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ウクライナのクレバ外相のSOS「予備電源は48時間」IAEA「重大な影響なし」チェルノブイリ電源喪失

今井佐緒里欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者、作家

ウクライナのクレバ外相は、2本のツイートで国際社会に助けを求めた。

予備の電源は、48時間しかもたないと訴えている。

1通目「ロシア軍に占領された、チェルノブイリ原発とすべての核施設に電力を供給する、唯一の電力網が損傷している。同原発は電源供給のすべてを失った。私は国際社会に、ロシアに緊急に停戦を要求し、修理部隊が電力供給を復旧できるように要求することを要請する」

2通目「予備のディーゼル発電機は、チェルノブイリ原発の電力を48時間供給することができる。その後、使用済み核燃料の貯蔵施設の冷却システムが停止し、放射能漏れが差し迫っている。プーチンの野蛮な戦争は、ヨーロッパ全体を危険にさらす。プーチンは直ちにそれを止めなければならない!」

一方、国際原子力機関(IAEA)も2本のツイートを発表

「重大な影響はない」、電力がなくても問題ないとしている。

1通目「ウクライナは、チェルノブイリ原発の停電についてIAEAに通知した。グロッシー事務局長は、発展(訳注:戦況の進展という意味だと思われる)は、電源供給が途絶える危険に対して安全を確保するという、鍵となる安全の重要な柱を犯していると述べています。

この場合、IAEAは安全性に重大な影響を与えないと見ている」

2通目「IAEAは、チェルノブイリ原発の使用済み燃料貯蔵プールの熱負荷と、冷却水の量は、電力供給を必要とせずに効果的な熱除去をするのに十分であると述べている」

現場からのSOS

前の記事で紹介したように、もともとはウクライナ原発から、SOSが発信されたことから発覚している。

そのメッセージは、全電源が喪失している。首都とつながる高圧線が損傷したためである。市内全体が停電している。燃料プールは冷却し続けなければならないのに電源がない。換気ができずに、スタッフが放射能にさらされる危険がある。地域は戦闘中で修復ができない。砲撃がとんできたら、火事がおきても消化装置も作動しないーーと捉えられる内容であった。

約2週間前のロシア軍によるチェルノブイリ原発占拠以来、IAEA等とは、電子メールでしか連絡がとれない。また、原発のスタッフは、約2週間も原発内に閉じ込められて、交代もなく働かされてきて、危険である。これらのことは、以前にフランスのメディアで報道されたことがあるので、本当のことだと思われる。

使用済み核燃料は、約2万体だとチェルノブイリ原発からのSOSには書かれていた。冷却水がなくても大丈夫だとIAEAはいうが、それならなぜ冷やしているのか、なぜ現場の人間からSOSが出されるのか、疑問は尽きないが、専門家の判断を聞くことにする。

1)【緊急】チェルノブイリ原発、戦争で電力断たれ冷却ができない事態に ※IAEAの情報を追加しました

2)【続報】チェルノブイリ原発から出されたSOSメッセージ全文

欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者、作家

フランス・パリ在住。追求するテーマは異文明の出会い、平等と自由。EU、国際社会や地政学、文化、各国社会等をテーマに執筆。ソルボンヌ(Paris 3)大学院国際関係・欧州研究学院修士号取得。日本EU学会、日仏政治学会会員。駐日EU代表部公式ウェブマガジン「EU MAG」執筆。前大使のインタビュー記事も担当(〜18年)。編著「ニッポンの評判 世界17カ国レポート」新潮社、欧州の章編著「世界で広がる脱原発」宝島社、他。Association de Presse France-Japon会員。仏の某省関連で働く。出版社の編集者出身。 早大卒。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

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