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「田舎の子の役なら任せてほしい」。キス必須『ドラ恋』で注目の上大迫祐希が初キスを撮った主演映画が公開

斉藤貴志芸能ライター/編集者
撮影/白幡敦弘

恋愛ドラマの共演から恋が生まれるかを描くリアリティショー『恋愛ドラマな恋がしたい』に出演して、注目された上大迫祐希。昨年撮った初主演映画『神田川のふたり』が公開される。互いの想いを伝えられないまま中学を卒業した2人が、高校生になって再会。神田川沿いの小さな旅をする。鹿児島から上京して4年。いまだ素朴な佇まいの彼女が女優を目指したユニークな経緯から聞いた。

無意識で「むにゅ」と言ってた自分が怖くて(笑)

――『ドラ恋』はご両親もご覧になっていたんですか?

上大迫 楽しみにしてくれていたみたいです。祖母が一番ハマって、メンバーの名前も全部言えるくらいになって(笑)。恋愛している姿を親に見られるので、テレくささはありましたけど、観てもらえることは嬉しいです。

――自分ではどんな感覚で観ていました?

上大迫 自分がどう行動したかはわかっていますけど、いざそれを画面を通して観ると、「すごいな、私」みたいになっちゃいます(笑)。たまに記憶にないことを言っていて、ビックリするときもありました。

――たとえば?

上大迫 ドラマの2話で主演させてもらって、本編の前に相手役の(鈴木)志遠くんとの撮影現場での風景が流れたんですけど、志遠くんのほっぺをギュッとするところで「むにゅ」と言っていたんです(笑)。「私、こんなこと言ったの?」という。あれを無意識で言っている自分が怖かったです(笑)。

――全体的に祐希さんは素朴さが胸をくすぐりましたが、それが計算だったら、相当あざといとも思いました(笑)。

上大迫 そうですよね(笑)。でも、計算できるほど考えていないので、たぶん私そのままなんだと思います。鹿児島から上京して4年目になりますけど、いまだに地元で高校時代の友だちに会うと「本当に東京にいた?」と言われるほど、何も変わってないらしくて。「田舎の子の役なら任せてください」と言いたいくらいです(笑)。

東京の電車は3分ごとに大量の人が降りて驚きます

――高校を卒業して上京したんですよね?

上大迫 そうです。しっかり芸能の道に挑戦したいと思って、飛び出してきました。ようやく新宿も渋谷も物怖じせず、行けるようになった感じです。

――当初は物怖じしていたんですか?

上大迫 人の量がすごくて、圧倒されました。何より驚いたのが、山手線とか地元では見たことない長い車両で3分おきくらいに来るのに、毎回大量に人が降りてきて。「みんな、どこに向かっているんだろう?」と思いました(笑)。

――今は東京でお気に入りの場所もできました?

上大迫 大学に通っていて、出やすいのは新宿です。ごはんを食べたり買い物をしたりしています。あと、一度撮影で雑司ヶ谷に行ったとき、猫がてくてく歩いていたり、木造の建物が残っていて、落ち着きました。歴史がきちんと残っている感じがして。

――『神田川のふたり』の舞台になった永福町や井の頭公園などには、馴染みありました?

上大迫 行ったことがなかったので、撮影に入る前に見ておこうと思いました。自転車を借りて、長回しが始まる永福町の辺りから神田川沿いを上って、井の頭公園まで行ってみました。東京にも緑が多いんだと気づけて、川も思ったより澄んでいて。ただ、自転車に乗るのが久しぶりすぎて、しっかり筋肉痛になりました(笑)。

人前は苦手でも台詞があれば堂々といられて

――鹿児島では、どんなところで遊んでいたんですか?

上大迫 学生が集まるのは、鹿児島中央駅のアミュプラザというところか、天文館という商店街の二択しかなかったです(笑)。アミュプラザに入っているミッテ10という映画館が、全国どこでもあるのかと思っていたら、東京にはなくて。カルチャーショックを受けました(笑)。

――中学から高校まで、地元の芸能事務所に入っていたそうですが、きっかけは何だったんですか?

