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知られざる数億ションの世界(6)真の「高級マンション・ブランド」いくつ知っている?

櫻井幸雄住宅評論家
上位ブランドのマンションでは一般とは異なるつくりが採用される。筆者撮影のイメージ

 新築時の分譲価格が数億円、ときに10億円を超える高額住戸=数億ション、10億ションは、一般の住まいとは大きく異なる部分が多い。今回は、高級マンションの「ブランド」に関する話だ。

 日本には、名前を聞いただけで「高級物件」と認識されるマンション・ブランドがある。代表は、三井不動産レジデンシャルの「パークマンション」だろう。同社の場合、主に大規模物件に付けられる「パークコート」も上位ブランドとなる。

 この上位ブランドは昭和時代からあった。戦後の復興期、東京都心部にマンションが増え始めた頃から「高級」と目されるブランドは存在していたわけだ。

 しかし、その中には、現在、一般的な認知度が低くなったものも含まれる。

 そこで、記憶に残したい真の高級マンション・ブランドをまとめてみた。

 住友不動産の「ラ・トゥール」や森ビルの「ヒルズ」のように賃貸だけもしくは賃貸主体のブランドは対象外として、10のブランド名を挙げたので、いくつご存じか試していただきたい。

 そのうち、知っている人が少ないのでは、と思われるブランド名が4つから5つある。なので、10ブランドのうち6つ以上知っていたら、かなりの「通」といってよさそうだ。

 以下、認知度が高いと思われる順にブランド名を挙げてゆこう。

認知度が高いと思われるブランド名

 最初は、多くの人がご存じと思われるマンション上位ブランドの名前だ。

1、 パークマンション

2、 ザ・パークハウスグラン

3、 グランドヒルズ

 以上3つはすべて財閥系の大手不動産会社がつくるマンションの上位ブランドだ。

 前述したとおり「パークマンション」は、三井不動産レジデンシャルの上位ブランド。「ザ・パークハウスグラン」は三菱地所レジデンスの上位ブランドで、「グランドヒルズ」は住友不動産の上位ブランドだ。

 いずれも数は少ないのだが、大手不動産会社のブランドであるため、認知度は高い。

かつては、一目も二目も置かれたブランド

 次は、昭和時代に有名だった高級ブランドのグループ。多くは都心の高級マンションをつくっていた不動産会社のブランドとなる。このグループから、知っている人は少なくなってゆくだろう。

4、 ドムス

5、 ペアシティ

6、 コープ

 昭和時代からマンションを知っている人なら、懐かしくなる名前ばかりではないか。ドムスが事業主となる「ドムス」シリーズは港区の青山エリアや麻布エリアなど憧れの住宅地内に多くつくられた。

 「ペアシティ」は東高ハウスのブランド。古い話で恐縮だが、山口百恵・三浦友和夫妻が結婚後に住んだマンションとして週刊誌を賑わせたことがある。これも憧れのブランド名だったが、同社のマンションは購入に際して審査があり、「医師、弁護士でも審査に落ちることがある」とされて、昭和期の富裕層をびびらせたものだ。

 「コープ」は、東京コープ販売のブランドで原宿駅近くにある「コープオリンピア」が有名だ。

 現在はペアシティとコープというマンション・ブランドがあったことさえ知らない人が多いのではないか。

 同様に、今は知らない人が多いのでは、と推測されるのが次の2ブランドだ。

新作が待たれる上位ブランド

 以下は、しばらく新作が出ておらず、復活が待たれる上位ブランドである。

7、 パレロワイヤル

8、 グランツオーベル

 「パレロワイヤル」は、長谷工コーポレーションの前身・長谷川工務店時代の上位ブランド名。昭和52年(1977年)に千代田区の永田町で竣工した「パレロワイヤル永田町」をはじめ、首都圏・近畿圏で37物件がつくられた。

 昭和52年といえば、パソコン、携帯電話はもちろんなく、ファクスも普及していなかった。その時期に「パレロワイヤル南青山」では、他に先駆けてオートロックを採用していた。先進性も高かったのだが、残念ながら新作が出ていない。

 「グランツオーベル」は、大成有楽不動産の上位ブランドで、南平台や等々力、逗子海岸などでつくられた。その出来のよさから、不動産関係者の視察が殺到した。近年では、中野で1物件が出ただけである。

フレッシュな上位ブランドも

 最後は、近年生まれた、もしくは復活した上位ブランド。新世代のブランドというべきか。

9、 グランリビオ

10、 ザ・ライオンズ

 「グランリビオ」は、日鉄興和不動産の上位ブランドだ。同社は高級賃貸マンション主体の「ホーマット」を展開してきた実績があり、その経験を生かしたのが「グランリビオ」。この10月以降、表参道、市ヶ谷砂土町、浜田山で3物件が販売される。

 「ザ・ライオンズ」は、大京の上位ブランドだ。しばらく供給が途絶えていたが、こちらもこの秋から「ザ・ライオンズ池袋」の販売が開始される。11年ぶりの登場という。

 「ザ・ライオンズ」は絢爛豪華というわけではなく、上品な質のよさが持ち味である。

「ザ・ライオンズ池袋」の住戸に採用されるイタリア製のドアノブ。重厚な操作感も特徴となる。細部にこだわるのも、上位ブランドの特徴である。同マンションのモデルルームで筆者撮影
「ザ・ライオンズ池袋」の住戸に採用されるイタリア製のドアノブ。重厚な操作感も特徴となる。細部にこだわるのも、上位ブランドの特徴である。同マンションのモデルルームで筆者撮影

 いかがだろう、いくつのブランド名をご存じだったろうか。

 不動産業に携わっていても、若い人が知っているのは5つくらいか。10ブランドすべて知っている人は少ない。特に「パレロワイヤル」がどの会社のブランドかは難問だろう。

 ちなみに、不動産会社の中には、上位ブランド名を設定していないところも多い。野村不動産では「プラウド」の上位ブランドを設けていないし、東京建物の「ブリリア」、東急不動産の「ブランズ」、積水ハウスの「グランドメゾン」、大和ハウス工業の「プレミスト」にも上位ブランドがない。

 上位のブランドを設けていないが、しかるべき物件は仕様を高めている。つまり、上位ブランド名がないからといって、高級マンションをつくっていないわけではない。

 プラウドやブリリアにも、堂々たる高級マンションが存在していることを最後に付け加えたい。

※最初の記事で「阪急阪神不動産のジオには上位ブランドがない」と記述しましたが、上位ブランド・ジオグランデがあることを失念しておりました。その部分を10月18日に修正しました。

住宅評論家

年間200物件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。

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