Yahoo!ニュース

浜辺美波が主演の『賭ケグルイ』新作が公開 「迷いがなくなって自由に演じられるようになりました」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
撮影/松下茜

浜辺美波が主演する『映画 賭ケグルイ 絶体絶命ロシアンルーレット』が公開される。3年前のTVドラマから続くシリーズで、ギャンブル狂の女子高生を演じている。清楚な美少女イメージの強かった彼女が狂気じみた演技を見せて、殻を破った作品でもあった。そこから今や若手トップ女優。この間の成長の経緯や大事にしているものなどを聴いた。

今は殻が破れた状態がベースです

――主演級の作品が続いて、お忙しいですよね?

浜辺 そんなことないですよ。その時その時によりますね。

――忙しい時期でも、毎日必ず時間を取ってやることもありますか?

浜辺 お風呂には毎日入るようにしています。筋肉を脚中心にほぐして、血液をちゃんと循環させてから寝ると、次の日が違うので。朝スッキリ起きられたら1日頑張れるので、前の日の夜から次の日のルーティンが始まると思っています。筋膜リリースにもハマって、電動ボールや筋肉をほぐすドリルを買いました。

――以前、『アリバイ崩し承ります』でお風呂に入りながらごはんを食べたりするシーンが話題になりましたが、実際の入浴中は何か他のこともしてますか?

浜辺 長い時間浸かりたいので、お風呂の中で台本を覚えたり、SNSを更新したりすることが多いです。お友だちのYouTubeを観たりもします。

――出演作がどんどん増えて、演技に対する取り組み方や考え方が変わってきたりはしますか?

浜辺 『賭ケグルイ』の最初のドラマの頃は高校生で、緊張もしましたし、自分の殻を破ることからスタートしてました。それが英(勉)監督を始め、いろいろな方のおかげで、すでに殻が破れている状態がベースになって。あとは現場でどうスイッチを入れて、さらにワンステップ上がれるか、自分との勝負になっているかもしれません。とにかくモチベーションを保たないといけないなと思っています。

――モチベーションを高めるためにすることも?

浜辺 モチベーションが落ちたら、映画を観るようにしています。洋画でなく邦画を観るんですけど、同世代や先輩の女優さんたちが全然違うステージで活躍されている姿に、「いつか自分もこうなれたら」と目標が改めて定かになります。なので、そういうときは映画館に行って、気合いを入れます。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

長澤まさみさんの映画で遠い目標が見えました

――そういう意味で、刺激になった作品というと?

浜辺 長澤(まさみ)さんの『MOTHER』はそうでしたね。事務所の先輩でもありますし、ちょうど映画館に人が少ない時期だったので観に行って、「私も頑張ろう」と思いました。

――長澤さんは浜辺さんが出場した「東宝シンデレラ」オーディションに、プレゼンターとして来てましたね。

浜辺 そうなんです。自分が事務所に入ったとき、長澤さんは24歳くらいで、お母さん役のイメージはなかったので、『MOTHER』で衝撃を受けました。私にはまだお母さん役はできないですが、今のことだけでなく、もっと遠くにある目標が見えた感じもしました。

――浜辺さんもデビューから10年で、目指していたものに近づいてはいるのでは?

浜辺 私はもともと女優さんになりたかったわけではなかったので、5年後や10年後のことを考えるのは、全部マネージャーさんたちに託してました。その中で少しでも長く続けられるように頑張ってきて、振り返るとたくさんの作品に出させていただいて、ありがたい限りです。昔の自分もビックリしていると思います(笑)。

――今は日本中から注目されている実感もあります?

浜辺 前よりは、という感じですかね。最初の頃に比べると、作品を「観たよ」とたくさんの方に言っていただけるようになりました。やっぱり作品は、観てくださる方に届いて成立するものですから。頑張ったことが形になる今の環境はすごく嬉しく思います。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

映画館は時間とお金をかけても行く価値があるなと

――有名になると、やっぱり大変なことも出てきますか?

浜辺 私は体格的にも、街とかではそんなにバレません。でも、夜中に家の近くのスーパーで買い物をしたあとに声を掛けられたりすると、私も1人の女の子なので怖いこともあります。もちろん声を掛けていたけるのはとてもありがたいのですが、シンプルにビックリしちゃいますね。

――そんな中で、さっき出たように映画館には行くんですか?

