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【独自調査】現実的な人気マンションは値上がり期待ではなく、住み心地で選ばれていた

櫻井幸雄住宅評論家
この1月から3月まで、全国で人気度第1位になったマンションのキッチン。筆者撮影

 2023年1月から3月に販売されたマンションで、全国トップの人気となったのはザ・パークハウス高輪プレイス。JR品川駅から徒歩8分の高台で、全27戸のこぢんまりしたマンションだ。

 その価格設定は、約49平米の1LDKから約152平米の3LDKで1億2580万円から3億7700万円。100平米を超える大型住戸は3億円を超えるが、1億円台で購入できる住戸も多い。

 その価格設定と、品川駅周辺で進む再開発への期待などが第一の注目点となるマンションだ。

 続く第2位はJR総武線船橋駅から徒歩7分のザ・パークハウス船橋本町で、約57平米〜70平米の2LDK〜3LDKが5200万円から7400万円予定。3位はプラウド阿佐谷南二丁目で、約38平米から109平米の1LDK、3LDKが6198万円から2億5998万円の価格設定だ。

 販売総戸数が200戸を超える大規模マンションで人気ナンバー1になったのは、新宿区内のパークタワー西新宿。約42平米〜91平米の1LDK〜3LDKが8000万円台から2億2400万円台の予定価格……ここで取り上げた人気マンションは、私のオフィシャルサイトで5月29日から公開している全国新築マンション「人気指数」第4回 2023年1月〜3月速報で明らかになったもの。「マンション人気指数」は、全国の新築分譲マンションを対象に、2011年7月から調査活動を開始。毎年3〜4回公表し続けている私の独自調査データである。

 今回調査では、今年1月から3月までの販売中マンションを対象に、資料請求数と販売センターへの来場者数を調べ、分譲戸数から「人気指数」を算出。販売中物件ならば、指数「1」以上を「人気マンション」と認定している。その計算方法はオフィシャルサイトの記事中で説明させていただいた。

安くはないが、騒がれるほど高額でもない

 人気マンションの例として出した4物件の価格は決して安いとはいえない。が、「約1000戸のマンションで平均価格が4億円」とか「首都圏の新築マンション平均価格が1億円超え」というようなニュースに接していると、それほど高くないかな、と思えてしまうから不思議だ。

 しかし、「これが、現実的にマイホームとして購入される新築マンションの価格」なのだろう。

 人気マンションのランキングでは、納得できる価格水準で、納得できる内容のマンションが並んでいる。「なるべく抑えた価格で、精一杯工夫を凝らしたマンションをつくってほしい」という購入者の希望に応えたマンションが多いのだ。

 では、どんな点が「工夫を凝らしている」と評価できるのか。

 人気指数第1位になったザ・パークハウス高輪プレイスで説明しよう。

実質、2戸1エレベーターの暮らしが実現

 同マンションは、再開発が進む品川駅の徒歩圏だけが特徴ではない。そのつくりに魅力が多い点にも注目すべきだろう。

 といっても、小規模であるため、豪華な共用施設はない。せいぜいエントランス部分にラウンジがあるくらいだ。一方で、エントランス前に背の高い石積みを配置し、メールコーナーをバックヤードから表に出し、不要な郵便物を廃棄するためのゴミ箱が隠されているといった他にない心配りも施されている。

 基本的に1フロア4戸の構成で4戸の中央にエレベーターを配置。エレベーターには両サイドに開く扉が設けられ、「その階でその扉を使うのは2戸だけ」という仕組みになっている。いわゆる「2戸1エレベーター」のような暮らしが実現するわけだ。

 さらに感心したのは、システムキッチンに細やかな工夫があること。

 まず、ディスポーザーがシンク中央ではなく、端に寄せてある。これにより、流しに大きな鍋などを置いても、ディスポーザーの邪魔になりにくい。

ザ・パークハウス高輪プレイスには、ジーマティック社のシステムキッチンが備えられ、端に寄せたディスポーザーが目を引いた。叩き出しで整形されたシンクも見事だ。筆者撮影
ザ・パークハウス高輪プレイスには、ジーマティック社のシステムキッチンが備えられ、端に寄せたディスポーザーが目を引いた。叩き出しで整形されたシンクも見事だ。筆者撮影

 ディスポーザーを端に寄せることで、シンク下のディスポーザー本体も端に寄り、収納スペースが使いやすくなる。そのシンク下をのぞくと、観音開きの扉中心に支柱が立てられていた。

ディスポーザーが端に寄せてあるので、シンク下の収納スペースが広く、使いやすい。中心部の支柱は耐久性を高める効果が大きそうだ。筆者撮影
ディスポーザーが端に寄せてあるので、シンク下の収納スペースが広く、使いやすい。中心部の支柱は耐久性を高める効果が大きそうだ。筆者撮影

 支柱は、システムキッチンの収納すべてに配置され、長く使い続けても歪みや扉のズレが生じないようにする工夫と評価された。扉がゆっくり閉じるソフトクロージングの動きも幅が広くて気持ちがよい。分譲マンションでは、こういう機能性の高さが大事なのである。

 東京の都心部では、近年値上がり期待で極めて高額のマンションに転売目的の購入者が殺到。1人もしくは1社で複数の購入申し込みをすることが問題視されるようになった。

 そのように値上がり期待でマンションを購入する投資家と、自ら住む目的でマンションを購入する実需層(セカンドハウスを購入する層を含む)とは、マンションを選ぶ視点が異なるし、予算感も異なる。

 私が調べている「マンション人気指数」は、実需層向きの新築マンションを対象に、人気度を調べたデータの色合いが濃い。

 というのも、真剣にマンション購入を検討する人は何度も販売センターを訪れる傾向が強く、販売センターを訪れる人の延べ人数が多い物件ほど、私の「人気指数」は数値が高くなるからだ。

 そのため、あまり目立たず、地元で人気のマンション名が多く含まれているのも特徴となっている。

 オフィシャルサイトでは、全国の人気マンションを公開している。そこには、一般のニュースには出てこない名前のマンションが多い。話題に上がることがなくても、本気で購入を検討している人の間で注目されているマンションである。

 これから、マンション購入を検討してみたい、という方にも参考になるデータとなっているわけだ。

住宅評論家

年間200物件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。

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