マイクロソフトは2015年7月22日、「Microsoft Garage」で開発されたメッセンジャーアプリ「Send」を発表した。アメリカとカナダでiOS向けアプリの提供を開始しており、近日中にWindows PhoneとAndroid OS向けアプリを提供する予定。マイクロソフトのアプリなのにWindows Phoneが後手に回っているのは、アメリカとカナダでのiPhoneユーザーが圧倒的に多いことと、Windows Phone利用者は残念ながら非常に少ないからだ。日本やその他の地域でのリリースは不明である。

■Sendは、まずは企業や学校でOffice 365のメール利用者が対象

「Send」は当初は企業(法人ユーザー)および学校向け「Office 365」のメールアカウントを所有しているユーザーを対象に提供し、数カ月以内に利用対象を拡大していく。Office 365のメールアカウントと連携しており、メールで頻繁に連絡を取る相手をリスト表示される。その中からメッセージを送りたい人をタップして送信するだけ。

マイクロソフトはリリース内で、SMS(ショートメッセージ)やIM(インスタントメッセージ)などはメッセージのやりとりに適しているが、同僚の電話番号を知らないことも多く、仕事用の携帯電話にはIMアプリが入っていないこともある。また、Outlook以外のアプリからメッセージも、仕事関連のメッセージやメールは全てOutlook上で管理できるようにしたいとの要望が多く寄せられていたと述べている。

■Sendの利便性は高いのか?

アメリカではFacebookが提供しているMessengerやWhatsAppといったメッセンジャーアプリが大人気である。職場の同僚でもそれら既存のメッセンジャーアプリで繋がっており、メッセージのやり取りをしていることが多い。また緊急時には仕事用の電話番号を上司も部下も把握しているから、たいていは電話やSMSが可能である。

むしろ職場のメールアカウントしか知らない人にもメッセンジャーでメッセージを送らなくてはならないシーンがどのくらいあるのだろうか?仕事での繋がりしかない上司や取引先から突然、メッセンジャーが届くのも不愉快ではないだろうか。そのようなメッセージが嫌な人はSendのアプリをインストールしなければよいのだが、仕事の携帯電話に業務命令として仕方なくインストールを求められるかもしれない。

そしてSendのメッセージもOutlookで管理できることが特徴のようだが、本当に会社でOutlookに全てのメッセージを集約したいのだろうか。メッセンジャーでやりとりしている内容は日本でもアメリカでもプライベートな些末なものが多く、かえってOutlookはジャンクメールで溢れかえってしまわないのだろうか。メールだけでも多すぎるのに、メッセンジャーまで集約されたら管理も面倒そうだ。利用者のモラルが問われるアプリだ。

■かつて無料通話の代名詞だったマイクロソフト傘下のSkype

スマートフォンの普及に伴って、メッセンジャーアプリも世界中でいっきに拡大してきた。日本ではLINEが有名で一番利用されている。世界規模でみるとWhatsAppやFacebookのMessengerがよく利用されており、全世界で7億~8億人が利用している。誰でも簡単に利用できることから世界中で利用されている。メッセンジャーアプリでメッセージ、音声通話やテレビ電話、写真や動画の送受信などが可能である。

スマートフォンが普及してメッセンジャーアプリがここまで普及する前まで、同様の役割はSkypeが担っていた。かつてはパソコンでSkypeを利用して無料で通話をしていた人が多かった。欧米や新興国でもインターネットカフェや大学のパソコン室では多くの人がパソコンを前にしてSkypeを利用していた。スマートフォンのアプリと違って、相手がパソコンの前にいなくてはならなかったので家の固定電話のようなものだったから、相手のスケジュールに合わせて自宅や大学のパソコンでSkypeを利用していたことを懐かしむ人も多いだろう。IP電話とか言われていた時代であるが、まだ数年前の話である。

Skypeはスマートフォンでも利用可能であるが、これだけ多くのメッセンジャーアプリが世界中で登場している現在においてSkypeの存在感は小さくなってきてしまった。マイクロソフトはSkypeを2011年に85億ドル(当時で約6,540億円)で買収しており、現在でもSkypeはマイクロソフトのサービスである。昔からSkypeを利用していた人にとってはSkypeはパソコンでのサービスのイメージが強い。そしてスマートフォンからメッセンジャーアプリを利用開始したアジアなど新興国の若者はSkypeを知らない人や利用したことがない人も多い。

■個人向けよりも法人向け

世界規模でメッセンジャーアプリが普及してきた現在、Skypeが再び台頭し、WhatsAppやMessengerに比肩するとは考えにくい。マイクロソフトにとってはSendという新たなメッセンジャーアプリでのOutlook利用促進も重要だろうが、85億ドルもかけて買収したSkypeのテコ入れも重要であろう。Skypeでもビジネスユーザー向けの有料サービスを以前から提供している。

メッセンジャーアプリ自体で収益を上げるのは非常に難しい。MessengerもWhatsAppもそれ自体では儲からないでFacebookの広告収入に依拠している。LINEの収入源もゲームとスタンプ販売で、メッセンジャーではない。そのような中でマイクロソフトのメッセンジャーアプリは個人のユーザーに提供していくよりも、付加価値をつけてビジネスユーザー(法人向け)に「Skype for Business」を積極的に提供していく方が賢明であり、マイクロソフトの方向性とも合致しているだろう。これから先、SendとSkypeの棲み分けはどうなるのだろうか。

▼マイクロソフトのメッセンジャーアプリ「Send」

(Microsoftリリースより)
(Microsoftリリースより)
(Microsoftリリースより
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