浜辺 そうですね。配信でも観ますけれど、映画館のほうが音の良さや大画面の迫力があったり、エンドロールまで観た余韻も感じられるので。始まる寸前に入れば目立たないし、友だちと離れた席を取ったり、いろいろ工夫をして楽しんでいます。

――最近の若い世代は配信派が多いようですが。

浜辺 私も配信で観ることは増えました。でも、お金と時間はかかっても、映画館で観るからこそ感じられることがあると思っているので。そういう方が増えたらいいなと思います。

――同世代の女優さんの作品も観るんですか?

浜辺 はい。私は第7回「東宝シンデレラ」オーディションの出身で、同期たちが頑張っている姿を見ると励まされます。

――浜辺さんの代は上白石萌音さん・萌歌さん姉妹や山崎紘菜さんと、逸材揃いでした。

浜辺 でも、みんなデビューしてすぐに知られたわけではなくて、何年もやって、少しずつ活躍できるようになったので。ライバルというより、もうこの世界でやってない子も多い中で残った仲間で、仕事で会えるのはただただ嬉しいです。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

自信を持って進んだことはありません

――今も演技で悩むことはありますか?

浜辺 多いと思います。あまり引きずるタイプではないんですが、「私って本当にダメだな」と思うことはよくあります。演技についてというより、体調やモチベーションの悩みが多いかもしれません。毎日最高のコンディションで、8時間睡眠で元気にお仕事に向かえればいいんですけど、必ずしもそうはいかない中で、いかにベストを出せるか。言い訳をしたくない戦いの中で、自分に勝てるか。そういうところで、よく悩みます。

――最初の話とも通じますが、心身のコンディションは大事だと。

浜辺 そうですね。それによって、作品のクオリティも変わってくると思うので。

――演技的には、ここ数年の作品で、何か新しいことに目覚めたりはしました?

浜辺 毎作品、いろいろな引き出しを開けてもらっている感じがします。どこかのシーンでバーンと開いたというより、先輩や同世代の俳優さんたちとご一緒することで変わったり、まだ未熟だからこそ、いろいろ進化できている気がします。

――「まだ未熟」という感覚なんですね。

浜辺 まだまだです。人としても女優としても、本当にちっぽけなので、頑張らなきゃいけないと思っています。

――これだけたくさん主役を張っていたら、自信満々で無敵感があるのかと思ってました(笑)。

浜辺 生まれてからずっと、そんな自信を持って堂々と進んできたことはありません(笑)。それはどこまで進んでも変わらないと思います。いつまでも自信はないでしょうし、地道に頑張ってコツコツ積み上げていきたいです。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

それまでになかった役で転換点になりました

――『賭ケグルイ』シリーズの最初のドラマの頃は、浜辺さんは清楚でおしとやかなイメージがありました。それがこの蛇喰夢子役で狂気じみた演技を見せて、今ではコメディで弾けたりもしています。『賭ケグルイ』が殻を破るきっかけになった感じですか?

浜辺 病気の役が続いていたので、当時この役をやることになって、皆さんビックリされていましたし、自分でも驚きました。大声を出して賭け狂って、それまでのイメージにない役もできるようになった転換の作品だったと思います。

――今回の2度目の映画化に当たっても、撮影ですぐ夢子モードに入れました?

浜辺 はい。最初のドラマから映画化したときは、夢子に戻るのにすごく時間がかかって、エンジンがなかなか掛からなかったんですけれど、今回は自分の中で夢子がどこに行ったかわからないような迷いは、まったくありませんでした。最初から好き勝手やって(笑)、楽しめました。

――今回は、夢子が以前よりは落ち着いてきた印象もありました。

浜辺 台本を読んで、「夢子の台詞が減ってるな」と思いました。監督が言うには、話が進むごとに夢子はしゃべらなくなって、最後にドンと出てくる役に変わってきているそうです。私としては、台詞が減るのはちょっと悲しい(笑)。でも、久しぶりの夢子の口調やお茶目なところをどう演じるか、ワクワクしましたし、台本を読んだだけでもカッコイイ夢子に、ゾクゾクしました。撮影が楽しみでしたね。

――今回、演技的に特に意識したことというと?

