韓国を追い詰めず何かの「意外な」提案を。日本の国益と韓国人との友情のために:GSOMIA問題

2019年9月28日東京で開かれた第11回日韓交流お祭り。韓国文化の紹介も。(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

◎徴用工の問題に関して、日本政府の「日韓基本条約を堅持し、韓国の要求に応じられない」という姿勢は支持したい。

◎しかし散々「韓流ブーム」を流してきて今度は嫌韓。メディアの変節にあきれる。今までの日韓交流でお互いにつちかってきた友情を信じる強い心をもちたい。

◎それに、GSOMIAの破棄は日本に安全保障上の危機を招きかねない。これは朝鮮半島統一の問題に見える。アメリカ主導か、中国(北朝鮮)主導かで、両国は争っているのではないか。日本は朝鮮半島が中国(北朝鮮)主導で統一されるリスクを考えるべきだ。

◎欧州であれば、橋渡ししてくれる第三国が複数現れるし、欧州連合(EU)がその舞台になってくれる。でも極端な状況の東アジアには、その存在が全くない。だから自分でやるしかない。

◎日本は、日韓基本条約の原則は崩さず、日本の利益を大きくは損なわない方法で、文大統領の顔が立つような何かの提案をするべきである。それが何かは、国の頭脳を総動員して必死で探す。相手が「・・・そう来たか」と、そんなこと思いもしなかったというような提案が良いだろう。

今までの友情と交流は何だったのか

まず、徴用工の問題に関して、政府が日韓基本条約に基づいて、韓国の要求に応じられないという日本政府の姿勢は支持したい。

非情かもしれないが、国家間の政治では、双方の合意のもとに最終決着と決まりを定めないといけない時があると思う。事件が起きたら、刑事裁判と民事裁判で、罰と慰謝料を決めて決着をつけるのと同じように。

人間として女性として、日本の風潮に対して思う所や言いたいことは色々あるが、それは別の問題である。

それでも筆者は、言いたいことがある。

あれほど「韓流ブーム」と言っていたではないか。

韓国への観光客は大幅に増え、韓国語を学ぶ人も増えた。韓国人留学生も増えた。それは韓国から日本へも同様である。韓国の料理がブームになって、巷には韓国料理レストランがごく普通に存在するようになった。韓流ドラマにはまったり、韓国の歌手やアイドルも人気になったりした。日本のテレビにも登場してもらって、チヤホヤしていたではないか。

なのに、この手のひらを返すような冷たさは何だ。このメディアの変節ぶりには、腹が立つ。

国家というものは化け物である。国家の政治の影響から、人々は完全に逃れることができない。それでも、今までつちかった友情を信じることはできないのか。今まで交流して触れ合った、お互いの人間としての暖かさを忘れずに物事を考えることはできないのか。

筆者は欧州大陸に住んでいて思うのだが、国境や民族を超えて人間としてのつながりを信じる強さが、日本人や韓国人は弱いと感じている。両国とも「血」を重んじすぎるからだろう。韓国のほうが日本よりも強いが、それでも「偏狭な者同士の泥試合」に見える。そして、日本も韓国も、冷戦構造のイデオロギーに左右されない「人間の連帯としての左派」の発展が阻害された歴史をもつためもあると思う。

今年8月に、日本が輸出管理の優遇対象国から韓国を除外する決定をした頃のことだ。

日本のメディア、特にテレビは韓国で「反日本」「日本製品ボイコット」が起こっていると派手に報じていた。デモや、ボイコットの様子ばかり伝えていた。日本では、嫌韓の空気に満ちていった。筆者も一瞬、染まりそうになった。正直に言う。染まりそうになったのは、筆者にも「韓国、いいかげんにして」と思う気持ちがあったからだ。

しかし、一体デモに参加した人は何人いるというのだ。テレビに流れるのは、いつも同じデモばかり。参加者の人数は、ソウル市民の何%なのか。

さらに筆者が疑問に思ったのは、どのテレビニュースも「日本製品ボイコット」で登場してくる場所も、全部同じだったことだ。「もしかしたら、こんなに派手に『ボイコットされている!』と言っているくせに、実は1か所しかないのでは?」と思った。

そうしたら、ソウル市の中区が8月6日、繁華街にかけられた、日本製品の不買運動を呼び掛ける旗の撤去を決めた。「韓国が好きで来ている日本人に不快感を与える」と批判が殺到したためだ。同区は同日「批判を謙虚に受け止める」と謝罪した。

