4月17日(土)から20チームによるプレーオフトーナメントに入り、いよいよ佳境を迎えようとしている最後のトップリーグ。その一方でラグビー日本代表は、6月12日(土)に静岡で強化試合、6月26日(土)にスコットランドでブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ戦を控えている。

4月12日(月)、2023年ワールドカップ(W杯)を目指す、新たなラグビー日本代表候補52名が発表された。ただ代表候補選手にとっては、5月末に発表される35名の別府合宿メンバーに残ることができるかどうかが第一関門となろう。

昨季はコロナ禍で日本代表活動ができなかったことを考慮すると、当然、2019年W杯でベスト8に入ったメンバーが中心となることは間違いない。海外で活躍しているNO8姫野和樹(NZ・ハイランダーズ)、WTB/FB松島幸太朗(仏・クレルモン)を含めたW杯メンバー21名は当然、ジェイミー・ジョセフHC、トニー・ブラウンコーチのラグビーを熟知しているため、選ばれる可能性が高い。

※日本代表候補52名、全体の考察はこちら

◆新しい日本代表候補にバックスリーは11人が選出

そんな中でも個人的に注目していたのは、医師になるために、4月に順天堂大学医学部に入学し今季限りで現役引退を表明している、日本代表のエースWTBだった福岡堅樹(パナソニック)に替わるトライゲッター候補として、誰が選ばれるかということだった。

フランスのクレルモンで活躍中のWTB/FB松島幸太朗は別格として、バックスリー(WTB、FBの総称)は下記11人が選ばれた。果たして、その中で誰が「ポスト福岡」として日本代表のWTBのポジションを手に入れるのか。

◆2021年日本代表候補 WTB&FBとして選ばれた選手

※☆は2019年W杯メンバー ★はノンキャップ(=0キャップ)

WTB

江見翔太(サントリー、0キャップ)★

ジョネ・ナイカブラ(東芝、0キャップ)★

シオサイア・フィフィタ(近鉄ライナーズ、0キャップ)★

中野将伍(サントリー、0キャップ)★

松島幸太朗(ASMクレルモン・オーヴェルニュ、39キャップ)☆

アタアタ・モエアキオラ(神戸製鋼、4キャップ)☆

レメキ ロマノ ラヴァ(宗像サニックス、15キャップ)☆

※4月28日 追加招集

セミシ・マシレワ(近鉄、0キャップ)★

FB

尾﨑晟也 (サントリー、3キャップ)

野口竜司 (パナソニック、13キャップ)

ゲラード・ファンデンヒーファー (クボタ、0キャップ)★

山中亮平(神戸製鋼コベルコスティーラーズ、18キャップ)☆

まず福岡の持ち味としては、トップスピードに入る速さがあり、スピードに乗った後、長い距離を走りきる力があるためタッチラインから5mのスペースがあればトライを取り切れる。さらに福岡高、筑波大時代に鍛えたタックルの強さ、そしてサンウルブズなどを通して身につけたハイボールの強さもある。

FBゲラード・ファンデンヒーファー (クボタ)はチームではWTBとしてプレーしているが、突破力、キック力とハイボールの強さに定評があるがスピードを活かしてトライを取るタイプではない。キックとハイボールキャッチに長けたベテランFB山中亮平(神戸製鋼)は万能BKだが、もともとはSOである。2人の持ち味は福岡とは異なる。

2019年W杯メンバーでもあったレメキ ロマノ ラヴァに似た、速さだけでなく強さを兼ね備えたタイプだ。同じようなタイプとしてW杯メンバーだったアタアタ・モエアキオラ、昨年度の大学選手権で活躍したシオサイア・フィフィタ、サントリーでブレイク中の中野将伍らがいる。ただし、この3人はチームではCTBとしてもプレーしており、やはりWTB専門の選手ではない。

◆今季のTLでも活躍した、スピードやキレに長けた4選手

それ以外の4選手を見ると、福岡と同じく、7人制ラグビー日本代表を経験しているWTB江見翔太(サントリー)、ジョネ・ナイカブラ(東芝)の2人は、スピードはもちろん、力強いランや決定力が魅力で、基本的にはWTB専門の選手だ。

