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先駆け欧州の経験から語る「レジ袋有料化で変わる3つのこと」音、袋、山。

今井佐緒里欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者、作家
ふんだんにビニル袋使いたい放題の生活は7月1日で終わりを告げる。(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

いよいよ7月1日からレジ袋の有料化が始まった。

このプラスチックごみ対策について、世界で最も進んだ取り組みをしているのは欧州連合(EU)と加盟国だ。日本は彼らの政策に習っているのだ。欧州は日本より、もっと進んだ厳しい対策をしている。

それでは、先駆けてプラスチックごみ対策を始めた欧州では、何が変わったのだろうか。筆者の住むフランスの例で3つ挙げて、これからの日本の変化を予言してみたい。

その1:それをすぐに捨てないで!

ポテトチップスの袋を開けて、バリバリ食べた・・・空になったから捨てる・・・ちょっと待って! この袋は使うから捨てないで!

ビニル袋が激減して何が困るのかというと、生ゴミである。特に水分が出るものだ。

今までは、全部ビニル袋にぽいぽい捨てていたに違いない。袋はいくらでもあるから。でも今後は、ビニル袋は有料の貴重品だ。

というわけで、水を通さない袋は、これからはゴミ箱に直行せず、うやうやしく保存しておくことになる。

筆者の家には台所に、すぐに使う袋と、そうでない袋を分ける箱が置かれている。すぐに使う袋とは、ポテトチップスのように中が汚れているもの。そうでない袋とは、ピーマンやトマトが入っていた袋などである(これもビリっと破かずに、丁寧に開けることになる)。

おそらく日本で使いでの良い袋は、パンの袋だと思う(一つではなくて複数入っているもの)。

その2:ガサガサ音が消える

日本に帰ると、いつも我ながら驚くことがある。

それは「日本って、なんてガサガサとビニル袋の音がうるさい国なんだろう」と思うことだ。

なんだかもう、イライラするほどである。

ビニル袋は便利である。だから家のあちこちで、色々なものがビニル袋に入っている。

開けるたびに動かすたびに、ガサガサガサ。外出すればスーパーでコンビニで、ガサガサガサ。道を歩けばそのへんのゴミ箱にビニル袋を捨てる音、風が吹けば舞い散るビニル袋の音で、ガサガサガサ・・・。

本当に耳障り!と思ってしまうのだ。

ビニル袋が激減して心から思うことは、ビニル袋は便利だが、日常生活の美しさからは程遠いということだ。

それに、ビニル袋に物を突っ込むより、紙袋や布袋に入れる方が見栄えがいい。

これからきっと多くの日本人が、ビニル袋の少ない生活の静けさと美しさに気づくことだろうと思う。

あふれるビニル袋の音は、自然を無視して使い捨てに奢った、私たちのガサツな生活の音だったのだと思う。

その3:エコバッグの山

これは最近、フランスでよく語られる事なのだが・・・笑い話のような話だ。

あちこちでエコバッグを配るようになり、エコバッグが山積みでたまっているというのだ。

欧州では、社会全体でビニル袋が減り、スーパー以外の店でも紙袋に入れるようになっている。ところが、紙袋もすぐゴミになってしまいかねない。

というわけで、ちょっと気の利いたブティックで買い物すると、デザインのきれいな布製のトート・バッグに入れてくれるようになった。美術展に行けば、ショップで布製トート・エコバッグが売られるのはお約束である。学校で、イベントで・・・始終もらう。一種のブームであった。

なぜか、いつも布製で縦型である。スーパーのレジで売っているエコバッグは、ビニル製で横長なのだけど。

というわけで、今、筆者の家には、思い出すだけでも20個近くある。

日本もきっと、1年も経てば「あふれるエコバッグ、どう使う?」みたいな記事が登場するようになるだろう。

それでもまあ・・・布バッグは気軽に捨てないだけ、自然に優しくなったのだと思う。悩みは尽きないけれど・・・(苦笑)。

欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者、作家

フランス・パリ在住。追求するテーマは異文明の出会い、平等と自由。EU、国際社会や地政学、文化、各国社会等をテーマに執筆。ソルボンヌ(Paris 3)大学院国際関係・欧州研究学院修士号取得。日本EU学会、日仏政治学会会員。駐日EU代表部公式ウェブマガジン「EU MAG」執筆。前大使のインタビュー記事も担当(〜18年)。編著「ニッポンの評判 世界17カ国レポート」新潮社、欧州の章編著「世界で広がる脱原発」宝島社、他。Association de Presse France-Japon会員。仏の某省関連で働く。出版社の編集者出身。 早大卒。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

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