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メーガン妃とハリー王子は写真を撮られたかった。新たに出てきた“カーチェイス”事件の詳細

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 メーガン妃とハリー王子がニューヨークでパパラッチに追いかけられる恐怖体験をしたと訴えた件が、まだアメリカを騒がせている。

「2時間以上のカーチェイス状態になり、ほかの車、歩行者、警察官を巻き込む衝突が複数起きた」と夫妻のスポークスパーソンが声明を出した瞬間から、ソーシャルメディアには「いつも混んでいるマンハッタンでそんなことがありえる?」「本当ならば、なぜまるでニュースが扱わなかったのか」など、疑問の声が上がった。テレビでも、ウーピー・ゴールドバーグが、ニューヨークでハイスピードのカーチェイスをすることが可能なら「劇場に遅れていく人はいないでしょう」と皮肉なコメントをしている。警察の声明や、途中からタクシーに乗り換えた夫妻を目的地まで送った運転手の話を総合しても、パパラッチは着いてきたもののカーチェイスと呼ぶにはほど遠く、衝突や怪我とは無縁で安全だった、というのが事実と思われる。

 そんなところへ、メーガン妃とハリー王子はパパラッチに写真を撮られることを望んでいたようだとの情報が出てきた。

 夫妻の警備を務めるのは、オバマ元大統領のシークレットサービスのひとりだったクリス・サンチェスという大ベテラン。「裏口の王」とも呼ばれるサンチェスは、誰にも見られずに外に連れ出すエキスパートと言われる。だが、メーガン妃とハリー王子はあえてパパラッチが待ち構える正面玄関からイベント会場を出てきたのだ。実際、サンチェスに付き添われて外に出てくるゴールドのロングドレス姿のメーガン妃のパパラッチ写真は出回っている。それを見て、夫妻のスポークスパーソンは「この夜の写真で最も素敵なもののひとつ」と喜んだとの報道もあるほどだ。せっかく着飾って晴れの場に来たのだからそこは撮影してほしいが、車に乗った後まで着いて来られると宿泊先がばれるからまずいと思ったということだろうか。

 さらに、そもそもの原因はメーガン妃とハリー王子がケチだったことにあるという不名誉な情報も浮上した。夫妻は故ダイアナ妃のお気に入りでもあったザ・カーライルに宿泊を希望し、大幅なディスカウントを要求したのだが、ホテル側に拒否されて、友人の家に泊まることにしたのだというのだ。セレブ御用達の高級ホテルであれば宿泊場所を秘密にする必要もないし、パパラッチもせいぜい外で待つしかない。ニューヨーク警察の関係者は、「Page Six」に対し、「みんなの安全のためにも彼らはどこかのホテルに泊まればよかったんだ。でも彼らはケチで、ただで泊まれるところを望んだ」とコメントしている。

彼らはなぜ話を盛ったのか

 いずれにせよ、メーガン妃とハリー王子は、ここまで話を盛らなくても良かったはずだ。ほかの車が衝突した、2時間以上のカーチェイスになったなど、ちょっと考えれば不自然だと感じることをわざわざ付け足すからボロが出るのである。正直に「友人の家に泊まっているのに、パパラッチに着いてこられて困りました」と言うにとどめておけば、批判されたり揶揄されたりすることはなかった。もっとも、今、ハリー王子は、お金を払うと言っているのにイギリス警察から警備を拒否されたことについてイギリス政府と争っているので、いかに自分たちが危険な立場にあるのか誇張したかったのかもしれない。しかし、イギリス政府だってばかではない。

 結局のところ、彼らはやはり被害者意識が強いのだろう。「かわいそうな私たち」をアピールしたくて仕方がない。それに、注目を集めるのも好きだ。「友人の家に泊まっているのに、パパラッチに着いてこられて困りました」では、インパクトが弱い。最終的にばれるとしても、もっと衝撃的なことを言ったほうが話題になる。

 そして案の定、我々はその思惑にうまく乗せられている。だが、これが続けば続くほど、彼らはジョークのネタにされるようになり、信じてもらえなくなるのではないか。最近はアメリカのアニメ番組からパロディにされたばかりだが、今、ソーシャルメディアでは、そのアニメのキャラクターがタクシーに乗っている画像が笑いを得ている。

 メーガン妃と夫妻のプロダクション会社アーチウェルは、最近、ハリウッドの大手タレントエージェンシーWMEと契約を結んだ。しかも、このエージェンシーのトップが直接担当するという力の入れようだ。すでにNetflixやSpotifyと大型契約があるが、エージェンシーはこの夫妻のために、さらにビッグなビジネスの展開を模索していることだろう。今のようにブランドの信頼性が揺るいでいる状態で彼らが思い描くようなキャリアが実現するのか、興味深く様子を見守りたい。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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