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LINE、徹底したローカライズでインドネシアにおいてシェアを順調に拡大

佐藤仁学術研究員・著述家
(C) JKT48 Project

LINEは2015年10月29日、2015年第3四半期(7~9月期)の業績を発表した。売上高は前年同期比35%増の322億円。月間アクティブユーザー数は全世界で約2億1,200万人となった。

■LINEのグローバル展開:インドネシアで順調な拡大

LINEの月間アクティブユーザー数はグローバルで約2億1,200万人のうち、トップ4カ国(日本、タイ、台湾、インドネシア)では更なる成長を続け、約1億3,700万人となった。2015年Q2に引き続き急速にユーザー拡大を続けるインドネシアをはじめ、アジア地域に注力し、シェアを拡大していることを明らかにした。

LINEの出澤社長は、2015年Q2の業績発表時には以下のようにコメントし、インドネシア市場での取組みを表明した。

2015年の戦略キーワードの1つである「グローバル展開」については、徹底したローカライズにより、各国ごとに着実にトップシェアを獲得していくことに注力しており、なかでも注力地域であるアジア地域では特にインドネシアにおいて成果を出していきます。引き続き、インドネシアでのトップシェア獲得のための活動を行いつつ、インドネシアで習得した海外におけるユーザー獲得ノウハウの応用や、軽量版LINE「LINE Lite」の提供などにより新たな地域でのシェア獲得を推し進め、グローバル展開をさらに加速していきます。(2015年7月30日のLINEリリースより)

そして今回のQ3の業績発表時には、インドネシアでのシェアを順調に拡大していることを明らかにした。また今後もアジア諸国でのトップシェア獲得を目指していくことを強調した。

2015年Q3はQ2に引き続き、インドネシアにおけるシェアを順調に拡大させてまいりました。引き続き、徹底したローカライズによりトップシェアを確立していくとともに、アジア地域にフォーカスを当て、様々なチャレンジを通して次なるトップシェア獲得国の創出を図っていきます。Q4では、「LINE」をプラットフォームとしてより洗練されたものにすべく、事業成長スピードをこれまで以上に加速させてまいります。(2015年10月29日のLINEリリースより)

■インドネシアでのローカライズ:現地で大人気のアイドルグループJKT48とのコラボ

JKT48仲川さんのスタンプ (C) JKT48 Project
JKT48仲川さんのスタンプ (C) JKT48 Project

インドネシアで順調に利用者が拡大しているLINEはメッセンジャーアプリ以外にも、ゲームも提供している。インドネシアで特に人気があるのが、「LINE Let’s Get Rich」や「LINE Rangers」だ。インドネシアでも大人気のゲームアプリ「LINE Let’s Get Rich」に2015年10月からインドネシアで大人気のアイドルグループJKT48の3名を起用した。日本で展開している「LINE ゲットリッチ」のローカライズである。

JKT48は日本のアイドルグループAKB48の海外姉妹グループで、インドネシアでも若者を中心に大人気である。劇場公演や握手会には多くの若者が集い、テレビや広告などで目にしない日はないくらい有名だ。今回起用されたメンバーはフェランダ、仲川遥香、メロディーの3名はJKT48の「総選挙」で1位から3位までのトップ3のメンバーである。「LINE Let’s Get Rich」の中でJKT48のメンバーはゲームをプレイする際のキャラクター(カード)として登場する他、ゲーム内のテーマソングも歌っている。またメッセンジャーアプリLINEのスタンプとしても登場する。

JKT48も日本のAKB48がインドネシア市場でローカライズされて現地で大活躍しているアイドルグループである。そのJKT48をLINEのゲームやスタンプのコンテンツとしてローカライズすることによって、LINEはインドネシア市場でのトップシェア確立を目指している。

ゲームキャラクターになったJKT48メンバー (C) JKT48 Project
ゲームキャラクターになったJKT48メンバー (C) JKT48 Project

■競争激しいインドネシア市場

インドネシアではスマートフォンの普及に伴って、多くのメッセンジャーアプリが利用されてきている。ジャカルタでは若者のほとんどがスマートフォンを利用しており、そしていくつものメッセンジャーアプリを楽しんでいる非常に競争が激しい市場である。最近ではFacebookのMessengerの利用者が急速に増えている。LINEがインドネシアで人気が出てきた要因の1つにスタンプ(インドネシアではスティッカー)のキャラクター人気があったが、最近では他のメッセンジャーアプリでも多くのスタンプが登場してきている。今回LINEがJKT48のスタンプを提供することはLINEにとって大きな差別化となる。

そしてFacebookやTwitterもインドネシア人には大人気である。LINEもインドネシアでは、LINE IndonesiaのFacebookページLINE IndonesiaのTwitterも利用して新たなサービスの紹介などの積極的な情報発信を行っている。

■次なるトップシェア獲得国の創出

LINEのグローバル展開で目立っているのはインドネシアだけではない。TVアニメ「ONE PIECE(ワンピース)」を題材としたゲーム「LINE: ONE PIECE 秘寶尋航」を台湾・香港・マカオでリリースし、台湾ではApp Storeの売上ランキングで1位を獲得している。また、日本で提供されている音楽配信サービス「LINE MUSIC」はタイでも提供されている。ほかには、自撮り専用カメラアプリ「B612」がアジア、中南米地域に加えて東ヨーロッパ地域などを中心にユーザーを拡大し続け、世界累計1億ダウンロード、月間アクティブユーザー数が5,000万人を突破するなど、グローバル規模でLINEのサービス、ゲームは拡大している。インドネシア、台湾、タイに次いでLINEがトップシェアを獲得するのはどこだろうか。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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