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アメリカとイランの関係悪化で、ロシアと中国の反応は。1月10日の国連安全保障理事会を前に

今井佐緒里欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者、作家
2019年8月20日中東の平和と安全保障を協議した国連安保理。左にポンペイオ氏(写真:ロイター/アフロ)

1月10日に国連安全保障理事会が開かれる。

アメリカとイランの緊張について、ロシアと中国はどう反応しているのか。

フランスと中国の外相会談

AFP通信によると、フランスのル・ドリアン外相は、中国の王外相と電話会談を行った。

中国は、2015年にオバマ前大統領がイランと結んだ核合意に署名している国である。

王氏は、両国の立場は「似ている」と述べ、「力の一方的な使用は問題を解決できません。それは逆効果であり、対立の悪循環につながってしまい、それを止めることは非常に困難です」と言った。また、「攻撃がイランの核合意の実施に影響を与えないように、すべての関係者が緊密に連絡することを望んでいます」と述べた。

ロシアと中国の外相の会談コメント

さらに、ロシアのラブロフ外相も、王外相と4日に電話会談を行った。

中国の外交報告によると、ラブロフ外相は「アメリカの行動は違法であり、非難されなければなりません」と述べたという。王外相は「中国は、国際関係における武力の濫用に反対しています。軍事的冒険主義は受け入れられない」と述べた。

そして、「両国はコミュニケーションを強化する必要があり」「中東の現在の状況に対応する上で責任ある役割を果たす」ことを確認しあったということである。

マクロンとプーチンの電話会談

3日にはマクロン大統領が、プーチン大統領と電話会談している。前日に起きたスレイマニ氏殺害について話し合われたかは、不明である。

内容は、まずはリビアに関することであった。リビアはシリアの次の舞台になりそうだからである。マクロン大統領は「外国の軍事干渉の強化に関連して、事態が悪化するリスクを強調した」という(そう言っているそばから、今回の事件が起きてしまった)。

そして、シリアのイドリブ県についての、人道援助についてロシアの理解を求めて話し合った。

というのも、もともと1月10日の国連安全保障理事会(非公式)の主な議題は、この人道援助問題だったのだ。

シリアの人々に不可欠な援助をもたらすには、国境と前線を越えなくてはならない。そのために、国連で人道輸送団に許可を与えることが必要である。

この承認は1月10日に失効するが、昨年の12月20日、ロシアと中国は、4つの交差点(トルコに2つ、ヨルダンに1つ、イラクに1つ)で国境を越えた援助を1年延長する決議を、拒否したのである。

1月10日の会議の開催は、イギリスとフランスが申し出て、アメリカの支持を受けて実現することになった。思いがけずに、アメリカとイランの第3次世界大戦かとまで言われる緊急事態を話し合う場になりそうだ。

とりあえず、この混乱にロシアや中国が乗じて事態をさらに悪化させるということは、一応は無さそうである。しかし予断は許されないだろう。

欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者、作家

フランス・パリ在住。追求するテーマは異文明の出会い、平等と自由。EU、国際社会や地政学、文化、各国社会等をテーマに執筆。ソルボンヌ(Paris 3)大学院国際関係・欧州研究学院修士号取得。日本EU学会、日仏政治学会会員。駐日EU代表部公式ウェブマガジン「EU MAG」執筆。前大使のインタビュー記事も担当(〜18年)。編著「ニッポンの評判 世界17カ国レポート」新潮社、欧州の章編著「世界で広がる脱原発」宝島社、他。Association de Presse France-Japon会員。仏の某省関連で働く。出版社の編集者出身。 早大卒。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

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