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今、狙い目となる、広さ・設備でゆとりあふれる「デッドストックマンション」って何?

櫻井幸雄住宅評論家
数年前の基準で企画されたマンションは、より広く、設備充実となりやすい。筆者撮影

 横浜市内の「パークシティらら横浜」が販売完了となった。

 同マンションについては、2022年1月の記事建て替え完了した横浜市の「傾きマンション」。日常をとり戻すのは、もう少し先……で詳しく書かせていただいた。

 要約すると、2015年に建設時の杭打ち不備によって一部の棟に傾きが生じていることがわかり、全棟建て替えになったマンションが「パークシティらら横浜」。建て替え工事が2021年2月に完了し、一部の住戸が一般に販売された。

 販売に際し、注目されたのは同マンションの住戸専有面積と価格設定だった。2022年1月の記事で紹介した住戸は、約78平米から83平米の3LDK、4LDKが4950万円から5750万円だったのである。

 首都圏だけでなく、全国的に新築マンション価格が上がり、面積や設備の圧縮が目立つ現在、ありえないくらい広く、価格も抑えられていた。

 ゆったりした広さとお手頃さが実現したのは、2006年頃の基準でつくられたマンションを、そのまま再建築し、当時とあまり変わらない価格で分譲したからだ。

 ファッションや道具の世界では、「デッドストック」という言葉がある。長期間保管されていた在庫品がたまたま発見されて販売されることを指し、店頭に出ると、「今では、とてもつくれない商品」として珍重されることが多い。

 「パークシティらら横浜」は、「長期間保管されていた在庫品」ではなく、事情があって新築されたのだが、15年以上前の企画でつくられ、今では珍しい広さを有している点で「デッドストック」と同じ特性を持っていた。

 マンション価格が大きく上昇し、間取りや設備に変化が生じている今、以前の基準でつくられたマンションに魅力を感じる人は多いはずだ。

 では、他に「デッドストック」と呼べるマンションはないか。「建て替えられたマンション」という意味ではなく、「以前の基準でつくられたマンション」がまだ残っていないか。そして、「パークシティらら横浜」ほど広いつくりは無理としても、ゆとりある広さ、設備を保つ物件はないか……その視点で、首都圏、近畿圏、東海圏で、デッドストックマンションを探してみた。

注目したいのは「完成済み」のマンション

 現在も購入可能なデッドストックマンション、つまり、以前の基準でつくられた物件は、「完成済みマンション」として販売されているものが該当する。  

 数年前の基準で建設され、広さや設備仕様でゆとりを感じる物件だ。

 たとえば、首都圏の埼玉県さいたま市浦和区で今年1月に完成した「シティハウス浦和針ヶ谷」は、設備仕様の高さが際立つ。

 現在、首都圏では60平米台前半の3LDKが出ているなか、67平米の3LDKが中心となり、LDの床暖房はもちろんキッチンにはディスポーザー(生ゴミ粉砕処理機)と食器洗い乾燥機が標準設置される。キッチンのスライド収納にはソフトクロージング機能が備えられ、浴室にはミストサウナまで付く。

今年1月に建物が完成した「シティハウス浦和針ヶ谷」。3LDKタイプが5000万円〜5700万円でディスポーザーや床暖房、ミストサウナが付くなど設備仕様のレベルが高い。冒頭の写真も同マンション。筆者撮影
今年1月に建物が完成した「シティハウス浦和針ヶ谷」。3LDKタイプが5000万円〜5700万円でディスポーザーや床暖房、ミストサウナが付くなど設備仕様のレベルが高い。冒頭の写真も同マンション。筆者撮影

 同マンションの立地は、JR京浜東北線の与野駅まで徒歩11分の住宅地内。与野駅は浦和駅とさいたま新都心駅の間に位置しているが、浦和駅周辺も、大宮駅周辺も、ここ数年で新築マンション価格が大きく上昇して、新築3LDKは6000万円以上が当たり前になっている。それに対して、今年1月に完成した同マンションは、現在販売中の3LDKで5000万円ちょうどからの設定だ。

 建設地周辺は、一戸建てを中心にした落ち着いた住宅エリアで、南西向き中心の同マンションは日当たりがよい。1階住戸はすべて専用庭と専用駐車場が付く、という特徴も備える。

「シティハウス浦和針ヶ谷」の専用庭付き住戸。写真中央、開いたドアの先が専用駐車場となる。筆者撮影
「シティハウス浦和針ヶ谷」の専用庭付き住戸。写真中央、開いたドアの先が専用駐車場となる。筆者撮影

 静かさや日当たりのよさ、専用庭・専用駐車場付きの利便性を実際の建物で確認できるのも、完成済みマンションの利点となる。

近畿圏や東海圏の完成済みマンションも高スペック

 近畿圏の完成済みマンションに、兵庫県尼崎市の「クラッシーハウス尼崎GRANDPLACE」がある。JR神戸線他が利用できる尼崎駅最寄りの大規模マンションで、敷地入り口から建物までのアプローチがゆったりしてスケールが大きい。

2022年1月に完成した「クラッシーハウス尼崎GRANDPLACE」は、敷地入り口から建物まで長いアプローチがある。なんとも贅沢な仕様だ。筆者撮影
2022年1月に完成した「クラッシーハウス尼崎GRANDPLACE」は、敷地入り口から建物まで長いアプローチがある。なんとも贅沢な仕様だ。筆者撮影

 近年、人気が上がっているJR尼崎駅徒歩4分で、約57平米の2LDKが4600万円台からの設定。最新の2LDKには50平米前後のものが出ていることを考えれば、ひとまわり広いし、価格に納得感が大きい。そして、室内には大型ウォークインクローゼットが付き、出幅2mのバルコニーにはスロップシンク(外部水栓)も設置されている。

 東海圏で名古屋市内に2022年1月に完成した「プラウドタワー名駅南」は、名古屋市営地下鉄東山線の名古屋駅から徒歩9分ながら、約71平米の3LDKが5698万円など。キッチンカウンターが天然石仕様となり、食器洗い乾燥機や手洗い付きトイレなど設備が充実している。

「プラウドタワー名駅南」のトイレ。便器とは別に手洗いが付く、豪華仕様だ。筆者撮影
「プラウドタワー名駅南」のトイレ。便器とは別に手洗いが付く、豪華仕様だ。筆者撮影

 いずれも、実際の建物や共用の庭、室内を見ることができ、実物を見て、購入を検討できる。

 その「確実さ」も、デッドストックマンションの利点なのである。

住宅評論家

年間200物件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。

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