上大迫 小学1年生のとき、鹿児島と東京を繋ぐ飛行機の航路ができて、広告に出演する一般の家族を募集していたんです。私の母が飛行機好きで、家族全員で応募したら、面接とか審査を受けてグランプリになったんですね。CMやスチールを撮影して、ラジオにも出演させてもらって。初めてメイクしてもらったり、衣装を着させてもらう体験も楽しくて、芸能界に興味を持ちました。それで中学生になったとき、新聞で地元で演技の勉強ができるところを見つけて、自分で応募しました。

――ミッテ10で何か映画を観て、刺激を受けたわけではなくて?

上大迫 当時は気になった映画を友だちと観に行くくらいでした。私は昔からやりたいことが多くて、芸能界以外にも、小学生の頃の夢はキャビンアテンダントだったり、ブラスバンドでトランペットをやって、オーケストラに憧れたり。中学生になったら陸上部に入って、高校では書道部に入ったり、興味が散らばっていたんです。そんなとき、ふと思ったのが、女優さんになったら、いろいろなことができるんじゃないかと。そこからは矛先をはっきり芸能界に向けました。

――人前で何かするのは好きだったんですか?

上大迫 めちゃめちゃ苦手でした(笑)。学校の発表でもマイクや紙が震えるくらいで、いまだに慣れなくて。でも、当時の事務所で年に1回、舞台の公演があって、台詞があれば堂々としていられたんです。なので、舞台に立って、お芝居することは好きでした。

「この世界でやっていけない」と心が折れかけて

――上京したときには、もう東京での事務所は決まっていたんですか?

上大迫 高校3年の終わりごろ、大学に受かって4月から上京することは決まっていたんですけど、事務所のアテはなくて。「東京に行ったら探さないと」とぼんやり考えていました。でも、鹿児島で映画を作っている会社の方が、「東京の事務所がこちらでワークショップを開く」と声を掛けてくださったんですね。そのとき、今の事務所の社長と出会いました。4月から上京することを話したら、所属という形にしてもらいました。

――そのワークショップで光るものがあったからでしょうね。

上大迫 いえ、鹿児島では演技レッスンには通っていても、ヌルヌルの生活でしたから。同年代の子が何人かいて、週1回集まる習いごとくらいの軽い気持ちで、本気で芸能界を目指していたとは言えなくて。東京で芸能界を目指す人がこんなにたくさんいるんだと、現実を知りました。ワークショップでも、みんなガッツがあって、「誰にも負けない」という気持ちでやっているのを肌で感じたんです。鹿児島から出てきて2~3ヵ月の頃、「私はこんな世界で絶対やっていけない」と、一度心が折れかけました。

コロナ禍の中で「このチャンスは逃せない」と

――そこから、どう持ち直したんですか?

上大迫 2020年にコロナで大学も1ヵ月お休みになって、鹿児島に帰っていたんです。そのとき、マネージャーさんから映画のオーディションのお話をいただきました。「クオリティの高い作品で選ばれる確率は低い」ということでしたけど、地方から出てきた高校生という役どころだったんですね。オンラインのオーディションを受けさせてもらったら、監督さんが「鹿児島弁の子を考えている」とおっしゃっていたので、可能性があるかもと。2次審査に呼んでもらって、「東京で対面でやりたいので出てこられますか?」と聞かれて、このチャンスは逃したらいけないと思ったんです。すぐ東京に戻って受けて、決まったのが『スパゲティコード・ラブ』でした。

――東京でもがく若者たちの群像劇の中で、インスタでウソのリア充投稿に明け暮れる不登校の高校生役でした。

上大迫 初めて本物の映画の現場を経験して、すごく楽しかったし、生き生きできました。これを味わったら、簡単に辞められません。お世話になったスタッフさんたちに、また別の現場で成長した姿を見せたいとも思って、頑張る糧になりました。

――祐希さんも「誰にも負けない」という気持ちに?

上大迫 そこまではどうしても、自分に染み付きません。でも、田舎出身の子の役は逃したらいけないという気持ちではいます。

40分の長回しで言い間違えても続けて

「キュートでファニーな青春ロードムービー」と謳われた『神田川のふたり』。互いに気はあるものの、想いを伝えきれずに別々の高校に進学した舞(上大迫)と智樹(平井亜門)。中学時代のクラスメイトの葬儀を機に久しぶりに再会する。下高井戸の神社で発見した絵馬から、亡きクラスメイトの願いを胸に、井の頭恩賜公園に向かうことに。

――『神田川のふたり』もオーディションだったんですか?

