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ロシアはペットフード・サプライチェーンを破壊する?

坂口孝則コメンテーター。調達コンサル、サプライチェーン講師、講演家
動物達にもロシアの影響が及ぶのか……。(写真:イメージマート)

・ロシアのウクライナ侵攻と食糧難

ロシアがウクライナへの侵攻を強めています。そのなかでも、穀物関連施設への攻撃が激化しているため、食料供給不足へのおそれが世界中に高まっています。小麦相場は急騰しています。またアフリカ諸国の食糧難も懸念されます。

よく知られる通り、ロシア自体も小麦の最大輸出国です。ウクライナも同様です。統計によってデータに差異はあるものの、ロシアとウクライナで全小麦供給の3割を占めるほどです。

ロシアのウクライナ侵攻以降、ウクライナでは農地を捨てざるを得ないほど一次産業の従業者が迫害されてきました。冒頭で述べた通り、ウクライナの港が閉鎖されると同時に、ロシアの輸出も制裁を課されている状況が続いています。

さまざまな影響があるものの、深刻な影響を受ける業界の一つにペットフードがあります。ペットフードの企業はロシアでの事業を停止したり、広告出稿を停止したりとさまざまな問題がありました。同時に生産にも影響があります。

さきほど小麦を取り上げましたが、ウクライナはトウモロコシ、さらにはひまわり油があります。さらにロシアは肥料(窒素、カリウム、リン)などを世界に供給していました。白身魚も大変です。

・ペットフード業界の受難

もちろん人命が失われているときに、ペットフードの話は不謹慎ではないかという反論はありえます。しかし現実として影響があります。現在、ペットフードメーカーは原材料の代替供給先の模索に翻弄されています。

一部ではすでにペットフードの原材料の配合を変更したり、価格を引き上げています。

これは日本での一例ですが、ドッグフードは2022年2月、ロシアのウクライナ侵攻より高止まり状態にあります。

総務省統計局 小売物価統計調査から作成(ドッグフード平均単価を抜粋)
総務省統計局 小売物価統計調査から作成(ドッグフード平均単価を抜粋)

また、この記事によると(日本経済新聞「ウクライナ産小麦の生産42%減 22年、業界団体見通し」)、ウクライナは以前に3300万トンの小麦生産量がありました。しかし、それが1750万トンに減少しています。これに伴い、世界への輸出量が激減しています(かつて1890万トンだったところ、1050万トンほどになります)。

トウモロコシも同様の状況ですが、輸出の減少はペットフード業界にとっては大問題です。米国でもトウモロコシは収穫されます。しかし世界のどこであれ、穀物高騰の影響を受けます。

生産地は別に価格影響は不可避です。たとえば米国でペットフードは米国産のトウモロコシが使用されます。しかし、原材料のトウモロコシは価格上昇に見舞われています。

供給の不安定さは、生産数量の減少とそれに伴う入手困難を引き起こすかもしれません。ロシアのウクライナ侵攻は、私たち人間だけではなく、他動物(ペット)と付随産業にも影響を与えている状況です。

コメンテーター。調達コンサル、サプライチェーン講師、講演家

テレビ・ラジオコメンテーター(レギュラーは日テレ「スッキリ!!」等)。大学卒業後、電機メーカー、自動車メーカーで調達・購買業務、原価企画に従事。その後、コンサルタントとしてサプライチェーン革新や小売業改革などに携わる。現在は未来調達研究所株式会社取締役。調達・購買業務コンサルタント、サプライチェーン学講師、講演家。製品原価・コスト分野の専門家。「ほんとうの調達・購買・資材理論」主宰。『調達・購買の教科書』(日刊工業新聞社)、『調達力・購買力の基礎を身につける本』(日刊工業新聞社)、『牛丼一杯の儲けは9円』(幻冬舎新書)、『モチベーションで仕事はできない』(ベスト新書)など著書27作

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