Yahoo!ニュース

ベン・アフレック夫妻のダンキン・ドーナツCMが大ウケ。「ブレイキング・バッド」パロディCMも

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
(Dunkin'/ YouTube)

 スーパーボウルはアメリカ最大のテレビイベント。今年は試合そのものも最後まで大接戦で盛り上がったが、コマーシャルもいつも以上にハリウッドスターが勢揃いで華やかだった。

 アメリカでは、シャネルやディオールなどトップブランドのミューズになるのは別として、映画スターは基本的にコマーシャルには出ない。しかし、その垣根は近年、薄れてきており、中でもこの時だけのために製作されるスーパーボウル用のコマーシャルには、最近、セレブの姿がよく見られるようになってきた。

 これは特別な機会であり、お祭り。自分たちでもジョークとして楽しもうというセレブの姿勢が伝わってくることも多い。夫婦で出演するケースもあり、昨年はスカーレット・ヨハンソンとコリン・ジョストが夫婦共演したし、その前にはジェイソン・モモアも妻と一緒に出た。

 今年は、ベン・アフレックが妻ジェニファー・ロペスと一緒にダンキン・ドーナツのコマーシャルに出演。マサチューセッツ州出身のアフレックが地元生まれのダンキン・ドーナツのファンであることは以前から知られており、それをジョークのネタにしたもの。このコマーシャルで、アフレックはダンキン・ドーナツの店員としてドライブスルーで働いている。そこへロペスが運転するミニバンがやってきて、「あなた、何をしているの?仕事に行くって出かける時、実はこれをやっていたの?」と問い詰める。

 この短いロペスの演技に対して、ツイッターには「彼女が今年見せた最高の演技」と、(おそらく本人にしたらそう嬉しくはないかもしれない)褒め言葉が寄せられた。つい1週間前のグラミー授賞式では、ロペスの横で退屈そうにしているアフレックの姿が話題になったことから、それと比較して「このベン・アフレックは最高に幸せそうに見える」とのコメントもある。

 一方、マイルズ・テラーと妻ケリー・スペリー、愛犬のフレンチブルドッグは、バドライトのコマーシャルで共演した。カスタマーサービスに電話がつながるのを待っている間、テラーがバドライトの缶を出してきて、ふたりは音楽に合わせて踊り出すというなごやかなものだ。

 ブラッドリー・クーパーは、携帯会社T-Mobileのコマーシャルで母と共演。彼らがコマーシャルを撮影しようとしている様子自体をコマーシャルにしたもので、クーパーが母にせりふを言わせようとしては笑うという、これまた微笑ましいもの。クーパーが「信頼してよ。僕は9回もノミネートされたんだから」と言って、母が「でも一度も受賞していないじゃない」というなど、自虐的なジョークも。それを受けて、「受賞と言えば、T-Mobileのネットワークは今年最も多くの国内の賞を受賞しています」というのがオチ。ほかにはシルベスタ・スタローンが娘たちと一緒にParamount+のコマーシャルに出ている。昨年はスタローンが主演する「Tulsa King」がParamount+で配信され、大ヒットした。

 一見何の関係もないジョン・ハムとブリー・ラーソンは、マヨネーズのブランド、ヘルマンズのコマーシャルで共演。彼らをつなげるのは、食べ物の名前がついているということ。彼らが冷蔵庫の中にいて、ハムが「どうして僕らは冷蔵庫の中にいるんだろう?」と聞くと、ラーソンが「私はブリー。そしてあなたは‥」と言って、ハムが「そうか!ハムとブリー(・チーズ)か!」と納得。冷蔵庫の中にはヘルマンズのマヨネーズも入っている。そこへコメディアンのピート・デビッドソンが冷蔵庫を開け、「僕は君らを食べるよ」と、マヨネーズ、ハム、チーズのサンドイッチを作る、という展開だ。

 ベン・スティラーとスティーブ・マーティンは、別々にペプシ・ゼロシュガーのコマーシャルに出演。どちらも「僕は俳優。演技とは、リアルに見せること」と言った上で、ペプシ・ゼロシュガーを美味しそうに飲み、「さて、今のは演技だったのでしょうか?それを見極めるには、あなた自身に試していただくしかないですね」と締め括る。

 懐かしの作品のキャストが再登場するものもあった。楽天のコマーシャルには、アリシア・シルバーストーンが「クルーレス」のシェールとして登場。スナック菓子ポップコーナーズのコマーシャルでは「ブレイキング・バッド」のキャストが再結集している。

 ほかに、ウィル・フェレルがNetflixとジェネラル・モーターズの共同のコマーシャルに、アダム・ドライバーがスクエア・スペース、エイミー・シューマーがGoogle Pixel、セリーナ・ウィリアムズがレミー・マルタンのコマーシャルに出演した。

 今年のスーパーボウルは、フォックスが中継。30分のスポット料金は700万ドル(約9億3,000万円)と過去最高だった。2017年から2020年の間は500万ドル台で推移し、昨年は650万ドルにアップ。そこからまた上がったわけだが、大半の枠はかなり早くに埋まったという。値段が高くても、企業にとってはそれだけの価値があるということだ。昨年のスーパーボウルは配信での中継も含め、全米で平均1億1,200万人が見た。今年はこれらのコマーシャルが何人の人に届いたのか、具体的な数字はまもなくわかる。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

猿渡由紀の最近の記事