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メーガン妃夫妻、チャリティの仕事は週にたった1時間

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 英国王室を離脱した時、メーガン妃とハリー(ヘンリー)王子は「非営利団体を設立するなど、(人生の)新たなチャプターを歩みたい」と声明を発表した。彼らが創設したチャリティ団体、アーチウェル財団のウェブサイトには、夫妻の写真とともに、「ひとりひとりがコミュニティを変えられる。私たちみんなで世界を変えられる」というメッセージが掲げられている。

 しかし、アーチウェル財団は具体的にこれまで何をやってきたのか。Netflixで自分たちについてのドキュメンタリーを製作したり、Spotifyでポッドキャストをやったり、回顧録を書いたりなど、派手で、お金になる活動は目立つ夫妻だが、こちらはあまりスポットライトが当たってきていない。だが、先月、2021年の確定申告の内容がアーチウェル財団のウェブサイトで公表されたことで、少し事情が見えた。

 明らかにされた情報によれば、アーチウェル財団がこの年に集めたお金の総額は、1,300万ドル。そのうち300万ドルが、災害のあった地域の人たちに食事を提供する団体や、有色人種の女性のメンタルヘルスの手助けをする団体など、複数のチャリティに寄付された。

 だが、注目されるのは、ハリー王子とメーガン妃の実動時間だ。夫妻がこの財団のために仕事をしたのは、年間でわずか52時間。つまり、それぞれ1週間に1時間だけだったというのである。アメリカ版「Newsweek」の記事の中で、セス・パールマンという弁護士は(夫妻の弁護士ではない)、財団の役員の実動がその程度というのは「そう珍しいことではない」と弁護しているものの、アーチウェル財団の後に夫妻が創設した営利目的のアーチウェル・オーディオ、およびアーチウェル・プロダクションズに対する力の入れ方とまるで違っているのは、否定できない。

 もうひとつ気になるのは、1,300万ドルの出どころだ。このうち1,000万ドルは「非常に寛大な個人」から寄せられたとある。その“個人”はオプラ・ウィンフリーではないかとの憶測が聞かれるのだ。

 アメリカで絶大な影響力を持つウィンフリーは、2021年春、メーガン妃とハリー王子の独占テレビインタビューを行い、大きな視聴率を稼いだ。さらにその直後には、ハリー王子と一緒にApple TV+でメンタルヘルスについてのドキュメンタリーシリーズを製作している。ビリオネアのウィンフリーにしてみれば痛くもない金額で、非営利団体への寄付は節税にもなる。悪いことをやっているわけでもないが、もしこれが本当にウィンフリーならば、彼らの蜜月ぶりは、やはり相当だ。

メーガン妃は大統領選出馬を狙っている?

 また、この確定申告には、アーチウェル財団が、KLMSAという会社におよそ11万ドルを支払っていることも記載されていた。これはケイティ・マコーミック・レリヴェルドという広報のエキスパートが創設したPR会社。彼女は過去にミシェル・オバマ、ヒラリー・クリントン、ジョン・ケリーなどの広報担当者を務めた人物だ。

 メーガン妃は、2021年、民主党議員のナンシー・ペロシとチャック・シューマーに宛て、家族の理由のために有給休暇を取れることを国民の権利とする連邦レベルの法律を作ってほしいとお願いする手紙を書いた。スーザン・コリンズなど共和党の議員にも、同じ目的で直接電話をかけている(メイン州から選出された議員であるコリンズは、『メイン州の人たちの声ならば聞きたいけれど。皮肉にも彼女は自分でサセックス公爵夫人と名乗ったんですよ』とメディアに向けて語っている)。

 そんなメーガン妃には、大統領選挙に出ることを狙っているのではないかという噂が前から出ていた。そこへきて、今回、大物政治家に強いこの広報担当者にサービスを依頼していたことがわかり、その憶測がまたもや浮上することになっている。

 だが、もし選挙を助けてもらうために雇ったのであれば、アーチウェル財団の経費として計上するのはおかしい。それに、夫妻は常に「プライバシーがほしい」と訴えているのに(そのせいでパロディアニメまで作られてしまった)、選挙に出るとなれば、プライバシーや過去のことなど、あらゆることが表に出てくるのは必至だ。仮に当選したとしたら(絶対ありえないが)、毎日のようにライバルの党とその支持者から一挙一動を批判され続けることになる。とりわけメディア嫌いを公言しているハリー王子は、賛成してくれるのだろうか。

 おそらく、夫妻は本気ではないだろう。そのような噂が立つことでまたもや世間に話題を提供し、注目されるのを楽しんでいるだけかもしれない。あるいは、出馬を試みるだけでも、新たなドキュメンタリーか何かのネタにできると思っているのかもしれない。夫妻はNetflixと、ハリー王子は回顧録を出した出版社と、まだ複数の作品の契約が残っている。もちろん、アーチウェル財団を通じて真剣にチャリティ活動に取り組み、世界を変えていく様子をネタにするのもあるだろう。しかし、週1時間の稼働では、とてもじゃないが素材が足りなそうだ。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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