都心マンションが「コロナ禍で価格暴落」の予測を覆し、再評価されている理由

都心近くに住めば、通勤時間は短くて済む。通勤至便はやはり強い……。筆者撮影

 マンション販売センターが営業を順次再開し始めたのは6月に入ってから。その直後から郊外で3LDKが3000万円台で購入できるマンションの人気が上昇。予想された以上に新築マンションが売れる状況が生まれた。

 その結果、6月はマンション発売戸数が大きく増えた。

 不動産経済研究所の発表によると、首都圏で6月に発売された新築マンション戸数は1543戸。緊急事態宣言下の4月が686戸、5月が393戸だったことと比べると、大幅な増加だ。

 といっても、対前年同月比でみると、やはりマイナス。今年6月と昨年6月を比べると、今年6月の新築マンション発売戸数は3割減だった。昨年と比べると、まだ売り出されるマンション住戸の戸数は少ない。それでも、5月は対前年同月比で8割以上のマイナスだったので、大きく回復してきているのは間違いない。

郊外大規模に続き、都心部でも

 6月に来場者を多く集めたのは郊外のマンション、それも、住戸が広くて割安な価格設定のマンションだった。

 そして、7月に入ってからは、別の声も聞こえてきた。それは、「都心マンションでも、来場者の増加が顕著」というものだ。

 都心は、コロナ禍で住みたがる人が減るという声が一部にあった。都心から離れる人が増えて、都心マンションは価値が暴落する、という大胆な予測もあった。予測と書いたが、データや販売現場の取材に基づいたものではないので、予言のようなものだが……。いずれにせよ、欲しがる人が減るのでは、と考えられた都心マンションだが、実際は購入検討者が早々に増えだしたわけだ。

 といっても、港区や千代田区で100平米・3億円以上、というような超都心の超高額マンションの購入者が増えたわけではない。そのような高額・特殊マンションは数が少なく、もともと限られた人を対象にひっそりと販売されており、その状況に変化はない。

 購入検討者が増えているのは、JR山手線のちょっと外側、価格に多少納得感が感じられるマンションだ。

 たとえば、湾岸の東雲エリアやJR京浜東北線大井町駅エリア、そして江戸川区や墨田区、足立区エリアなど。3LDKが6000万円台から9000万円台、2LDKであれば5000万円台からの設定となる場所である。

通勤ラッシュがなくならないなら……

 6000万円以上の3LDKは無理としても、5000万円台の2LDKならばローン金利が低いおかげでなんとか手が届く、という人は少なくない。そういう人が動き出したのが、最新の首都圏マンション市況。結局、都心部でも割安感のあるマンションが人気を高めているわけだ。

 その理由として考えられるのが、「やはり、通勤時間は短いほうがよい」と考える人が急速に増えていることだ。

 4月、5月にテレワークがもてはやされたが、6月以降、都心への通勤を再開した勤め人が多く、電車の通勤ラッシュが復活した。大学が授業を再開していないので、大学生が減っている分、ラッシュは緩和されているのだが、こんなに密集して大丈夫かな、と心配になる混み具合だ。

 混んだ電車に乗れば、「やはり、テレワークは一部だけ」との思いが強くなる。

 ラッシュの電車に乗るのには不安がある。長時間の乗車であれば、なおさらだ。

 そこで、電車に乗る時間が短くて済む場所、人によっては自転車で通勤できるような場所に暮らしたい、という考えが生じ、都心マンションを物色する人が増えてきたと考えられる。

 コロナ禍で郊外に出てゆく人が増える一方で、コロナ禍だからこそ、再び都心に注目する人もいる、ということである。しかも、5000万円台の2LDKに興味を示す人に若い世代が増えている、というのが最新の傾向だ。

9月以降のマンション市況は手探り状態

 郊外でも都心近くでも増えだしたマンション購入検討者。しかし、このままマンションが売れる時代になってゆくか、となると、それは別問題だろう。6月、7月はマンション販売センターが閉鎖された4月、5月に溜まっていた需要が押し寄せているだけ、という見方ができるからだ。

 郊外マンションにも、都心マンションにも、溜まっていた需要が押し寄せている……それは事実だろう。

 溜まっていた需要が押し寄せているだけで、後が続かないなら、いずれ潮が引く。それが起きるとしたら、9月以降か。その9月は、毎年、多くの新規分譲マンションが販売を開始する時期にあたる。

 例年なら、新規分譲マンションが勢いよく売り出される時期なのだが、今年はどうなるか。現在の来場者増が一時的なものなら、不動産会社各社は発売戸数を調整せざるを得ない。

 コロナ禍を経験した後、あらゆる業界で手探りの状況が生まれている。

 マンション分譲でも手探り状態が続くため、マンションの新規販売は控えめに行われることになりそうだ。

 販売戸数を絞って、魅力的なマンションだけを売り出し、価格もできる限り抑える。そこに購入者が途切れることなく押し寄せたら……暴落どころか、都心、郊外の両方でマンションブームが起きる可能性もありそうだ。

年間200物件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。

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