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『妻、小学生になる。』で中学生の天才小説家を演じた當真あみ。沖縄出身15歳の抜擢の背景と素顔

斉藤貴志芸能ライター/編集者
撮影/松下茜

10年前に亡くした妻が小学生に生まれ変わって再会と、ファンタジックで心温まるドラマ『妻、小学生になる。』。主人公家族と別軸で中学生の天才小説家を演じてきたのが、15歳の新人・當真あみ。昨日放送の8話では、志半ばで死んだ男性が体に憑依していることを告げて、ストーリーの転機を担った。一躍注目の的となった彼女の素顔と抜擢の背景は? ドラマ撮影の合間に本人に聞いた。

幼い頃からバイオリンとピアノを弾いていて

 あどけなさを残しながらも端正な顔立ち。周りの空気まで澄むような清涼感。當真あみは沖縄の出身だ。

「東京の冬は寒いです(笑)。沖縄ではコートとか持ってなかったので、東京に行くときに必要だと思って買いました。ドラマの撮影でも、風が吹いている日は特に寒いなと感じます」

 特技には、3歳半から弾いているバイオリンを挙げる。

「テレビを見てバイオリンを弾くマネをしていたら、お父さんが習うことを勧めてくれました。オーケストラで『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』を弾いたことがあります。でも、人前よりも好きな曲を1人で弾くのが好きです。家でよく、クラシックや流行っているJ-POPの曲を弾いていました」

 加えて、幼稚園の頃からピアノも習い始めた。

「ピアノのほうはお母さんから勧められました。バイオリンと全然違って、難しかったです。中学1年から3年生まで、合唱の伴奏をやりました」

 そうした音楽の素養がありつつ、中学ではテニス部に入った。「コロナが流行る前の1年生のときは、夏休みも練習に行って頑張っていました」と振り返る。

スカウトされてCMデビュー、一流誌の表紙も

 本人は「学校で目立ったりはしてなかったです」というが、中2のとき、地元で同じ沖縄出身の玉城ティナらが所属する事務所にスカウトされる。

「ビックリしました。その頃はバイオリンや部活があって、テレビもあまり観てなくて、自分が芸能界に入ることは考えたこともなかったです。将来はリハビリの手伝いやマッサージをする理学療法士になりたいと、何となく思っていました」

 だが、考えた末、「こんなチャンスが次いつ来るかわからない」と芸能界に挑戦することを決意。昨年7月、リクルートの企業CMでデビューした。団地のベランダにたたずむ姿の美少女ぶりが話題になる。

 さらに、雑誌『POPEYE』の年末恒例のガールフレンド特集号で表紙モデルに起用され、横顔の写真が目を引いた。駅のホームに大きな広告看板も出て、當真自身も見に行き、「こういうところに自分が出たんだと、一番実感しました」という。

緊張は顔に出ないけど手が震えました(笑)

 そして、『妻、小学生になる。』で早くもドラマデビューを果たす。もともと演技の経験は小学6年生のときに、学芸会に出たことがある程度だった。

「そのときは3~4人の主人公がシーンごとにいて、私はその1人の役でした。普段あまり表に立って何かしたことはなかったんですけど、最後の学芸会だったので、やってみました。でも、ものすごくアガってしまって、その舞台のことは何も覚えていません」

 だが、このドラマのオーディションでの彼女は、中井芳彦プロデューサーによれば「堂々とした振る舞いやたたずまいで、我々を強引に引き寄せる不思議な魅力を感じました」とのこと。原作マンガでは男子中学生である天才小説家にピッタリと、作者の村田椰融氏も承諾のうえで出雲凛音役に決定した。

「オーディションのときも緊張はしていました。顔には出ないタイプですけど、ちょっと手が震えていたりします(笑)」

男性が自分の中にいる役で語尾も気を抜かないように

 『妻、小学生になる。』では、主人公の新島圭介(堤真一)の10年前に他界した妻・貴恵(石田ゆり子)が、小学生の白石万理華(毎田暖乃)に生まれ変わって現れた。一方、出雲凛音は生まれ変わりを描いた小説がベストセラーになり、天才中学生と注目を集めていた。実は事故死した小説家志望の男性が憑依していることを、圭介らに伝える展開に。

「原作と違って男の人が女の子の凛音の中にいるのが、難しいなと思いました。言葉や口調が、ちょっと気を抜くと普通の女の子に聞こえてしまうので、語尾とかは意識して気をつけました。家でお父さんの行動を見て、大人の男の人の動きもイメージしました」

 そして、突然気を失って病院で目を覚まし、直前まで会っていた貴恵の弟の古賀友利(神木隆之介)を「誰?」と言ったりも。男性としての記憶を失っているシーンでは、普通の女子中学生っぽく話して変化を付けた。

