オスカー前夜:インディペンデント・スピリット賞は「ムーンライト」一色

インディペンデント・スピリット賞を受賞した「ムーンライト」のバリー・ジェンキンス(写真:ロイター/アフロ)

最大のライバルが不在の賞で、「ムーンライト」が暴れまわった。

インディペンデント・スピリット賞は、毎年、オスカー前日の土曜日に行われる。候補作品はオスカーともかぶるが、製作予算2,000万ドル以下が条件。明日のオスカーでフロントランナーの「ラ・ラ・ランド」は、対象外だ。

そんな中、製作予算わずか150万ドルの「ムーンライト」は、作品、監督、脚本、撮影、編集に加え、同賞を主催するフィルム・インディペンデントから贈られるロバート・アルトマン賞も受賞し、たっぷりの愛を受けた。ひとつの作品が6つ受賞したのは、この10年で初めてである。

一方、「マンチェスター・バイ・ザ・シー」のケイシー・アフレックも、ライバルのデンゼル・ワシントンが出る「Fences」が対象外とあり、楽々と主演男優賞を受賞した。しかし、「マンチェスター〜」の受賞は、この部門のみ。助演男優賞は今作のルーカス・ヘッジスが有力かと思われていたが(『ムーンライト』のマハーシャラ・アリはノミネートされていない)、受賞したのは「Hell or High Water」のベン・フォースターだった。脚本部門でも「ムーンライト」に敗れている。しかし、インディペンデント・スピリット賞は、脚本と脚色を分けていない。オスカーで、「ムーンライト」は脚色、「マンチェスター〜」は脚本部門にノミネートされており、明日への希望は、十分にある(『ラ・ラ・ランド』も脚本部門だが、この部門においては『マンチェスター〜』が有力と思われる)。

主演女優賞は、「ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命」のナタリー・ポートマンを制して、「Elle」のイザベル・ユペールが受賞した。だが、ユペールは明日、「ラ・ラ・ランド」のエマ・ストーンという強敵に直面する。ところで、ポートマンは直前になって、お腹が非常に大きいことを理由に、この授賞式と明日のオスカーを欠席する声明を発表している。

インディペンデント・スピリット賞は、その精神を反映し、場所もサンタモニカの海辺の特設ビーチなら、服装もタイをしている人は半分くらいで、ノリもカジュアルだ。受賞スピーチで涙を流す人は非常に少なく、あくまで明るい。そんなこともあってか、政治的発言も、最近の中では少なかった。しかし、アフレックは、アメリカ自由人権協会(ACLU)のリボンを胸につけて登壇。受賞スピーチでは、「本当は、こういうのはトイレで、ひとりでこっそり言うべきなんですよね。実際、そうしてきたんですが、わが子たちは、テレビで見るのでなければ僕の言うことを聞かなくなってきているんで」と前置きした上で、「この政権の政策はひどいです。これは持ちません。アメリカの精神に反するものです」と述べた。さらに「今、僕は退屈な説教をしています。わかっています。でも、僕も声を上げる仲間に参加したいんです。ここにいるみなさんもがんばって声を上げてくださっていますよね。そのコミュニティの一部であることを、僕は誇りに思っています」と語り、会場から大拍手を受けている。

ほかには、授賞式のホストを務めたニック・ノールとジョン・ムラニーがトランプやスティーブ・バノンに関するジョークをオープニングのモノローグで述べて爆笑を得たり、予算50万ドル以下の作品に与えられるジョン・カサヴェテス賞を受賞した韓国系アメリカ人監督アンドリュー・アンが移民や多様性についてのメッセージを送ったりしたが、基本的には、いつもどおり、少ない予算で意義ある良作を作り上げた人々に祝福を送るものとなった。

オスカーにもかぶっている人々にとって、本番は明日。この賞が前日の、しかも午後2時に行われるのも、そのあたりを考慮してのことと思われる。残念ながら、明日は雨になるとの予報だ。ヘア担当者は、レッドカーペットを歩く女優の髪を完璧に保つ上で、より大変だろう。今夜、L.A.では、多くのプレ・オスカーパーティが行われているが、そんな華やかな表面の裏で、関係者の緊張感はピークに達している。さて、その夜は、どのように展開するだろうか。