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伊藤健太郎事件で思い出す、ひき逃げ、当て逃げをしたハリウッドスター

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
ハル・ベリーも過去に当て逃げ事件を起こしている(写真:REX/アフロ)

 俳優の伊藤健太郎が起こしたひき逃げ事件が大きなニュースになっている。伊藤容疑者は車を運転中にバイクと衝突、ケガをした被害者の救護をせずに、そのまま立ち去ったとのことだ。捜査関係者によると、その後、車で追ってきた目撃者に諭され、現場に戻ったという。

 この報道を聞いて、いくつかの出来事を思い出した。過去に、ハリウッドでも、何人かのスターが車で事故を起こし、無責任にも逃げた事件が起きているのである。

 ひとりはハル・ベリー。最初の「X-メン」が公開される数ヶ月前の2000年2月深夜、彼女はウエストハリウッドの交差点で赤信号を突っ走り、27歳の女性が運転する別の車と衝突した。被害者の女性は手首を骨折、首と背中を痛めている。ベリーも額を22針縫うケガをしたが、警察が到着するのを待たずに現場を立ち去り、そのまま病院に行ってしまった。この事件で、ベリーは、保護観察期間3年、罰金1万3,500ドル、200時間の社会奉仕活動を言い渡されている。被害者女性は精神的苦痛を受けたとして民事裁判も起こしたが、翌年、示談で解決した。

 もうひとりは、この頃お騒がせの絶えなかったブリトニー・スピアーズ。2007年、スピアーズは、L.A.の駐車場で車を停めようとし、停まっている別の車にぶつけたのだが、車の持ち主が戻ってくるのを待たず現場を立ち去った。しかし、その一部始終をパパラッチがビデオ撮影しており、起訴されることになっている。スピアーズは車の持ち主にお金を払い、納得してもらったことから、この件は棄却になった。

 2012年には、やはりお騒がせなアマンダ・バインズが、L.A.で2回も走行中の車に当て逃げをしている。幸い、ケガ人は出ていない。2つめの事件では、追突した後、きちんと状況を見ることもなく、その車を運転している女性に「何も傷ついていないから」と言って一方的に立ち去ったとされる。実際には修理代800ドル程度の傷が付いていた。この2件で、バインズは最大懲役1年を言い渡される可能性があったのだが、両方の被害者にお金を払って納得させ、彼女の弁護士が裁判長を説得したことから、起訴は取り下げられている(カリフォルニア州では、ある種の軽罪に関して、加害者と被害者が民事で合意をした場合、刑事事件としての起訴を取り下げることが許されている)。

 リンジー・ローハンも、2度、ひき逃げ事件を起こした。1度目は2010年、L.A.でベビーカーを押している女性に車をぶつけたとされる事件。女性は肉体的、精神的苦痛と、治療費を求めて訴訟を起こしたが、最終的に諦めている。2度目は2012年、ニューヨークで、深夜、駐車場に車を入れようとしていた時のこと。ゆっくり運転していたローハンは、通りかかった30代の男性に車をぶつけてしまった。男性は脚をケガしたとして警察に通報したが、ローハンは何も言わずに目的のナイトクラブに入っていき、出てきたところを警察に逮捕されている。だが、警察が監視カメラの映像を調べたところ、十分な証拠がなく、起訴には至っていない。逮捕直後からこの男性はお金目的でことを大袈裟にしているのだと主張していたローハンは、起訴されないとわかった後、逆に名誉毀損で訴えてやると言っている。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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