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「いだてん」の視聴質が1月クールの全番組中トップに!

境治コピーライター/メディアコンサルタント

視聴率ではなく視聴質では「いだてん」がトップ

テレビ番組の「視聴質」を計測するTVISION INSIGHTS社が4月11日に1月クールのランキングを発表した。それによると、全番組中1位はNHK大河ドラマ「いだてん」だった。

詳しくは同社のリリースを読んでもらえばわかる。

→TVision Insights社「2019年1月クール テレビ番組視聴質ランキング」リリースページ

このページの表をそのままここで掲載しても読みにくいので、同社からデータをもらってグラフを作成したので見てもらいたい。

データ提供:TVsionInsights社
データ提供:TVsionInsights社

番組の条件としては、2019年1月から3月までの間の15分以上の番組で5回以上放送されたもの。ということはレギュラー番組のランキングで、特番や一回限りのスポーツの試合などは含まれない。

これは「個人全体」のデータとなっており、「1.43」の番組が4つあったのでベスト13の番組となっている。また男性と女性それぞれのランキングも同じリリースに掲載されている。

データ提供:TVsionInsights社
データ提供:TVsionInsights社
データ提供:TVsionInsights社
データ提供:TVsionInsights社

「男性」では「YOUは何しに日本へ?」にトップの座を譲ったが、「女性」では2.01とひときわ高い数値が出ている。いずれにせよ、他の番組の水準を引き離して高い視聴質を示していることがわかるだろう。

ちなみにTVISION INSIGHTS社の視聴質は2つの数値を掛け算することで算出される。一つは「VI値」と呼ばれ滞在度の数値だ。テレビの前の滞在人数が多く、滞在時間が長いほど高くなる。もう一つは、「AI値」で注視度を測っている。数値が高いほど、画面を注視した人数が多く、注視秒数が長い。

VI値とAI値を掛け算した結果が、同社が定めた視聴質だ。つまり「いだてん」はテレビの前にいた時間が長く、画面を注視して見られた番組だった、ということだ。

これをTVISION INSIGHTS社は測定対象の家庭のテレビにセンサーを置き、テレビの前の人の動きや顔、表情を計測することで算出している。

画像はTVisionInsights社WEBサイトより
画像はTVisionInsights社WEBサイトより

詳しく知りたい方は同社の「視聴質データについて」のWEBページを見てもらうといいだろう。

テレビ番組の指標は多様に登場している

さて筆者は先日も「いだてん」について以下のような記事を書いている。

「いだてん」は大河ドラマに新しい視聴者を誘う起爆剤だ~「西郷どん」との視聴データから~

またこのところテレビの新しい指標について書いてきた。

松本人志が言った「テレビが世帯視聴率重視じゃなくなってきた」とはどういうことか~新時代の視聴率とは~

「ポツンと一軒家」は「イッテQ」に本当に勝ったのか?~テレビの視聴データは多面体へ~

これらの記事で一貫して主張しているのは、テレビ番組に関して今、様々な評価の指標が出てきていることだ。そして世帯視聴率はこれから1、2年で使われなくなる指標であることも強調しておきたい。

今やテレビCMの取引は関東圏では世帯視聴率ではなく個人視聴率を基準に行われている。10月からは関西・中京圏でも同様になる。来年4月には全国で個人視聴率を計測する体制をビデオリサーチ社が整える。これを受けて日本テレビは早々と社内指標を世帯ではなく個人視聴率で見るようになった。

2月あたりから「いだてん」について「視聴率が大河最速で一桁に!」などと世帯視聴率がよくないことを様々なメディアが記事にしている。もはやメインの指標ではない世帯視聴率をもとに10%を切ったかどうかをネタに書くのは、実は時代遅れの行為なのだ。ましてや、本記事で紹介しているように「視聴質」の計測も始まっており、一部の大手企業がこれを参考にCM枠の購入をしたり、CMの表現内容を評価したりしている。世の中はどんどん進んでいるのだ。

私が今回「視聴質」を取り上げたのは、これだけが「いだてん」の評価だ!と吠えるためではない。今はこのように様々な指標があることを知ってほしい、ということだ。知ってもらえれば、世帯視聴率というこれから使われなくなる指標だけで番組の良し悪しをいたずらに書く記事は減るだろうし、視聴者がそんな記事に悲しい思いをすることもなくなるだろう。なくなってほしいと思うのだ。

大切なのは、視聴者一人ひとりの目であり、感想だ。思ったことをTwitterなどで言葉にしてもらうといいと思う。自分はこう思った。あの人はこう感じた。そんな気持ちが行き交うことがソーシャルメディア時代のテレビ番組の楽しみ方だ。数字だけをやみくもに取り上げたり、それだけを根拠に番組がダメだと言ったりするのは愚の骨頂だ。みんなでのびのび番組を楽しむ環境を一緒に作っていければと思う。

コピーライター/メディアコンサルタント

1962年福岡市生まれ。東京大学卒業後、広告会社I&Sに入社しコピーライターになり、93年からフリーランスとして活動。その後、映像制作会社ロボット、ビデオプロモーションに勤務したのち、2013年から再びフリーランスとなり、メディアコンサルタントとして活動中。有料マガジン「テレビとネットの横断業界誌 MediaBorder」発行。著書「拡張するテレビ-広告と動画とコンテンツビジネスの未来」宣伝会議社刊 「爆発的ヒットは”想い”から生まれる」大和書房刊 新著「嫌われモノの広告は再生するか」イーストプレス刊 TVメタデータを作成する株式会社エム・データ顧問研究員

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