浜辺 鈴井さん(高杉真宙)との関係が、この作品では今までより出来上がっているように感じました。夢子は誰に対しても一定以上の想いはなかったんですけど、鈴井さんとは友だちみたいな関係になってきて。予告編にもある、ロシアンルーレットで鈴井さんが夢子に銃を向けるシーンは、『賭ケグルイ』らしかぬ感動がありました。

――夢子の人間味が出ましたかね。

浜辺 夢子って友だちができたことがないんじゃないかというくらい、1人で強く生きてきたと思うんです。そんな夢子にとっての弱みの部分を人質に取られたとき、夢子らしい反応の中で人間らしさが溢れて、珍しく感動するシーンになったと思います。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

赤ちゃん言葉を現場でブッこみました(笑)

――一方、夢子は泣き顔で「体育祭がなくならないんでちゅ」などとも言ってました(笑)。

浜辺 台本では体育祭がイヤだという設定だけがあって、赤ちゃん言葉にはなってなかったんです。現場で勝手にブッこみました(笑)。それも最初から「やろう」と思っていたわけでなくて、テストに入った瞬間、「あっ、言えるな」と思って、やっちゃった感じです(笑)。

――台本では「なくならないんです」だったわけですか?

浜辺 普通の言葉でした。そのシーンで赤ちゃん言葉に変えたら、「ここでもできる」ということで増えてしまって(笑)。英監督と何度もご一緒して、脚本も監督が書いてらっしゃるので、「何とかしてくれるでしょう」という安心感のもと、やりたい放題になりました(笑)。

――浜辺さんもコメディ作品で、そういうセンスが磨かれていたんでしょうね。

浜辺 どうなんでしょう? 緊張せず、自由にやるようにはなりました。他にも台本と台詞を変えて、「ダメだったらやめよう」という感じで、ぶつけてみたりしました。監督にしたら、困ったものだったかもしれません(笑)。でも、「今の良かったよ」と言われると嬉しかったです。

――『賭ケグルイ』シリーズではテンションの高い場面も多くありますが、現場に臨むときにしていたことはありますか?

浜辺 栄養ドリンクを飲むことは増えます(笑)。他の撮影でも、毎朝メイクしてから必ず、現場に入る10分前に1本ゴクッと飲むんです。そうすると目が覚めるし、元気になるので。『賭ケグルイ』では賭場のシーンを3日くらいかけて撮るから、夜遅くなるときもあって。そういう大事なシーンでは、段取り前にエナジーをチャージしてました。あのドリンクはすごいです。8時間寝たかと思うくらいハイになって、しかもガクッと落ちないんです。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

自分が真っ白になっても動けるように

――今回の映画では、ロシアンルーレットがクライマックスになってますが、浜辺さんは命まで賭けないにしても、イチかバチかみたいな勝負をしたことはありますか?

浜辺 高校のとき、たこ焼きのスナック菓子で中に辛いのが混じっているのをお土産に買って、同級生や先生とみんなで食べた思い出があります。私は結局、辛いのには当たりませんでした。カラオケでもロシアンたこ焼きがあるので、みんなで行けるようになったら、やりたいですね。

――自分の勝負運は強いと思いますか?

浜辺 弱くはないと思います。おみくじも大吉か中吉か吉しか引かないので。今年の初詣も中吉か吉でした。あと最近、恋鯉みくじという、小さな鯉が付いてくる400円くらいの恋愛のおみくじを引いたら、大吉でした。恋みくじのほうが本気を出すので(笑)、嬉しかったです。

――夢子はロシアンルーレットの勝負でも平常心を保っていました。浜辺さんも物ごとに動じないほう?

浜辺 もともとすごく緊張しぃで、顔に出るタイプでした。今は前よりは緊張しなくなって、顔は普通にしてますけど、手汗をすごくかいていたり(笑)。結局は場数の問題だと思います。本当に気合いを入れないといけないときは、牛肉を食べて行ったりします(笑)。動かないといけない日は鶏肉にしたり。

――今回、特に緊張したシーンはありました?

