根拠希薄なタワマン・クライシス。一方で、長寿に対応したローンがない問題も

大都市のタワマンは駅近など便利な場所に建つので価値は下がりにくいが……。筆者撮影

 タワマンという呼び名が定着しつつある超高層マンションに、ネガティブな報道が頻発している。その内容には根拠希薄なものがあり、とても信じることができないものが多い。そのことについて、これまで2つの記事で解説した。

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 一方で、タワマンと呼ばれる超高層マンションが抱えている本当の問題は見過ごされている。

 タワマンが抱えている本当の問題と、その対応策について考えてみたい。

正確にいうと、タワマンは「超高層マンション」

 「タワマン」の呼び名が定着しつつある超高層マンションは、厳密に言うと地上60mを超える高さがあり、階数にしておおよそ20階建て以上の建物が該当する。

 超高層マンションの第1号は、1976年に住友不動産が建設した地上21階建ての「与野ハウス」。まだ容積率や高さ規制の緩和が行われる前の話だ。

 その後、1990年代の後半から、首都圏各地に超高層マンションが増え始め、それから約20年経った現在、タワマンの呼び名が定着しようとしている。

 が、タワマンというと、10階建てや15階建ての塔状マンションも含まれてしまい、紛らわしい。

 この記事では、正確を期すため、必要に応じて一部「タワマン」ではなく正確な呼び名である「超高層マンション」と表記する。

現在の超高層マンションには200年の長寿命も

 超高層マンションは、容積率や高さ規制の緩和とともに、高強度コンクリートの普及によって広まった。強度の高いコンクリートを使うことで、従来よりも背の高い建物を建設しやすくなったからだ。

 高強度コンクリートは、強いだけでなく、寿命も長い。昭和時代に建設されたマンションの多くは、耐用年数が40年から50年であるのに対し、高強度コンクリートで建設された超高層マンションは、100年以上の耐久性があるとみられている。

 さらに、21世紀に入り、2009年にはコンクリートの質をさらに高め、内部の更新を容易にした長期優良住宅の認定制度が生まれた。その認定を受けた超高層マンションであれば、さらに高い耐久性が見込まれている。

 この超長寿命のマンションが登場したとき、「200年住宅」という呼び名も生まれた。が、「200年住宅」の呼び名はすぐに消えた。「200年持つかどうかは200年経たないとわからない」という、そりゃあそうだけど、と言いたくなる物言いが入り、自粛されたのである。その発信元は国土交通省の役人だといわれているが、確認はできていない。伝聞証拠の域をでないのだが、不動産業界、建設業界がこの「個人的感想」に過剰なほど反応(自粛)したのは事実だ。

 じつは、100年の耐久性を持つようなマンションが建設可能になった80年代後半にも「100年もつかどうかは、100年経たなければわからない」との声があった。以後、「100年もつ」も「200年もつ」も公に表されていない。

 超高層マンションは寿命が長いという特性を持っているにもかかわらず、何年もつか分からない、ということになっている。

 これこそが、超高層マンションの最大の問題点といえる。

困るのは、中古で住宅ローンを組みにくくなること

 大都市部の超高層マンション(タワマンの多く)は、都心部や郊外駅近の再開発エリアに立地し、将来も価値を失わない。中古で多少値段が高くても買いたいという人はこの先も多いはずだ。

 そして、100年先、200年先までの寿命をもっているので、長い間、中古マンションとして高い人気を保つことができる……のだが、ここで大きなネックが生じる。

 現在の中古住宅ローンが、それほど長い寿命に対応していないのだ。

 昭和時代の分譲マンションは40年から50年の寿命と考えられ、実際に築45年程度で建て替えられるケースが多くなっている。

 この「40年から50年の寿命」が、中古マンションの住宅ローンを組むときの基準になっている。つまり、築10年、15年程度なら35年返済の住宅ローンを組んで購入することができるが、築30年以上になると、返済期間が短くなったり、審査に通らなかったりする。

 45年程度しかもたない建物に、築30年で35年ローンは付けられない。せいぜい10年くらいが限界です、というわけだ。

 しかし、寿命が100年から200年に及ぶ超高層マンション(タワマンの多く)であれば、建設後30年経っても、建設後50年経っても、余裕で35年ローンを組むことができるはず……なのだが、ここで出てくるのが「100年持つかどうかは、100年経たなければわからない」という慎重派の考え方。今のままであれば、住宅ローンの審査をする金融機関は慎重な考え方をする。「私が買おうとするタワマンは、築40年でも他より長持ちするんです」と説明しても、「築40年では、むずかしい」と言われかねないのだ。

10年後から始まる35年返済のローン不可の時代

 タワマンが増え始めたのは1990年代の後半から。その頃のタワマンは、いま築20年を超えたあたり。まだ35年とか30年の長期ローンが組める時期である。

 しかし、このままでいけば10年後、20年後に、住宅ローンが組みにくい時代が来てしまう。住宅ローンを組むことができなければ、キャッシュで購入せざるを得ない。それでは、多くの人は購入がむずかしいだろう。

 喜ぶのは、キャッシュで購入できる投資家や賃貸経営を行う不動産会社。購入者が限られるので、買い叩くことができる。つまり、安く購入し、高い賃料で貸すことができるからだ。

 これを防ぐには、築40年以上でも、長期の住宅ローンを組むことができる体制をつくること。これもまたタワマンに限らず、寿命を延ばしたマンション、そして一戸建て全般が抱える問題であるのだが……。

 駅から離れたマンションと一戸建ては中古価格が下がるため、35年返済の住宅ローンが組めなくても問題は少ないかもしれない。しかし、タワマンは都心部や駅近再開発エリアにあるため、値下がりよりも値上がりの可能性が高い。それだけに、長期返済の住宅ローンが組めないと、影響が大きくなるわけだ。

 現在、一部の金融機関では築40年を超える中古マンションであっても、35年返済の住宅ローンを組むことができる。が、「このマンションの耐用年数は100年」というような文言が分譲時のパンフレットに入っていることを条件にするケースも。前述したとおり、「100年もつ」と明記できない事情があるにもかかわらずに、だ。

 政府は、昭和の後期から住宅の寿命を延ばす政策をとり続けてきた。その結果、100年、200年の寿命が想定される住宅が増えた。今度は、その長寿命住宅が中古として円滑に取引される仕組みづくりが必要なのだが、その整備が遅れている。

 整備が遅れている大きな原因が、建物の寿命を明記できないことにありそうだ。本当は100年、200年の寿命をもっているのに、それを堂々とアピールできない。それこそが本当の「タワマン・クライシス」なのかもしれない。