この報道を受けた後、日本のメディアでもやっと冷静な検証が始まった。NHKのニュースで、1件1件店をまわって、日本製品が置いてあるかないかを調査したものは印象的だった。50件中、日本のビールが置いてある店は35件もあったのだ。

あの時、筆者は、ちょっとでも自分が嫌韓に流されそうになった自分を恥じた。浮かんだのは、今まで交流があった韓国人の人たちだった。

「韓国のチゲ美味しいよね」「日本じゃキムチは、もう定番食になっているよ」「日本のアニメ、大好き」「韓国人女性は日本のファッション雑誌がとても好きだよ」「箸って、韓国だと縦に置くんだね。日本だと横だよ」「韓国は、日本よりも上下の礼儀に厳しい。日本のほうが自由だね」「韓国の男性の男らしさに惹かれる日本人女性は結構いるみたい。だから韓流ドラマは人気」「徴兵制があるからじゃないか」などと言って、笑いあっておしゃべりした韓国人たちだ。

彼らの中に、「不買運動をやめろ」という人がいたかもしれない。二度とメディアや政治の雰囲気で、嫌韓に流されるような風にはなりたくないと思った。だからこれを書いている。

知識人の中から『反日種族主義』という本が出版されるなど、韓国の中にも勇気をもって発言する、新しい潮流が登場している。

韓国の民主主義はまだ歴史が浅いし、歴史や儒教の影響もあって中国支持の人は根強くいるという。でも一般の人たちは、日本人と同じように、中国や北朝鮮の政治体制を支持してなどいないと思う。本来なら、同じベースで話し合える人たちだと思う。

人はだれでも、国家や政治、目立つ所にのみ集中するマスコミの騒ぎに影響されやすい。日本人のほうがおとなしく、韓国人のほうが熱いというか感情的だと思うが、でも両者は特に雰囲気を見てものが言えなくなる傾向が強い人たちだと思う。アジア的礼節というか、同族的というか。。。

「話せば解決できる」とまでは言わないが、機会さえ設けられれば、お互いが相手の言い分を聞く姿勢はあるし、お互い相手への理解を深められる人たちが大半であると思うのだ。

今まで日韓は、地道に着実に、人と文化の交流を促進してきた。吹けば吹っ飛ぶような量の蓄積だとは思わない。たとえ難しい政治の局面にあっても、お互い笑いあった相手の顔一人ひとりを思い出したい。「こんな状況になって、相手もきっと内心複雑な思いを抱えているに違いない。この状況を喜んでいるはずがない」と、お互いの友情を信じようではないか。

なぜこのような政治状況になったか

日本や韓国の地政学は、特殊である。

これが欧州大陸なら、間に入ってくれる第三国(しかも複数)が現れるだろう。

今は東欧のポーランドやハンガリーなどで右傾化が進んでいるが、ベルリンの壁崩壊30年を機に、オーストリア、チェコ、スロバキアなどで「我々は右傾化しないように、この地域を守っていこう」と意志を確認する機運が生じているという。

そういう彼らの大舞台は、もちろん欧州連合(EU)である。何世紀にも渡って何度も戦争を繰り返して、やっと彼らはこのような平和の装置をもったのだ。

それに引き換え東アジアは、未だに冷戦の構造が残っている。

日本や韓国の周りに、両国の争いを仲介してくれそうな民主主義国家は存在しない。民主主義とはかけ離れている大国の中国(とロシア)の圧迫を受け、米中の緊張が朝鮮半島を直撃している。

今の複雑な状況には、根本原因が二つあるように見える。

一つは、中国が経済・金融のみならず、軍事的な覇権の野心をもち、アメリカとの対立が始まったこと。

もう一つは、朝鮮半島の統一が大国の視野に入ってきたことだ。

これは、アラブの春を始め、反動を伴いつつも世界の民主化の流れが大きな潮流となってきたためだ。背景には、ネットの発展と、世界経済がますますボーダレス化してきたことがある。

まず中国が韓国に接近した。そして朴槿恵・前韓国大統領は、北朝鮮の頭を飛び越えて親中政策をとった。そして北朝鮮を怒らせた。だから今トランプ大統領は、韓国の頭を超えて北朝鮮を味方につけようとしている。アメリカは、北朝鮮が飛翔体を発射しても、実に甘い姿勢をとっている。実際には核問題や制裁など大原則は崩していないのだが、表面だけでも北朝鮮に甘いのは、中国と切り離そうとしているのだと思う。