浜辺 最後の賭け狂うシーンですね。あそこは見どころのひとつで、ぬるくやってしまうと、夢子の役割が果たせないので。ああいうシーンは一気にテンションを上げて、自分が真っ白になるくらい賭け狂うので、台詞をちゃんと入れて段取りも体に馴染ませておかないと、動けなくなってしまうんです。イメトレを何度もして、自分にプレッシャーを掛けて、限界を決めないで飛び込むようにしていました。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

長距離走なので伸び伸びと行けたら

――夢子にとってのギャンブルくらい、浜辺さんがのめり込むものはありますか?

浜辺 最近、家具を集めているので、それかな。引っ越したときにソファとか揃えたんですけど、テレビが小さかったりするので、徐々に新しいものに買い替えたいなと。色に若干こだわって、白い木を基調に、ピンクや黄色を組み合わせています。ドラマがクランクアップしてから、家に飾る絵も買いに行きました。

――どんな絵を買ったんですか?

浜辺 雨の絵です。金色でグラデーションがすごくて、不思議な感じがして。気張ったうるささはなくて、元気をもらえそうだったので買いました。家具と共に家を充実させるものが欲しくて行ったら、値段もお手頃で、いい出会いでした。

――仕事が好調な中で、プライベートでもいいことはありますか?

浜辺 最近、お皿集めにハマっています! ポーランドの食器もあれば、ネットで買った地方で個人の方が作った陶器があったり。時間ができたら陶器市に行こうかと思っていて、楽しい趣味です。

――集め始めるきっかけが何かあったんですか?

浜辺 もともと料理を作るのが好きで、お皿はずっと2種類を使い分けていたんです。でも、今はネットの時代ですから、いろいろ探すと理想のお皿が見つかって。服とかは人の目も気にしますけど、お皿は完全に自分の趣味だけで好きな柄を買えるので、すごく楽しくて。

――どんなお皿が理想なんですか?

浜辺 いちご柄が描いてあるお皿や、猫の形になったお皿が欲しくて。食べ物って大事で癒しだし、お皿がかわいいと、食べ方もひと口が小さくなったりします。食べ物そのものも、食べる時間も丁寧に楽しもうと思っています。

――では最後に、改めて女優業に関して、差し当たって目標にしていることはありますか?

浜辺 前は20歳をひとつのゴールとして、とにかく駆け抜ける意識がありましたけど、20歳になったら、30代まであと10年あって、30歳になったら、40代までまた10年。本当に長距離走だなと感じます。だから、自分に期待をかけすぎず、伸び伸びと行きたいです。今ダッシュしすぎて、長距離の最後のほうでヘバったら負けじゃないですか。そうならないように、一定のペースで走り続けるのが大事だと思っていて。

――今はダッシュしているようにも見えますが。

浜辺 体力配分や自分の機嫌の取り方を考えて、お仕事もプライベートも楽しんで充実させながら、走り抜けることを勉強中です。

Profile

浜辺美波(はまべ・みなみ)

2000年8月29日生まれ、石川県出身。

2011年に第7回「東宝シンデレラ」オーディションでニュージェネレーション賞を受賞。同年に映画『アリと恋文』に主演して女優デビュー。2017年に主演した映画『君の膵臓をたべたい』がヒットして注目される。その他の主な出演作は、映画『センセイ君主』、『アルキメデスの大戦』、『屍人荘の殺人』、『思い、思われ、ふり、ふられ』、『約束のネバーランド』、ドラマ『アリバイ崩し承ります』、『私たちはどうかしてる』、『タリオ 復讐代行の2人』、『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』ほか。

『映画 賭ケグルイ 絶体絶命ロシアンルーレット』

監督/英勉 原作/河本ほむら・尚村透 

4月29日より全国ロードショー

公式HP

(C)河本ほむら・尚村透/SQUARE ENIX  (C)2021 「映画 賭ケグルイ2」製作委員会
(C)河本ほむら・尚村透/SQUARE ENIX  (C)2021 「映画 賭ケグルイ2」製作委員会

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

斉藤貴志の最近の記事