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「歩きスマホ」でホームから転落死:「自分だけは大丈夫」ということはない

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

駅や道路での「歩きスマホ」は日常の風景になっており、トラブルが多発していることから注意喚起のアナウンスやポスターなども多く行われている。2016年5月には駅のホームで「歩きスマホ」をしていたら転落して死亡するという悲惨な事件が起きたようだ。朝日新聞が報じているので、以下に一部を引用しておく。

歩きスマホ、死に至ることも 画面見てイヤホン…転落

歩きながらスマートフォンの画面を見たり操作したりする「歩きスマホ」が原因の事故が絶えない。人で混雑する場所での衝突や駅のホームからの転落事故――。消防や鉄道会社、携帯電話会社が注意を呼び掛け続けているが、今月(2016年5月)13日には電車にはねられ死亡する事故も発生した。

東京都品川区にあるりんかい線天王洲アイル駅。13日朝、都内の大学に通う20代女性がホームから転落し、走行中の電車にはねられ亡くなった。警視庁品川署によると、女性はスマホの画面を見ながらホームを横切るように歩いていた。耳にはイヤホンを付けていたという。

2002年に全線開通したりんかい線で、ホーム内での死亡事故は、これが2件目だった。事故を受け、列車を運行する東京臨海高速鉄道は線内7駅のホームに「歩きスマホ 大変危険です」と注意を促すB2判のポスター計28枚を掲示。これまでもホームや車内のアナウンスで注意を促していたが、同社担当者は「痛ましい事故を起こさないために引き続き(危険性を)周知していく」と話す。後略

出典:朝日新聞 (2016年5月30日)

それでも減少しない「歩きスマホ」

駅では混雑していようとも多くの人がスマホを見つめている。スマホを手に持たないと駅で電車を待つこともできないし、乗り降りもできないのではないかと思うくらい、多くの人がスマホを手に持って見つめている。そしてそのまま歩いて「歩きスマホ」になる。

駅のホームでの「歩きスマホ」による転倒や衝突でトラブルも発生している。まして線路への転倒すれば、どれだけ危険なのかは想像すれば誰にでもわかるだろう。現在、多くの駅でホームドアの設置が進んでいるが、それでもまだ全ての駅で導入されているわけではない。「白線の内側におさがりください!」と駅員が大きな声で注意放送をしていても、スマホに集中しているから、聞こえないのだろう。しかもイヤホンをしている人も多い。さらに「歩きスマホ」をしている人は、自分のことを放送で注意されていることに気がついてない。ホームドアがない駅では、電車に接触しそうな距離で「歩きスマホ」をしている人もいて、非常に危険である。

「歩きスマホ」は危険であることから、駅では鉄道会社や携帯電話会社らが「歩きスマホ」をやめるようにポスターを掲載したり、放送で積極的に注意喚起を呼びかけている。しかし駅で「歩きスマホ」をしている人は一向に減らない。「歩きスマホ」をしているから目と脳はスマホの中のSNSやゲーム、メッセージなどに集中しているから、ポスターにも気が付かないだろうし、注意喚起の放送も耳に入らない。

「自分だけは大丈夫」ということはない

そして「歩きスマホ」をしている人は「自分だけは大丈夫」という自己中心的思考に陥ってしまっている。そして衝突すると、自分は「LINEしてんだから」「ゲームしてんだから」「SNS見てんだから」と、自分の不注意を棚に上げて、まるでぶつかった相手が悪いかのように怒りを表すことが多い。さらに電車に乗る時も降りる時もスマホの画面を見ているから、スムーズに乗降できないので電車遅延の要因にもなる。

「歩きスマホ」で「自分だけは大丈夫」ということは絶対にない。視線と神経がスマホに集中しているから、周囲に目が届かないし、周囲の動きに気が付かない、また気が付いてからも今まで神経はスマホに集中していたから咄嗟の判断と動きが鈍くなる。ましてイヤホンまでしてたら、聞こえも悪いからますます危険である。そのような状態で歩いている人が駅にはたくさんいる。また「歩きスマホ」は自分が線路に転落するだけでなく、ぶつかった相手を転落させてしまったり怪我をさせてしまったりと加害者にもなりかねない。

スマホを見る必要があるなら、安全な場所で立ち止まって確認すればいい。スマホの世界的な規模での普及によって「歩きスマホ」による事故は日本だけでなく世界規模での社会的課題になっている。そして「歩きスマホ」が危険だと頭では理解しているが、ついやってしまい、やめられないのだ。だが「歩きスマホ」は命をかけてまでやることではない。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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