上大迫 こちらはオファーをいただきました。

――冒頭から約40分、再会した舞と智樹が神田川沿いを自転車で走ったりしながら八幡神社でお参りするまでのシーンは、ワンカットで撮ったんですよね?

上大迫 そうです。撮影前日にひと通り段取りをリハーサルしたんですけど、相手役の平井さんは別の現場があって、いらっしゃらなくて。当日は朝イチでテストして、ひとつもミスをできないプレッシャーの中、ずっと動いての撮影で、きちんと映らないといけない。いろいろ考えながらの体力勝負でした。

――何テイクか撮ったんですか?

上大迫 本番は2回です。どっちかを使う、ということで。

――ヤバかった場面もありました?

上大迫 私が途中で台詞を言い間違えています(笑)。素で「間違えた」と言ってしまって、止められるかと思ったら、全然カットが掛からなかったので、そのまま続けていきました。

現場で急に「歌っちゃう?」となりました(笑)

――2人で自転車をこぎながら話すシーンは、普通に撮っていても難しそうでした。

上大迫 結構大変でしたね。走る距離が思いのほか長くて、合間の台詞が用意されていなかったから、コンビニに寄ったあとからは、自転車に乗っている舞も智樹も基本アドリブでした。

――転びそうになったりはせず?

上大迫 素でぶつかりそうになって「危ない!」と思いました。いろいろなことに注意を払っていると、逆に目の前が見えなくなったりして。でも、最後まで大きな間違いなく撮れて、達成感がすごくありました。

――舞が1人で神社に向かいながら「トモキ、トモキ、トモキの元へ」と歌っていたのも、アドリブですか?

上大迫 当日、「八幡神社に着くまで長くないか?」という話になって、私が自転車で走っているだけで画が持つのか、不安があったんです。そしたら、監督が「歌っちゃう?」と言ってきて(笑)。もともとある曲は使えないので、急きょ自分の中から出てきた歌を口ずさみました。歌になっていたのか、わかりませんけど(笑)。

高校生ならではの甘酸っぱさが懐かしいなと

――お互い気があるけど言えない、という感覚はわかりますか?

上大迫 高校生の頃は一歩踏み込めないというか、好きな人が相手でも探り探りになってしまうことはあると思います。私もこの2人を見て、まったく同じ経験はありませんけど、懐かしく感じました。高校生ならではの甘酸っぱい関係性がいいなと思いながら、演じていました。

――祐希さんも『ドラ恋』周りで、高校時代の恋愛エピソードが出ていましたが、そのときも探り探りからだったんですか?

上大迫 自分からは全然言えません。でも、人生で初のひと目惚れをしたことはありました。高校のひとつ上の先輩で、スクールバスでたまたま何コか前の席に座っていて、「すごく目がきれいだな」と思ったんです。ジーッと目が離せませんでした。その後、校内イベントの手伝いで集められた中に私もその人もいて、「あっ!」とときめきました。それがきっかけでお話できるようになって。

――つき合ったんですか?

上大迫 その先輩には彼女がいたので。「カッコイイな」と思っていただけで、話せたといっても、まともな会話はできなくて。いちおう連絡先も交換してもらって、面と向かってなければ、それなりに話せましたけど、学校ですれ違ってもペコリとするくらい(笑)。そんなことがあって、高校生の恋愛は一番ドキドキして、青春していたなと今になって思います。

『神田川のふたり』より(C)2021 Sunny Rain
『神田川のふたり』より(C)2021 Sunny Rain

怖いものなしなのは楽しんじゃうからだと気づけて

――智樹の高校の女子から「彼女いるの?」「告白したい」とか言われるところでの、舞の微妙な表情もリアルでした。

上大迫 あのシーンは舞としては居心地が悪いですよね。私自身、学校のカーストが上の女の子たちはちょっと怖くて、ビビッていたので(笑)。でも、舞は「対等に話さなきゃ」と葛藤していて。智樹のことを「彼女がいるんじゃない?」と聞かれても、自分も気になっているし、舞の中では「智樹と長く一緒にいたのは私」と、心のどこかでマウントみたいなものもあったと思います。「譲りたくないな」という。

――キャラクター的には舞は演じやすかったわけですか?

