マクロン大統領、一気に22本の怒涛のツイッター:EU市民宛にブレグジットと欧州議会選挙で

マクロン大統領。今年の2月、エリゼ宮にて。(写真:ロイター/アフロ)

ポンピドゥーセンター図書館から帰宅して22時過ぎ、ほっと一息ついてお茶を飲みながらツイッターを見てみると、マクロン大統領がまさに怒涛のツイッターを発信している最中だった。

どのように怒涛かというと、EU市民向けのメッセージを、EUの公用語(全部で24言語ある)で発信している最中だったのだ。どれも全部EUの旗の写真で、開けても開けても、次から次へと「新しいツイート◎件を見る」の表示が飛び込んできた。「ヨーロッパの市民へ、緊急なので、私はあなたに語りかけます」と書いて。内容は何だったのか。

3月4日22時20分ごろの様子。新しいツイートが1件とある。「いいね」はたったの18だ。」
3月4日22時20分ごろの様子。新しいツイートが1件とある。「いいね」はたったの18だ。」

ナショナリストを「嘘つき」と糾弾!?

このツイッター演説は「欧州のルネッサンスのために」と題されていて、以下のように始まっている。

「無礼を承知であなたに直接話させて頂きますが、私たちがまとまるのは歴史と価値の名においてだけではありません。 緊急性があるからです。 数週間後、欧州議会選挙は私たちの大陸の将来を決めるものとなるでしょう」。

「第二次世界大戦以来、ヨーロッパがこれほど必要になったことはありません。 そして、ヨーロッパはこんなに危険にさらされたことはありません」

この冒頭の呼びかけに続くのはブレグジット(英国のEU離脱)の話である。大変強い調子でびっくりしたので、思わず冒頭の文を全部訳してしまおう。

「ブレグジットはシンボルです。 現代世界の大きなショックに直面した人々の、保護の要求に答えることができなかったヨーロッパの危機の象徴、ヨーロッパの罠の象徴でもあります。 罠は欧州連合(EU)のものではありません。 EUを破壊しうるのは嘘と無責任です。 誰がイギリス人にブレグジット後の将来について、真実を話したというのでしょうか?  誰がヨーロッパ市場へのアクセスを失うことについて話しましたか? 誰が過去の国境に戻ってアイルランドの平和へを脅かすリスクについて話しましたか? ナショナリストのEU撤退は何も与えません。 それはプロジェクトのないただの拒絶です。 そしてこの罠はヨーロッパ全体を脅かしています。嘘の情報に後押しされた怒りを巧みに利用する者たちは、何もかもすべてを約束するか、何も約束しないか、どちらかなのです」

これらの情報操作を前にして、私たちは立ち上がらなければなりません。 誇りをもってはっきりと。 まず最初にヨーロッパとは何かを言うならば、それは歴史的な成功です。破壊された大陸の和解が、平和と繁栄と、自由のプロジェクトにおいて成されたのです。決してそのことを忘れないでください。 そしてこのプロジェクトは、今日も私たちを守り続けているのです。」

この後は、「私達の自由を守る」「私達の大陸を守る」「進歩の精神を再発見する」などのように、EUの擁護をしてプロジェクトを語っている。例によって、フランス人の大好きな、大上段な演説調だ(最近は、黄色い人たちもこんな調子なので、日本人としてはちょっと聞き疲れる)。全般的にはあまり日本人の関心をひく箇所ではないと思うので、訳は省略する。

欧州議会選挙もさることながら、いよいよブレグジット交渉が最終段階の大詰めに来ているのだなと感じさせる。そして、欧州でイニシアチブを取ろうとするマクロン大統領の意図も大いに感じさせる(もともとバルニエ交渉官もフランス人だし)。EUは巨大な根回し機関なので、EUレベルでは「まさに、今」なのだと思う。ちょうど筆者も原稿を書き始めたところに、マクロンのツイッターが飛び込んできたのだった。

国の優先順位?

面白いのは、発表された国の順番だ

一番最初はフランス語で、これが最上部に固定されているのはわかるとして、次はドイツ語、英語、イタリア語、スペイン語、ポーランド語と続いた。

ほお、なるほど、これがフランスで重要とされる国の順番か。英語よりドイツ語が先、スペイン語よりイタリア語が先、そして次はポーランド語。伝統的に同じカトリック国で、ナポレオン時代からすでに関係の深い国。そして今は、民主革命によって(アンジェイ・ワイダの映画で有名)東欧を代表する国となり、EU大統領(理事会理事長)トゥスク氏の母国でもある。この順番、わかるわー、と思った。

これを書いている最中にさらにルーマニア語(ラテン語友達)、オランダ語(EUの始まり6カ国の1つ)と続いている。

さらに、ギリシャ語、チェコ語、ポルトガル語、スウェーデン語、ハンガリー語、ブルガリア語と続いた。

まだ全部のEU公用語が出ていないが、おそらく最後は(例によって)ゲール語だろうな・・・と思っていたら、デンマーク、フィンランド、スロバキア、クロアチア、リトアニア、スロベニア、ラトビア、エストニアと続いて、終わってしまった。EU公用語は24言語あるのに、22言語しかない。

ないのはマルタ語とゲール語(アイルランド)で、どちらの国でも実際には英語が使われているので、省略したのだろう。後半は順不同という感じだが、それでもバルト3国の中ではリトアニアが一番最初に来るなど、まったく不同というわけではなさそうと感じる。リトアニアは伝統的にカトリック国で、意外とフランスとつながりがあるのだ。

このマクロン大統領の発信は、どのような反応があるだろうか。どう拡散していくか見るのも、ヨーロッパがどのようなネットワークになっているかわかって、面白いかもしれない。注意して見てみたいと思う。

この文章は5日、欧州の主要な新聞にも掲載されるという(英国のThe Guardian,、ドイツのDie Welt,、スペインのEl Pais、イタリアの Corriere della Serra など)。

最後に余談ですが・・・

毎度思うのだけど、各国語は意訳でかなり自由に訳されているなと感じる(自動翻訳を見ているから完全には信頼できないとはいえ)。今回のはエリゼ宮発信だが、EU機関の翻訳もそうで、あまり「元の原文に忠実に訳さなければ」とこだわる必要ないのかな、日本人にアピールする日本語調と日本文化に合わせたやり方でもいいのかなと、翻訳や通訳をする立場として思う。