米アマゾンの海運事業進出で、世界はヤバいことになるかもしれない
アマゾン海運事業参加の衝撃
はじまりは、米国の物流企業(Flexport)がブログに示した記事でした。
ここで、アマゾンがなんと中国・米国間でのNVOCC事業を自前化することが明らかになり、業界中に激震が走りました。物流企業(Flexport)は、連邦海運委員会リストのなかに、アマゾンの中国子会社(Beijing Century Joyo Courier Service Co., Ltd.)を発見したのです。さきのブログではご丁寧にスクリーンショットまで掲載しています。この子会社はかつてアマゾンが買収したところであり、オンライン小売業者です。
NVOCCとは「Non Vessel Operating Common Carrier」の略で、船舶等を有しない貨物業者のことです。アマゾンはまず他の船舶会社に依頼する形にはなりますが、非船舶運航業者として海運事業に登場することになりました。
おなじく同ブログから引用すれば、アマゾンは3500億ドルもの海運市場に参入することになります。もっとも、これは海運市場の規模で、他手段をふくめば1兆ドルをこえます。それだけのビッグマーケットにアマゾンが参加することの意義は小さくありません。
アマゾンの狙い
アマゾンが大々的に発表しているわけではないので、さまざまな推測が飛び交っています。しかし、たとえば、2015年12月にcargofactsが報じたところによると、かなり本格的にアマゾンが自前物流網構築に前向きではないかと思えます。
なんとすくなくとも20機もの貨物輸送機を取得する動きがあるというのです。さらに別のメディアは、欧州でColis Priveという物流業者の株式を取得する見込みである旨を伝えています。
ところで、なぜ中国米国間だったのでしょうか。多くのメディアは、中国には無数の売り手がいるため、アマゾンは米国市場に向けた、一貫した商品販売サービスを提供したかったからだ、と伝えています。これも実際にたしかでしょう。
くわえて、業界関係者の二人に聞いたところ、共通していた内容が二つあります。一つは、アマゾンのプライベートブランド戦略です。現在、アマゾンは自社ブランドの商品を多数販売しており(多くはPC関連商品です)、それらはメイドインチャイナが多いため、まず自社商品のコスト戦略から海運事業に参加するのだ、という見方です。
なるほど、自社商品のコスト削減のため、すなわち自らトライして育てて、そののちに外販する戦略は考えられます。自社で技術を温めて発展させたのち、一気に市場を奪いにいくのは、アマゾンのクラウドサービスなどを見ても予想可能です。
そしてもう一つが、海運事業に参加することで、既存の業者にたいして交渉に使おうというものです。現在、アマゾンはUPSやFedex等の業者とつきあいがあります。自分たちも「運べる」というステータスを確保することで、物流価格交渉を有利に運ぶという手段は、たしかに考えられることではあります。
もちろん、狙いが一つではなく、複数あるのでしょう。しかし、それにしても凄いと思うのはアマゾンが次々に手を繰り出すことです。
みんなの反応
これまた競合他社が正式にコメントを出しているわけではないので、日本の関係者にアマゾンの動きについて訊いてみました。反応は二通りに分かれ、「海運っていっても、NVOCCでしょ? どこかに頼むわけでしょ? それならウチには脅威じゃない」というものと「いやいや、彼らのことだから近々すべて自前化するかもしれない」というものでした。
やや楽観的にすぎるかもしれませんが、私はといえば、既存の業界慣習をアマゾンが変えてくれることを期待しています。
これはしかたがない側面も大きいのですが、利用者からすると、たとえばコンテナを輸送したいとき、フォワーダー(運送事業者)から複雑怪奇な見積書が届きます。あまりにも多くのサーチャージ(追加費用)が載っており、さらに交渉が難しいことがほとんどです。ですから、アマゾンが簡易的なシステムをユーザーに提供してくれたら、もっと世界は狭くなるのかもしれません。
それを迎え撃つ既存企業の活躍も期待します。