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ラグビー日本代表ジョセフHCが合流!ライオンズ戦は「チャンスを活かせば勝つ可能性はある」

斉藤健仁スポーツライター
メディアの質問に丁寧に答えるジョセフHC(撮影:斉藤健仁)

 5月29日、ラグビー日本代表のジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)が、6月12日のサンルウブズ戦(@静岡・エコパスタジアム)、6月26日のブリティッシュ&ライオンズ戦(@スコットランド)、7月3日のアイルランド代表戦(@アイルランド)に向けて、大分・別府で合宿中の日本代表に合流した。

 2019年ワールドカップ(W杯)で日本代表をベスト8に導き、2023年W杯まで指揮を取ることが決まっているニュージーランド出身のジョセフHC(ヘッドコーチ)が直接、選手たちに会って指導するのは、2019年10月以来、実に1年半以上ぶりのことだった。

◆「選手はやる気に満ちている」(ジョセフHC)

 「日本食が食べられなかったから痩せてしまった」と笑顔を見せたジョセフHCは、選手たちと直に対面し、やはりエキサイティングと不安が入り交じった感情のようだ。

 「すごくワクワクしている気持ちです。その半面、悪い意味ではなくナーバスにもなりました。このような長いブレイクの後で新しいチームが始動し、かなり大きな試合が2試合も行われるからです。(日本代表が)1年以上活動できなかったこともあり不安は少なからずあります。

 ただ明日の朝7時に練習が始まって夜9時までラグビー漬け(の生活)になればそれもなくなるでしょう。W杯の前もそのような感じで練習していましたし、慣れ親しんだ別府で合宿ができることがうれしく思います。(2018年2月に)サンウルブズでもここでトレーニングし、(自衛隊での)アーミーキャンプしたことも思い出深い。エキサイティングと不安な気持ちがあります」(ジョセフHC)

 早速、実際に選手と対面してミーティングなどを行ったジョセフHCは

 「私たちは昨日到着し、今日は(一部の選手と)1対1のミーティングを行いましたが、選手たちみんなから建設的で生産的な良いフィードバックをもらいました。日本代表として何を成し遂げるべきかという話をして、フィットネステストでも多くの選手が参加しいい結果も出ており、明日からいい練習がスタートできそうです。

 まだ 20%くらいの選手としか1対1の話していないですが、どの選手もアチチュード(ラグビーに対する姿勢)は100%で、やる気があり、楽しみにしているように感じました。そこに私も高い期待を置いています。

 トップリーグ(が終わって)から時間が経って参加できている選手もいます。選手の中には(疲れで)半分くらいしかフィジカルコンディションが戻っていない人もいます。ラグビーできることがうれしいですし、選手みんなは行動もアチチュードもやる気に満ちているので、楽しみにしています。チームとしては70%の状態なので、ライオンズ戦に向けてチームとしてもっと仕上げていくつもりです」と話した。

◆ライオンズ戦でフォーカスしたい2つのエリア

 まずラグビー日本代表のターゲットは、イングランド、ウェールズ、スコットランド、アイルランド代表のトップ選手から編成される、6月26日に対戦するライオンズ戦が大きなターゲットだ。

 「(ライオンズ戦がどういう価値を持つかは)選手によって違うかと思います。大きな試合の一つで、とてもワクワクするような試合で、歴史の一つとなることを楽しみにしている選手もいます。一方で、この試合が初めてのテストマッチとなる選手もいます。初キャップがライオンズ戦という記念すべき試合になる選手もいます。ライオンズ戦の意味は個人によって違うでしょう。

 私たちコーチ陣にとっては、2019年W杯が終わって最初のテストマッチです。それもコロナの影響で普通ではない環境の中で、1年半以上、間隔が空いてからのスタートです。これから今年は6試合、年末には4試合予定されていますが、その最初の試合になります」(ジョセフHC)