これは結局、米中がどちらが主導で朝鮮半島を統一しようとしているかの争いではないのか。

日本のメディアや反応の中には「アメリカ様が韓国を非難している!」「韓国はアメリカ様を怒らせた!」と、虎の威を借りてまるで「やったーざまあみろ!」とはしゃいでいるかのような物がある。

無責任なことを言っていないで、ちゃんと先のことを考えてほしい。もし韓国が中国のほうに引きずられたら、日本海や東シナ海の軍事的緊張が高まってしまうではないか。

朝鮮半島は中国の冊封体制下にあった歴史上、中国に逆らえない体質が染み付いていると指摘する人達がいる。しかし、日本人だって、何十世紀にも渡って中国には海軍がなかった歴史の意識が染み付いているではないか。

例外としてモンゴルは日本に攻めてきたが(元冦)、あれは朝鮮半島の高麗の海軍にやらせたのである。モンゴル帝国自体は海軍をもっておらず、陸軍しかなかった。中国が海軍をもったのは、中国数千年の歴史で、今が初めてと言っていいことなのだ。

リスクは日本海や東シナ海だけではない。海軍ではないが、中国船は2014年、太平洋側の小笠原諸島と伊豆諸島の周辺に、サンゴを大量に密漁にやってきたではないか。あれは実は軍事偵察だったと主張する人もいるくらいだ。もう忘れたのだろうか。

双方の利益のために

日本以上に韓国は苦しい立場にある。日本と韓国が友好的であり同盟を保つことは、結局は双方の利益になることなのだ。

日韓基本条約の原則は崩すべきではない。しかし、日本の利益を大きく損なわない範囲で、文大統領の顔が立つような何かの提案をするべきである。それが何かは、必死で探すことだ。

本当はこういうことは、第三国の仲介者を立てるほうが良い。もちろん、民主主義国家でなくてはならない。仲介者を交えて提案を話し合うほうがよいのだ。

でも、欧州と違って、東アジアにはそういうことに適役な国がない。だから日本が自分でやるしかない。

実は、いっそオーストラリアに頼んだらどうか・・・と思わないでもない。オーストラリアと日本は、APECやTPPなど、経済上の結びつきが大変深い。それに、軍事上でも「日米豪印戦略対話」の枠組みの仲間である。一方で第二次大戦の東京裁判では、日本に大変シビアな目をもっていた国でもある。アメリカも韓国も反対しないかもしれない。でも・・・やっぱり遠すぎるだろうか。

とりあえず決定延長を勝ち取るのでも良い。ブレグジットを見てほしい。延長を繰り返しているうちに、新たな流れが出てきたではないか。

地政学上、韓国の立場は大変弱い。追い詰めるべきではない。もし朝鮮半島が統一されるなら、日本はアメリカ主導が良いのか、中国(北朝鮮)主導が良いのか。答えは100%明らかだ。

率直に言って、文大統領は本当に外交センスがない人だと思う。一人の人間が全能な訳がないのだから、自分に知識や才覚がない分野には、ある人を側近につければいいだけの話なのだが・・・それが出来る人でもないようだ。

それでも、日本の国益のためにも、韓国人との友情のためにも、文大統領が破棄を取りやめても顔が立つように、言い訳ができるような何らかの手を差し伸べるべきである。

「そう来たか・・・」と思わせるような、思っても見なかったような内容の提案が良い。イギリスのブレグジット騒動を見習うと良い。イギリス政府も、イギリス下院も、あの手この手で「よくもまあそんな手を思いつくものだ」という策が次から次へと出てきたではないか。国家の頭脳が総動員だったのだ。しかもすべて、民主主義に叶った内容だった。対するEU側もすごかった。なにせ27カ国の頭脳が集まって離脱協定案をつくっていたのだから。東アジアは心細い限りだ。

それでも探すことだ。何かないか、必死で探す。

向こうがどう反応するかはわからない。でも、何もせずにいるべきではない。

参考記事:(どのように中露とアメリカは対立しているのか)文大統領は何がしたいのか、なぜ韓国はGSOMIAで苦しむか:中国一帯一路、ロシア、反米の上海協力機構