またスピードやキレで勝負している選手としては、サントリーとパナソニックでそれぞれFBとしてプレーしているがWTBとしてもプレー可能な尾﨑晟也、野口竜司の2人がいる。

江見は関東対抗戦Bグループの学習院大出身ながら、7人制ラグビー日本代表活躍が認められて、サントリーに入部。サンウルブズも経験し、スピードだけでなく、年々、力強さが増しており、トライを取り切る選手へと成長してきた。

ナイカブラも摂南大学時代から7人制ラグビー日本代表として活躍し、スピードはもちろん、フィジー人ならではのステップや腰の強いランが光る、突破力に長けた選手だ。

尾﨑は2019年春、特別編成チームの「ウルフパック」でWTBとして5トライを挙げたものの、その後の日本代表合宿に呼ばれない悔しい経験をしている。チームではFBとして出場しているように総合力は高く、スピードに特化することでWTBとしても日本代表として活躍できるポテンシャルは十分にあろう。

また野口は東海大学時代からジョセフHCにその才能を高く買われていた選手のひとりで、日本代表としてWTBとしも出場した経験を持つ。あと一歩のところで2019年W杯メンバーにこそ残れなかったが、もともとスキルが高くキックが得意で、プレーの判断も正確。元陸上選手の下でスピードにも磨きをかけており、カウンターから突破する回数も増えてきた。

個人的には江見、ナイカブラ、尾﨑、野口あたりが「ポスト福岡」を担うような、決定機にトライを取り切る選手になり得るのではないかと期待している。当然、4月24日(土)、25日(日)から始まるトップリーグのプレーオフ2回戦でも4人全員、先発する。

◆4選手のトップリーグ、リーグ戦のスタッツ 

※トップリーグのHP参照

BC=ボールキャリー GM=ゲインメーター CB=クリーンブレイク DB=ディフェンス突破

江見翔太 5試合:4トライ/BC23 GM296 CB10 DB10

尾﨑晟也 5試合:4トライ/BC42 GM316 CB12 DB14

野口竜司 7試合:1トライ/BC48 GM309 CB8 DB10

ジョネ・ナイカブラ 5試合:3トライ/BC38 GM389 CB8 DB26 

参照

福岡堅樹 6試合:7トライ/BC48 GM539 CB17 DB18

6試合に出場した福岡のスタッツと比べると、江見、尾﨑は5試合と少ないながら、いい数字を残していることがわかる。野口は7試合出場し、クリーンブレイク数、ディフェンス突破も多く、相手にとって脅威になっている。ナイカブラはディフェンス突破が26と多く、一人で突破できる選手であることがよくわかるスタッツだ。

◆今後、WTBとして日本代表候補入りが期待される選手

今回の日本代表候補には選ばれなかったが、まだまだ、今後の活躍次第では招集される可能性のある選手もたくさんいる。

トップリーグのリーグ戦で9トライを挙げたスピードが武器のNTTコミュニケーションズのWTB石井魁、MOMを3度受賞した強いランが武器のトヨタ自動車のWTB髙橋汰地、スキルと決定力に長けたパナソニックWTB竹山晃暉などが筆頭だろう。

他には現在は7人制ラグビー日本代表で東京五輪を目指しているWTB松井千士(キヤノン)、石田吉平(明治大3年)らもスピードやステップを武器にしている。

特に松井は、福岡が「自分より速い」と期待をかけている選手である。石田は現在、大学生で唯一7人制ラグビー日本代表に選ばれている選手で、昨季の大学ラグビーではスピードあるランだけでなく、ハイボールや接点でも強さも見せていた。

さらに3月に帝京大を卒業しヤマハ発動機に入ったばかりのWTB/FB奥村翔、早稲田大4年のFB河瀬諒介、明治大4年のFB雲山弘貴らもラン能力の高い選手だ。

2023年ワールドカップまであと2年あまりしかなく、アピールする時間は少なくなっていくが、今夏にはもう少し代表候補の枠を広げて強化する計画や、コロナ禍次第だが、今後、日本代表になり得る若手選手を集めて強化するプランもあるという。

いずれにせよ、まだ2023年W杯に向けた門戸は開かれている。トップリーグのプレーオフトーナメントだけでなく7人制ラグビー、大学ラグビーなど、それぞれの舞台でのアピールを続けたい。