万人以上の子供が殺害された。

▼さらに2016年10月にはアウシュビッツ施設で保守作業中に屋根裏でマッチ箱よりも小さな木靴のアクセサリーが発見された。アウシュビッツに送られた女性が所有して隠していたものと思われる。囚人の所有物は根こそぎ押収された。私物を勝手に所有するだけで処刑されていたアウシュビッツでこのようなアクセサリーを所有していたことは「ささやかな抵抗の証」とニュースになっていた。70年以上が経った現在でもまだアウシュビッツの歴史は終わっていない。

▼1390万回再生されたショートバージョンの動画