映画館でドラマの最終回が上映される?ハリウッドの大物監督がコロナ後を予測

オスカー監督ロン・ハワードは「映画館はブロードウェイの劇場のようになる」と予測(写真:REX/アフロ)

 コロナがようやく収束した時、アメリカの映画館は、潰れていなかったとしても前とは違う存在になっている。ロン・ハワード(『アポロ13』『ビューティフル・マインド』)とポール・シュレイダー(『ライト・スリーパー』『魂のゆくえ』)が、別々のインタビューで、同様の意見を語った。

「鬼滅の刃」「TENET テネット」で映画館が盛り上がっている日本とは対照的に、コロナの影響でハリウッドのスタジオが作品を出し渋り、観客もまだ劇場に行くことに不安を感じるアメリカでは、映画館が存続の危機に直面している。逆に、本来ならば劇場向けだったはずの映画が配信リリースに変更されたりするおかげもあって、NetflixやDisney+は好調だ。映画館はコロナ前から配信の脅威に晒されてきたが、ロックダウンから7ヶ月以上が経つ今、人はますます「映画を家で見る」ことに慣れてきている。それは誰が見ても否定できない事実だ。

「僕や妻にしても、それは同じ。その変化はもう起きている」と、現地時間20日に行われた「ウォール・ストリート・ジャーナル」のテックライブコンフェレンスで、ハワードも認めた。彼は、「映画館で映画を見る文化が消滅するとも思わない」ともいうが、それは特別の映画に対してだけだ。「映画館に行くことは、おそらく、ブロードウェイのお芝居を見るような感じになる。そこでかけてもらえるのは、大型バジェットの映画。映画館は、できるかぎり多くの人に来てもらい、思い出に残る体験を提供する場になるだろう」と、ハワードは見る。

 だが、そんな大作は、毎週のようには出てこない。コロナで公開と撮影のスケジュールが乱れているのだから、なおさらだ。そんな中で人を集めるために、映画館が映画以外の作品をかけたりすることも起こり得るのではとも、ハワードは予測する。たとえば、話題のテレビドラマの初回や最終回などだ。大ブームのドラマの結末をほかのファンと一緒に見るというのは、たしかにイベントとして最高だろう。つまり、今後、映画館は、日常の場というより、イベント開催の場となっていくのである。

今後、映画館でかけてもらえる映画は4つのタイプしかない

 一方、シュレイダーは、9月に掲載された「ロサンゼルスタイムス」のインタビュー記事で、コロナでその傾向により拍車がかかったものの、それ以前から、映画館は特定の作品にしか意味がなくなっていたのだと語った。シュレイダーによれば、今の時代、映画館は「オペラや舞台劇、交響楽団のように、なぜその建物があるのか、理由がないといけない」存在なのである。

 彼が考えるに、その理由となりえる映画は、4つのタイプしかない。ひとつめはアニメーションをはじめとする家族向け作品。「親はわが子がほかの子供たちと楽しそうにしているのを見たいから」だ。ふたつめは、迫力満点のスペクタクル。アクション大作やSF超大作などを、IMAXなどの大画面で体験するというものだ。3つめは、ティーンが一緒に行ってきゃあきゃあ言えるような作品。ホラーや過激なセリフ、シーンがあるロマンチックコメディである。最後は、シュレイダーが“クラブシネマ”と呼ぶもの。趣味が良いと認められている映画館に付いている客が、同じような人たちと酒を飲み、食事をするなど、社交も目的でやって来るものだ。テキサス州オースティンで創設され、今ではL.A.を含む全米各地に展開しているアラモ・ドラフトハウス・シネマという中規模のチェーンは、まさにそれ。この映画館では、ロビーにクラフトビールを提供するバーがあり、映画通に向けたさまざまなイベント上映会もやってきている(駄作とけなされた実写版『キャッツ』を、あえてみんなで笑いながら見ようというイベントは、猫の耳を付けた観客で埋まり、大好評だった)。それが、シュレイダーのいう“クラブのような体験”なのである。

“クラブシネマ”では、超大作もかかるし、映画祭で高い評価を得たアートハウス系の作品もかかる。そこに漏れた小粒な大人向け作品は、配信に回る。それは映画監督にとってがっかりだろうが、今後はおそらくそちらが主流、大多数になっていくのである。先週、ディズニーが、配信を最大重視するべく大幅な組織変更をしたのも、それを裏付ける。

 コロナの襲撃など誰も予測しなかった1年前、最大手の劇場チェーンAMCは、1週間に3本まで映画を見放題で1ヶ月20ドルというプランを売り出し、多くの会員を獲得していた。もっと昔は、そんな戦略を取らなくても、アメリカでは毎週末、映画館に行くのが普通だった。だが、今、アメリカの観客と映画館の距離は試されつつある。大人向けの小粒な秀作を好む人は、映画ファンなのに、もう映画館にはまったく行かない。少なくともアメリカにおいては、そんな時代がすぐそこに来ているのかもしれない。