 また、ライオンズとどんな戦いをしたいか?と聞かれて、指揮官は「(今年の)シックスネーションズ(欧州6カ国対抗)でのそれぞれのプレースタイルを見ていて、どのチームもシンプルにセットプレーやキックでプレッシャーをかけてきて、モールを使っていた。おそらく同じことを日本代表にもしてくるのではないかと考えています。ライオンズも限られた時間しかないので、フィジカルで来ると思います。

 彼らは日本代表のFWパックのフィジカルが自分たちより強くないと思っているので、そこにプレッシャーをかけてくるのでは。私だったらそうします。日本代表にとっては非常にチャレンジングですが、そこに関してしっかり準備したいと思います。

 同時に、BKでのボール展開にもフォーカスしています。このことはあまり心配していません。45%~55%のポゼッションがあればボールを動かしてスコアできているからです。プレッシャーがかかる中、チャンスを活かせば勝つ可能性はあるので、モメンタム(勢い)を作りたい。今はこの2つにフォーカスしています」と意気込んだ。

◆「スクラムを強化するいい機会になる」(ジョセフHC)

 特に、試合では焦点の一つとなると予想されるスクラムに関しては、自身もFW出身の名将は「ライオンズ戦でターゲットになるポイントだと思います。私たち(日本代表)は(ライオンズと比べて)小さいFWですし、今回はHO堀江(翔太/パナソニック)のような経験値の高い選手もいません。すごくチャレンジになるでしょう。

 しかし、スクラムを強化するいい機会になると思っています。セレクションの中には、若いエナジーのある選手やPR(クレイグ・)ミラー(パナソニック)や垣永(真之介/サントリー)のような経験ある選手も入っています。稲垣(啓太)やヴァル(アサエリ愛/ともにパナソニック)、具(智元/Honda)、のような素晴らしい選手もいます。限られた時間でいかに準備することが大事になってきます。

 今回(の合宿で)、夜、スクラム練習をします。トレーニングはただハードなだけではなく、スマートで、短い期間で、しっかりリカバリーもしていかないといけないと思いますが、非常にいい機会だと思います」と語気を強めた。

 またライオンズと戦う上で、何が大事となってくるか?という問いに対して、ジョセフHCは「新しいスタッフもいろいろアイデアをもたらしてくれます。選手たちもトップリーグを終えたばかりで疲れており、ベストなコンディションではないです。そして、わずか1回のキャンプでテストマッチに臨まないといけません。

 だからシンプルなことだけ、自分の仕事をしっかり理解し自分たちのやるラグビーを理解し、実行することにフォーカスを置いています。チーム作りには時間がかかりますが、ライオンズ戦ではまずいかにボールをキープしてチャンスを作れるかを考えていますが、具体的なことを言うにはもう数週間必要でしょう」と話すにとどめた。

福岡に替わるトライゲッターとして期待のかかるWTB髙橋(撮影:斉藤健仁)
福岡に替わるトライゲッターとして期待のかかるWTB髙橋(撮影:斉藤健仁)

◆若きWTB髙橋は福岡に替わる「Xファクター」

 トップリーグでケガをしたWTB江見翔太(サントリー)に替わりWTB髙橋汰地(トヨタ自動車)を、日本代表候補外から追加招集した理由に関して、ジョセフHCは「まずはWTB江見に関してはすごく残念に思います。またタイミング悪くケガで(日本代表から)失いました。前回(日本代表招集時)もケガで参加できませんでした。江見の代わりにサントリーの中野将伍を呼ぼうとしましたが、(トップリーグで)脳しんとうがありコンディションが間に合いませんでした。

 WTBジョネ(・ナイカブラ/東芝)は個人的な理由、結婚式を控えていたので(日本代表に)参加できませんでした。違うタイミングでの招集を考えています。WTBの選手が必要だったということもあります。

 髙橋は(トップリーグで)すごくエキサイティングなパフォーマンスを見せていましたし、福岡堅樹(パナソニック)のような『Xファクター』になりうる選手だと思います。(福岡とは)違うタイプですが大きな期待を寄せています。スコッド(代表候補)に入っていなかったのは、なかなか見る機会がなかったからです。他にも6~7人、その(あまりプレーが見られていない)ようなWTBがいると思います」と説明した。

◆選手たちだけでチームカルチャーを作ればいいチームになる!

