韓進海運倒産と韓国政府のグダグダ
韓進海運の倒産
8月31日、かねてより経営不安が取り沙汰されていた韓進海運が、日本の会社更生法にあたる法定管理の申請を決定、事実上倒産しました。各地の港では、韓進海運保有船舶の入港拒否によって混乱の広がりが伝えられています。
私たちはサプライチェーン・調達・購買関連のネットワークを有しており、そこでも現場での混乱が報じられました。
船会社が担う海上輸送も、サプライチェーンを構成する重要な一要素であり、今回の事象は、サプライチェーンの維持を脅かす可能性があります。これまでに入手可能な情報と、想定される事態をまとめました。
韓進海運ってどんな会社か
輸送規模では世界で第7位の海運会社。市場シェアは2.9%。韓国海運業の最大手。ロゴは「HANJIN」。
同社は、米国市場に供給される商品の多くを運んでいました。米国の太平洋横断貿易において貨物量は、その総量の7.8%にもいたっていました。しかし今回の騒ぎを受けて、同社の船は、シンガポール、カナダ、米国、中国、いくつかの港で、来訪を拒否されたようです。同社は141の船舶を有し、128の船舶が稼働中だったようですが、実に79もの船舶が拒否されており、かなり困難な状況にあります(この79という情報は2016年9月6日付けの報道による)。
韓進海運の日本支店のホームページから、法定管理に関連する経緯と影響は、すでに報告されています。このホームページをご参照ください。主に、アジアと北米西海岸を結んで運行されています。
9月2日時点の資料では、日本へ寄港予定だった8つの本船の入港予定が未定になっています。
と数行があるのみです。
日本企業の利用企業は、どんな心配をすればいいのか
北米航路を利用している輸送/ロジスティックスの企業は、これまでは下落基調を実感しているはずです。実際に、本船料の推移を見てみましょう。このページのデータによると、対前年度比では下落傾向が続いていました。
ただし、今回の事象による反動で、値上げのみ込みが強い、と現場の部門から情報が上がってきています。
また、
・韓国の会社が運営する北米航路
・韓国と米国からの輸入
上記に当てはまる場合は注意が必要です。アメリカ大陸の西海岸(カナダのバンクーバーを含む)や、韓国の釜山が積地の貨物で、かつ次のアイテムについて、供給に遅延が発生する可能性があります(以下の輸入品リストはJetroのHPから引用)。
・韓国からの輸入品:石油製品、半導体、鉄鋼板、無線通信機器、金・銀・白金、自動車部品、プラスチック製品、精密化学原料、合成樹脂、嗜好食品
・米国からの輸入品:食料品・農水産物、化学品等、一般機械、光学機器・医療機器、航空機・同部品、電気・電子機器など
また、韓国や米国から購入し現在輸送中の場合、注視が必要です。韓進海運の船舶の運航を、どの企業が引き継ぐのか。積替えが発生するのか、それともそのままの本船を活用して、運行を別の船会社で引き継ぐのか。もし、購入品が、韓進海運に積まれてる場合は、注意が必要です。
今回のケースでは、韓国国内で韓進海運を救済する動きが報じられていません。現場の担当者にヒアリングすると、影響は長びくといった見通しのようです。しかし、もっとも大きな影響を受けるのは、年末のホリデーシーズンへ向け、世界の工場といわれる中国と、世界最大の消費地であるアメリカの間での貨物でしょう。
韓進海運倒産の報じられ方
朝鮮日報はかなり手厳しくこの倒産について報じています。記事を引用するな、と書いているので引用しませんが、まとめると「だいぶ前から倒産するとわかっていたのに韓国政府は放置した。なんてことしやがる」「政治家は、倒産したら影響が出るだろう、と評論家みたいなことばかりいってやがる」「もはや韓国政府に当事者能力はない」(いずれも大意)と厳しい論調です。
引き続き、状況を注視したいと思います。