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情報の収集と価値判断は難しい。カタルーニャの場合

今井佐緒里欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者、作家
「ローマ条約60周年」の垂れ幕がかかる欧州委員会前に集まったカタルーニャ首長達(写真:ロイター/アフロ)

今回はニュースというよりも、気付いたことを書く。

今日、ル・モンド紙を見ていて気付いたのだが・・・。

先日、ここYahooで、200人ものカタルーニャの首長がブリュッセルに集結したことを書いた。

筆者としては、これが一番大きいニュースだと思ったのだ。

しかし、ネット検索すると、同日のプチデモン氏の演説を報道したものはあったが、200人の首長の結集に焦点を当てたもの、つまりこのことをタイトルやサブタイトルとして報道した大手メディアは、フランスではほとんどなかったようだ。

ル・フィガロがネット版に、AFPの記事を掲載したくらい。

プチデモンの演説がタイトルで、このことがちょろっと付け加えてあるものも、探さないとない感じである。

英語報道では、フィナンシャル・タイムズが報道していた(記事としてはそれほど大きくない印象)。

他の英国の新聞はどうしてしまったのだろう。

アメリカでは、ロサンゼルス・タイムズや、ニューヨーク・デイリーニュース等が報道していたが。

欧州の国がブリュッセルに特派員を置いていないわけがないし、記事を送っていないわけないのだから、これは意図的なものなのではないか。

いわゆる「本国の本社デスク」の判断に違いない。

それほど欧州の国の人にとって、この首長の結集は「触れたくないニュース」だったのかもしれないと感じる。

日本のニュースは、単純にこの状況をなぞったものになっただろう。

では筆者はどこからニュースをとってきたかというと、ベルギーのフランス語圏の報道である。

(首都ブリュッセルはフランス語が強い。英語もオランダ語も同様に通じる)。

ベルギーでは、さすがに自分の国の首都で起こったことなので、きちんと報道されている。

ここで新たに疑問に思ったのだが、日本人特派員はブリュッセルにもいるはずである。

そもそも、日本はブリュッセル・EUに重きを置くという発想そのものがあまりないように見える。

ブリュッセルに特派員を置いていない大手メディアもあるし・・・。

相変わらず英国、ドイツ、フランスの特派員が強いのだろう。

頭が国単位だけになっている。

EUと協定の仮調印も終わったというのに、こんなんでいいんだろうか。

ニュースというのはつくづく難しい。

報道されないと、なかったのと同じになってしまう。

筆者としては、EUにムッときながらも、どうなるのかを見極めたいのであり、欧州の市民たちが決めるべきことだと思っている。

だからこそ、カタルーニャ首長たちの意志と行動は、大変大事なニュースだと思っている。

一方で、フランスや英国のメディアが国家権力で統制されているとは思わないので、彼らの心の内を知ることができたのは収穫だった。

多数を占めるはずの左派メディアがだんまりになり、多少なりとも報道したのは、フランスでは右派メディア、英国では経済新聞という構造も大変興味深い。

欧州の他の言語(ドイツ語とか)がわかる方からの報告も読んでみたい。

よろしくお願いします。

欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者、作家

フランス・パリ在住。追求するテーマは異文明の出会い、平等と自由。EU、国際社会や地政学、文化、各国社会等をテーマに執筆。ソルボンヌ(Paris 3)大学院国際関係・欧州研究学院修士号取得。日本EU学会、日仏政治学会会員。駐日EU代表部公式ウェブマガジン「EU MAG」執筆。前大使のインタビュー記事も担当(〜18年)。編著「ニッポンの評判 世界17カ国レポート」新潮社、欧州の章編著「世界で広がる脱原発」宝島社、他。Association de Presse France-Japon会員。仏の某省関連で働く。出版社の編集者出身。 早大卒。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

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