 キャプテンFLリーチ マイケル(東芝)が、先日、「自分たちはティア1(ラグビーにおける世界の強豪国)であるかのようなスタンダードでやらなければいけない」と話をしていた。その意図を聞くと、ジョセフHCは、

 「私が昨日選手たちに伝えたキーワードは、一貫性をしっかり持つことが成功するためには大事だということです。

 いい習慣、準備、トレーニング、食事に渡るまで、優れたアスリートとして責任を持って取り組み、自分をしっかりと普段から律して、自己管理し、マネージメントスタッフに頼らず、時にはスタッフ(の言うこと)も疑い、選手として自覚を持つこと、チームとして成長するにはそういったことが必要であるということです。ケガも必ずあります。その時にチームとしてどう戦ってくのか。非常にシンプルなことです。

 リーチが言う『ティア1のようなスタンダードで取り組む』という言葉は、そういう行動、心構えのことを指しているのではないでしょうか。強いプレッシャーのかかった中で、ライオンズのようなチームと戦うにはティア1のチームのような意識が必要だということだと思います」と話した。

 選手たちの口からオンライン会見でたびたび「コネクション」という言葉が聞こえてくる。

 ジョセフHCは「コネクションでキーになってくるのは選手たちが自発的に動くことだと思っています。これまでは、コーチの導きによるコネクションを選手たちは待っていましたが、(2019年W杯で)日本代表が成功したのは、キャプテン、リーダー選手、シニアの選手が自分たちで考え、同じ目標を持つようにし、『私の』ではなくて『私たちの』チームとして考え行動したからです。

 それを作るには時間がかかりますが、リーチらが、チームカルチャーや成功するやるべきこと、過去の経験をすべての選手と共有していくことが必要であり、そこはむしろコーチの仕事ではありません。選手だけでそういう環境を作れれば、良いチームになると思います」と説明した。

◆2023年W杯に向けて、新しい「ONE TEAM」を作る!

 2019年W杯で日本中を席巻した、ラグビー日本代表が掲げた「ONE TEAM(ワンチーム)」というチームスローガン。今後も日本代表のスローガンとして使っていく方向だという。

 「まず自分たちにとってコネクションというのはすごく大事なもので、リーチたちリーダー陣は今のところたくさんいい仕事してくれています。新しいメンバー、スタッフも入ってきていますがチームの一員として溶け込めるようにしてくれています。

 チームとしてのカルチャー、W杯で勝つためのカルチャー、みんなのためにそれぞれが仕事にする、『ONE TEAM』というのはそういうものなので、それは継続します。ただ、チームとしては2019年とは違うグループですし、違う選手も入ってくる、違うチームになります。新しい『ONE TEAM』を作らないといけないということだと思います」(ジョセフHC)

 5月30日から、いよいよジョセフHC、そして、その右腕であるトニー・ブラウンコーチらがグラウンド上でのラグビーの指導を始める。

 6月12日のサンルウブズ戦を経て、6月26日のライオンズ戦まで、移動も考えると、残された時間は多くない。そんな中でも、新生「BRAVE BLOSSOMS(ブレイブブロッサムズ)」が再び、世界を驚かせるためには、短時間で、初のベスト8に進出した2019年W杯に匹敵するようなチームへと成長することが欠かせない。

スポーツライター

ラグビーとサッカーを中心に新聞、雑誌、Web等で執筆。大学(西洋史学専攻)卒業後、印刷会社を経てスポーツライターに。サッカーは「ピッチ外」、ラグビーは「ピッチ内」を中心に取材(エディージャパン全57試合を現地取材)。「高校生スポーツ」「Rugby Japan 365」の記者も務める。「ラグビー『観戦力』が高まる」「ラグビーは頭脳が9割」「高校ラグビーは頭脳が9割」「日本ラグビーの戦術・システムを教えましょう」(4冊とも東邦出版)「世界のサッカー愛称のひみつ」(光文社)「世界最強のGK論」(出版芸術社)など著書多数。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。1975年生まれ。

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