上大迫 共感できるところはありました。でも、舞は自由奔放な印象があって、これだけ怖いものなしの女の子はいるのか、ちょっと難しいところでした。途中、監督から「ここで踊ってみようか」とか「歌ってみる?」と言われているうちに、舞はそういうことを楽しんじゃう女の子なんだと気づけて。そっちに持っていけばいいと思ってからは、楽しんで撮影できました。

――話しながら「パオーン」と言ったり(笑)。

上大迫 それもその場で出たもので、「乗っかります!」って感じでした。いまおか(しんじ)監督は、突拍子もないものやコミカルなものが急に入ってくるのが、面白かったです。

「そんなに軽く撮るもの?」と焦りました(笑)

――『ドラ恋』ではたくさんのキスシーンがありましたが、この映画のときは初めてだったんですか?

上大迫 はい。あのシーンも台本にはなかったんです。ワイワイしたところを撮ったあと、監督に「ここでキスできる?」と言われて。「キスシーンって、そんな軽い感じで撮っていいもの?」と思ったんですけど、マネージャーさんのOKも出て、どうしようかと(笑)。不安な気持ちもありつつ、平井さんにお任せで、初めてのキスシーンに挑みました。

――スムーズに撮れたんですか?

上大迫 監督があまり撮り直しをしない方で、そこもサラッとOKが出て、一瞬で終わりました。私自身、キスシーンが初めてだったこともあって、初々しさは画面に収まったんじゃないかと思います。

――それが監督の狙いだったのかも。

上大迫 そうですね。『ドラ恋』を経験したあとだったら、見せ方とかいろいろ気にして、違うものになっていたと思います。

何でもやって自分を知ってもらうことから始めます

――主演映画も公開ということで、この世界でやっていく自信は付いてきましたか?

上大迫 昨年から、いろいろ挑戦させてもらって、どの現場でも学ぶことがありました。映画や『ドラ恋』もそうですし、週刊プレイボーイさんグラビアにも出させていただいて。最初から「できない」と言うのでなく、「まずはやってみよう」という心意気で何でも挑んでいきたいと、思っているところです。

――グラビアで学んだこともあったと。

上大迫 初めて水着で撮影するということで、見せ方が何もわかっていなかったんです。ずっと不安でしたけど、メイクさんに「グラビアはありのままを見せればいいんだよ。それをカメラマンさんが収めてくれるから」と言ってくださって。その言葉で緊張が解けて、素を写してもらえました。

――水着は最初から抵抗はなかったんですか?

上大迫 正直ありました。私が水着を撮って、どうするんだと。偏見というか、地元の人に「女優になると言っていたのに」と思われるのが、悔しい気もして。でも、そういうことではないんだと、いろいろな現場を経験するうちにわかりました。今の私がするべきなのは、いろいろな人に知ってもらうこと。そこから始めなければ、全然広がらない。グラビア自体、やったらめちゃめちゃ楽しくて、挑戦して良かったと思いました。

――自分の強みになりそうなことも見えてきました?

上大迫 私は何か才能があるわけでないし、特技も全然ありませんけど、普通の女の子を演じさせてもらう枠もあると感じています。さっき言ったように、田舎から上京してきた冴えない子の役は掴んでいきたいです。私自身、東京に4年いても染まり切れなくて、自分の中に田舎者はずっといるので(笑)、胸の中にある桜島を大事にやっていきたいです。

撮影/白幡敦弘

Profile

上大迫祐希(かみおおさこ・ゆうき)

2000年12月28日生まれ、鹿児島県出身。

2021年に『スパゲティコード・ラブ』で映画デビュー。2022年に『恋愛ドラマな恋がしたい~Kiss me like a princess~』に出演。9月2日公開の映画『神田川のふたり』に主演。

『神田川のふたり』

監督/いまおかしんじ 脚本/川崎龍太、上野絵美

出演/上大迫祐希、平井亜門ほか

9月2日より池袋シネマ・ロサ、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開

公式HP

(C)2021 Sunny Rain
(C)2021 Sunny Rain

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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