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リチャード・ドナーが死去。「スーパーマン」「グーニーズ」「リーサル・ウェポン」の監督

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
(写真:REX/アフロ)

 クリストファー・リーヴの「スーパーマン」や「リーサル・ウェポン」全4作を監督したリチャード・ドナーが亡くなった。91歳。死因は明らかにされていないが、妻ローレンによると、重い病気を患っていたとのことだ。

 本名はリチャード・ドナルド・シュワルツバーグ。1930年、ニューヨークのブルックリン生まれ。祖父はブルックリンに映画館を所有、父は手先の器用さを活かして小さな家具製造ビジネスを経営していた。ドナーは最初、ニューヨーク大学で経営学を学んでいたが、途中で専攻を演劇に変更。しかし、マーティン・リットが監督したテレビドラマ「Of Human Bondage」に出演した後、リットから「俳優ではなく監督を目指せ」とアドバイスを受け、リットのアシスタントとして働くことになる。

 そこからテレビのキャリアがスタート。「ミステリー・ゾーン」「0011ナポレオン・ソロ」など、数多くの作品を手がけた。長編映画は1961 年の「X-15」(日本未公開)で初体験。その後はまたテレビの仕事に戻ったが、1976年の「オーメン」がヒット、次の「スーパーマン」(1978)も大成功して、本格的な映画監督となった。

 だが、その後に予想外の出来事が起きる。続編の「スーパーマンII/冒険篇」の一部は1作目と並行して撮影されており、すでにドナーが多くのシーンを撮影していたにもかかわらず、降板を強いられ、リチャード・レスターに監督の座を譲ることになってしまったのだ。ドナーはプロデューサーのピエール・スペングラーと仲が悪く、別のプロデューサーのアレクサンダー・サルキンドとイリヤ・サルキンドにスペングラーをクビにしてほしいと頼んだところ、逆に自分がクビにされてしまったのである。ドナーはこの映画にクレジットされることを拒否し、2006年、「スーパーマンII/冒険篇 リチャード・ドナーカット版」をDVDリリースしている。

 1980年には小粒なドラマ「サンフランシスコ物語」、1982年にはコメディ「おもちゃがくれた愛」を監督。その次の「レディホーク」で出会ったプロデューサーのローレン・シュラーと恋に落ち、映画の公開と同じ1985年に結婚した。ドナーは55歳で、これが初婚。シュラーは36歳で再婚だ。結婚した翌年、夫妻はプロダクション会社を設立。ドナーが監督した「ラジオ・フライヤー」(1992)を皮切りに、「フリー・ウィリー」(1993)、「X-メン」シリーズ(2000〜)、オリバー・ストーンの「エニイ・ギブン・サンデー」(1999)、「タイムライン」(2003)、「ダレン・シャン」(2009)、「デッドプール」(2016)などをプロデュースしていくことになる。

 その間、監督としては、スピルバーグが原案の「グーニーズ」(1985)、「リーサル・ウェポン」シリーズ(1987〜)、「マーヴェリック」(1994)、「陰謀のセオリー」(1997)などを手がけた。最後の監督作は2006年のブルース・ウィリス主演作「16ブロック」。

 ドナーと何度も組み、ドナーにとって息子のような存在でもあったメル・ギブソンは、「私の友達で、私の恩師。彼からはたくさんのことを学ばせていただきました。彼は才能があり、偉大。なのに、謙遜して『自分はただ交通整理をしているだけ』と言ったりしたものです。彼にはエゴがなく、他人にも同じようにしてもらうことを望んだのです」と声明を発表している。ダニー・グローヴァーも「『リーサル・ウェポン』でディック・ドナー、メル・ギブソンと仕事をしたことは、私がキャリアで最も誇りに思っていることです。ディックは私のこと、私の人生や家族のことを、本気で気にかけてくれました」と、声明でドナーの温かい人柄を褒め称えた。

 スピルバーグも、「彼の仲間であるのは、一番好きなコーチ、最も頭の良い教授、最も強烈なモチベーター、最も親しい友達、最も信頼できる味方と一緒にいるようなものでした。そして彼は最高のグーニー。彼はいつも子供心があり、ハートがありました。彼がいなくなったなんて、信じられません。でも、彼のハスキーで温かい笑い声は、私の中にいつまでも残るでしょう」とコメントをした。ザック・スナイダー、エドガー・ライトなども、お悔やみのツイートをしている。

 ご冥福をお祈りします。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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