「新島家の人たちに自分のことを明かしたシーンは、一番印象に残っています。目の前に堤さん、神木さん、蒔田(彩珠)さんたちが集まっていて、今まで以上に緊張しました。他のシーンより台詞も長くて、家でもたくさん練習しました」

 男性が憑依した凜音は「生まれ変わりではありません」とキッパリ言い放った。貴恵が生まれ変わったという万理華も凛音と同じではないかと、真に迫る演技で圭介たちに悟らせてインパクトを残した。

現場は意外とにぎやかで楽しいです

 初めてのドラマの現場は、當真には「意外とにぎやかでした」との印象だとか。

「静かにやっているイメージがあったんですけど、俳優の皆さんもスタッフさんもよくおしゃべりしていて、現場はすごく楽しいです」

 共演シーンが多かったのが、子役時代から活躍を続けている神木隆之介。

「去年出演されていた『コントが始まる』とか観ていました。間近で演技がすごく自然だなと感じます。合間には最近聴いている音楽の話題になって、私がK-POPを聴くと言って、おすすめの曲を話したりしました」

 小学生ながら生まれ変わった妻ぶりが絶賛される毎田暖乃とも話したそう。

「撮っていない間は普通に小学生らしくて明るくて、いろいろとしゃべっていたんですけど、本番がスタートした瞬間、パッと大人に切り替わって。すごいなと思いました」

 當真自身、3話で登場してから、周りでの反響も多い。

「友だちから『昨日見たよ』『面白かった』とLINEが来ます。おばあちゃんからも『出ていたね。すごかったよ』と連絡をもらいました」

普段はおとなしくもうるさくもない真ん中(笑)

 アニメやマンガも好きという當真だが、普段読んでいるのは意外にも少年マンガが多いそうだ。

「アクション系が好きです。『呪術廻戦』、『チェンソーマン』、『東京喰種』……。あと、『デスノート』もいろいろ考えながら観るのが面白くて。恋愛ものはあまり観ません。でも、映画ではこの前、家で二階堂ふみさんの『オオカミ少女と黒王子』を観ました」

 最近では映画やドラマもよく観るように。

「『コンフィデンスマンJP』がすごく好きです。映画館に観に行きました。長澤まさみさんが弾けた役柄で、ドラマの『ドラゴン桜』でのサバサバした役とは違っていて。いろいろなキャラクターを演じられているのがすごくて、私もいつか弾けた役もできたらと思います」

 普段の自分はおとなしいタイプだから?

「おとなしいわけでもないし、めっちゃうるさいわけでもない、真ん中です(笑)。友だちとしゃべっているときは、わりと弾けていて。学校では、休み時間に他愛ない会話をするのが、一番盛り上がります」

前と変わった実感はなくて普通に過ごしてます

 間もなく中学を卒業し、4月からは上京して高校生活を始める。

「友だちと離れるのは、ちょっと寂しいです。でも、みんな家も近いから、戻ったときにはまた会えると思います。高校生になったら、ディズニーランドに行きたくて。沖縄からだと家族と飛行機で行ったことしかなかったので、友だちと行けたらいいなと思います」

 東京には仕事のたびに来ていて、もう慣れただろうか?

「コロナにかかってしまうと迷惑を掛けるので、東京に来ても、あまり出歩きませんでした。でも、沖縄とはまったく違いますね。人が多いし、建物も沖縄では20何階とか見たことなくて、ビックリしました」

 現在ドラマの他に、ブルボンのウェブCMや主演した短編映画も配信されている。1年前はまだ沖縄の普通の中学生だったのが、デビューからあっという間に出演作が続き、本人はどういう感覚なのか?

「いろいろなことが起きすぎて、そこまで実感はないです。友だちも家族も接し方が変わったりしていないし、自分も普通に過ごしています(笑)」

 とはいえ、『妻、小学生になる。』でさらに注目を集めて、活躍はいっそう広がりそうだ。

「もっと頑張って、いろいろなジャンルの作品に出られるようになりたいです」

撮影/松下茜

當真あみ(とうま・あみ)

2006年11月2日生まれ、沖縄県出身。

2021年にリクルート企業CMでデビュー。ドラマ『妻、小学生になる。』(TBS系)に出演中。短編映画『いつも難しそうな本ばかり読んでいる日高君』に主演。ブルボン『濃厚チョコブラウニーピスタチオ』『ピスタチオラッシュ』のウェブCMに出演。

金曜ドラマ『妻、小学生になる。』

TBS系/金曜22:00~

公式HP

(C)TBS
(C)TBS

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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