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「アベンジャーズ」スターたちのこれからは?

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
「アベンジャーズ/エンドゲーム」は史上最高記録のオープニング成績を達成(写真:REX/アフロ)

 スーパーヒーローたちのパワーは、思った以上に強かった。26日に公開された「アベンジャーズ/エンドゲーム」のオープニング世界興収は、最も大胆な予測をも上回る12億ドルだったのだ。

 これはもちろん、史上初記録。これまでのベストは昨年の「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」の6億4,000万ドルだったので、それを倍近く上回っての記録更新だったことになる。「〜インフィニティ・ウォー」と違い、中国も同時公開だったことが要因にあるとは言え、やはりすごい。批評家の評価も抜群で、有終の美とはまさにこういうことだろう。

スカーレット・ヨハンソンが主演する独立したブラック・ウィドー映画の内容はまだ不明ながら、プレクウェルとの説が有力。監督はケイト・ショートランド(Marvel Studios 2019)
スカーレット・ヨハンソンが主演する独立したブラック・ウィドー映画の内容はまだ不明ながら、プレクウェルとの説が有力。監督はケイト・ショートランド(Marvel Studios 2019)

 だが、終わりとは言っても完全な終わりではなく、あくまで「一区切り」だ。MCUは、これからもまだまだ続いていく。この夏にはさっそく、「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」でトム・ホランドがピーター・パーカー役に復帰するし、ほかにも「ブラックパンサー2」「ドクター・ストレンジ2」「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー3」が、すでに監督も決まり、製作準備に入っている。ブラック・ウィドーの独立した映画もキャストが固まりつつあり、この秋立ち上がるディズニーのストリーミングサービス「Disney +」からは、ホークアイを主人公にしたドラマが、来年、配信される予定だ。

6月公開予定の「メン・イン・ブラック:インターナショナル」では、クリス・ヘムズワースとテッサ・トンプソンが早くも再共演する(Sony Pictures)
6月公開予定の「メン・イン・ブラック:インターナショナル」では、クリス・ヘムズワースとテッサ・トンプソンが早くも再共演する(Sony Pictures)

 だが、MCU以外でも、大好きなアベンジャーズのスターたちに会える機会は、すぐそこにある。最初に再会できるのは、クリス・ヘムズワース。ウィル・スミスとトミー・リー・ジョーンズのコンビで大ヒットしたシリーズをリブートする「メン・イン・ブラック:インターナショナル」で、公開は日米同時の6月14日。共演はこれまた「アベンジャーズ」組のテッサ・トンプソンだ。現在は「ジェイ&サイレント・ボブ 帝国の逆襲」のリブート版を撮影中でもあるし、ヘムズワースは「〜エンドゲーム」で再証明したコメディの才能を今後もますます見せてくれそうな気配。「〜エンドゲーム」では太った姿を見せたばかりでもあるだけに、彼がこの後、ハルク・ホーガンの伝記映画に主演するというのも、しっくりくる。

 キャプテン・アメリカのほうのクリス(エヴァンス)は、11月末北米公開予定の犯罪映画「Knives Out」に出演。共演はダニエル・クレイグ、クリストファー・プラマー、トニー・コレットら実力派で、監督はライアン・ジョンソンだ。この顔ぶれもだが、「007」新作の撮影が延期になった隙にクレイグが飛びつき、即、撮影が始められた経緯や、賞狙い上、最も理想的な公開時期が確保されていることなどからも、質の高さがうかがえる。

クリス・エヴァンスは、「〜エンドゲーム」が公開される前から、これがキャプテン・アメリカを演じる最後であると公言していた(Marvel Studios 2019)
クリス・エヴァンスは、「〜エンドゲーム」が公開される前から、これがキャプテン・アメリカを演じる最後であると公言していた(Marvel Studios 2019)

 マーク・ラファロも、この次はシリアスなドラマに立ち戻る。年内に公開予定の次回作はトッド・ヘインズ監督の法廷物で、共演はアン・ハサウェイ、ティム・ロビンスら。北米配給権をもつのは、毎年アワードシーズンに大活躍するフォーカス・フィーチャーズだ。キャップとハルクが賞シーズンにライバルとして闘うことになったとしたら、おもしろい。

 一方で、ロバート・ダウニー・Jr.は、次もまたCGを多用した大作に主演する。おなじみの児童文学「ドリトル先生」を再映画化する「The Voyage of Dr. Dolittle」で、彼が演じるのは、動物と話す能力をもつ博物学者ジョン・ドリトル。動物たちの声を務めるのは、トム・ホランド、ラミ・マレック、マリオン・コティヤール、レイフ・ファインズ、エマ・トンプソンら。片方がCGのキャラクターとは言え、ダウニー・Jr.とホランドの掛け合いがこんなにもすぐ見られるのは、ファンにとっては嬉しいことだろう。北米公開は、来年1月。

 真の役者がやろうとするのは、どんなキャラクターにもリアリティを持ち込み、観客を引き込んでみせること。それが役者という人たちのもつスーパーパワーで、それは、マーベルのユニバースの中でも外でも、映画でもテレビでも発揮できるものだ。このスターたちには、それがたっぷりある。まだ私たちに見せていない、そしてもしかしたら自分たちでも気づいていないパワーも、まだ、きっと隠しもっているに違いない。それが何なのかは、見てのお楽しみ。そしてそれはすごく楽しみにしていい気がする。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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