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ロシア正規軍が「独立国」に介入。プーチン大統領が国防省に露軍の「平和維持」を指示:ウクライナ危機

今井佐緒里欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者、作家
2つの離脱地域を独立国として認める政令等に署名するプーチン大統領。2月21日。(写真:ロイター/アフロ)

2月21日、プーチン大統領は自称「ドネツク人民共和国」と、「ルガンスク人民共和国」を、国家として承認すると発表した。

さらにプーチン大統領は、ロシア軍にこの地域において「平和の維持」を行うよう指示した。

正確に言うと、ロシア大統領が発表した2つの政令では、ドネツクとルガンスクの「人民共和国」の「領土においてロシア軍が(平和維持機能を)担う」ことを国防省に要請したのである。

これは、同地域に、ロシア正規軍が入ってくることを意味する。これは「侵攻」になるだろうか。プーチン大統領は「平和維持」という名目をつけている。

同日、プーチン大統領は、ロシア国民に向けて、1時間に及ぶ演説を行った。

「その演説の最後に、プーチンが非常に重要なことを言いました。それは、ほんの一滴でも血が流れれば、その瞬間にロシアは介入すると。このことは、ウクライナの他の地域にとって、もっと心配なことへの第一歩に過ぎないかもしれないと、理解することが重要です」と、紛争と国際安全保障の専門家で、シオンス・ポの講師でもあるジュリアン・テロン氏は語った。

ショルツ独首相、バイデン米大統領、マクロン仏大統領は、電話で会談した。ドイツ政府報道官によると、彼らは分離主義的な領土の独立を承認することに対して「返答なしのままではいられない」ことで合意したという。

マクロン大統領は、国連安全保障理事会の緊急会合を要請。グテーレス国連事務総長は、コンゴ民主共和国訪問を直前でキャンセルし、本部のあるニューヨークに戻ることを決定したと、報道官が述べた。

EUの緊急外相理事会も行われている(英国に関しては情報が入っていない)。

フランス公共放送が伝えた。

ミンスク協定を犯し、自国の領土を踏みにじられたのだから、ウクライナはロシアに宣戦布告ができるという、フランスの専門家の見立てもあった。

もしロシアが正規軍を二つの「独立国」に送らないのであれば、ウクライナにとってリスクは高いものの、欧米が制裁を科すためのステップとして、一つの方法に見えた。独立の承認だけでは、はなはだしい挑発ではあるが、侵攻とまではいえないからだ。

しかし、ロシアの方から先に正規軍を「独立国」に送ってくるとなると、事態は大きく変わったように見える。ただし「平和維持」という大義名分付きだ。今後どうなるだろうか。事態はまったく目が離せなくなった。

プーチン大統領の発表があった夜の、キエフの地下鉄内の様子。みんな携帯でニュースを見ている。市民が無事でありますように。

プーチン大統領が国防相にロシア軍派遣を平和維持のために要請した政令。フランスアンフォより。
プーチン大統領が国防相にロシア軍派遣を平和維持のために要請した政令。フランスアンフォより。

欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者、作家

フランス・パリ在住。追求するテーマは異文明の出会い、平等と自由。EU、国際社会や地政学、文化、各国社会等をテーマに執筆。ソルボンヌ(Paris 3)大学院国際関係・欧州研究学院修士号取得。日本EU学会、日仏政治学会会員。駐日EU代表部公式ウェブマガジン「EU MAG」執筆。前大使のインタビュー記事も担当(〜18年)。編著「ニッポンの評判 世界17カ国レポート」新潮社、欧州の章編著「世界で広がる脱原発」宝島社、他。Association de Presse France-Japon会員。仏の某省関連で働く。出版社の編集者出身。 早大卒。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

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