スマホやケータイも持てない「最も弱い立場にいる」親のいないシリア難民の子供たち
先日、シリア難民は『スマホやケータイを持っていた人たちが難民になった』という記事をお届けした。トルコや欧州にいるシリアからの難民はたしかに、スマホを所有していて、シリアにいた時から友人や知人、親戚らとSNSやメッセンジャーで情報発信やコミュニケーションを行っており、欧州に行ってからも、そのままスマホを所有してSNSなどで積極的に情報発信やコミュニケーションを行っている。しかし、それはシリア難民でも大人で、ある程度の収入があって生活基盤がある層の話だ。
スマホやケータイも持てない親のいない難民の子供たち
シリア難民の中でも一番立場が弱いのは親のいない子供の難民である。彼らはスマホもケータイも所有していないし、SNSで情報発信もできない。そしてこれからの人生、どうなってしまうのか先も見えない状況にいる。
ユニセフによると、現在22,000人以上の移民・難民の子供たちがギリシャで足止めされており、先が見えない状況と拘留状態にさえ直面している。 保護者の同伴のない、または保護者と離ればなれになった子供たちに対する保護や支援は、既にギリシャの対応能力を超えている。収容する場所がないため、ますます長期間にわたって多くの子供たちが一時的な「保護拘置」や、閉鎖的な一次収容施設や警察施設内で、事実上の拘留状態に置かれているそうだ。
2016年1月から3月半ばまでの間、保護者の同伴のない、または保護者と離ればなれになった1,156人の子供たちがギリシャで登録された。この登録率は2015年同期比で3倍以上の増加である。親のいない子供たちは、最も弱い立場にあり、ギリシャの難民・移民の子供たち全体の約10パーセント(約2,000人)に相当するが、全員が登録されているわけではない。つまり不法で滞在しているため正確な数字は把握できず、もっとたくさんいることが予想される。
そしてギリシャの島々からトルコへの送還も確認されている。しかしトルコは現在既に270万人を超えるシリア難民を受け入れている。ユニセフは2012年以来、シリア難民の子供たちとその家族たちを支援している。2015年にはユニセフは政府やパートナー団体と協力しながら、40万人以上のシリアの子供たちに対して、教育、保護、基本的な社会サービスに関する支援を行ってきたそうだ。
戦争から逃れ、生存を求めるのは決して犯罪ではないが
ユニセフのヨーロッパ難民危機特別 コーディネーターであるマリーピエール・ポワリエールは以下のように述べている。「幼い子供も若者も、家族がいようといまいと、いかなる子供に関するあらゆる決定は、その子供の最大限の利益により導かれなければなりません。子供たちの声に耳を傾ける必要があります。送還の軽率な決定は性急な結果を招き、子供たちを恐怖と暴力の地へ戻すことになります。子供たちは、出身に関わらず、常に基本的なサービスにアクセスできなければなりません。ユニセフは、一部の子供たちが移民という立場ゆえに拘束されているという報告に関して懸念しています。戦争から逃れ、生存を求めるのは決して犯罪ではありません」
たしかに欧州やトルコなど周辺諸国にいるシリア難民の多くがスマホやケータイを所有しており、SNSでの情報発信やコミュニケーションも行っている。それも事実であるが、中には親を失ってしまい、スマホやSNSどころか「自分の人生をこれからどうやって切り開いていけばいいのか露頭に迷っている子供や孤児」も多い。シリア国外にいるから言葉もわからないし、学校にも行けない。自国に戻ることもできない。そして親だけでなく友達もいないし、親戚も近くにいない難民の子供もいる。さらに難民にもなれずにシリア国内で紛争の中での生活に苦しんでいる人も多くいることも忘れてはならない。これは大昔の話ではなく、まさに現在進行形の話である。