Yahoo!ニュース

唯一の大学生選手FB野口、サンウルブズでのデビュー戦へ。「チャレンジして自分の持ち味を出したい!」

斉藤健仁スポーツライター
唯一の大学生選手のFB野口はスーパーラグビーデビューを飾るか?(撮影:斉藤健仁)

 3月3日(土)、日本を本拠地とするスーパーラグビーチーム「サンウルブズ」は、東京・秩父宮ラグビー場で、今シーズン2試合目となるレベルズ(オーストラリア)戦を迎える。

 サンウルブズの試合登録メンバーが発表され、控えには唯一の大学生であるFB野口竜司(東海大4年)の名があった。出場すれば野口は、PR具智元(拓殖大出身/現Honda)に続いて、大学生としてスーパーラグビーデビューを飾ることになる。

※サンウルブズの試合登録メンバー

◇各年代で日本代表を経験してきた逸材

 すでに日本代表12キャップの野口と言えば、花園で優勝した東海大仰星高校時代から各年代の日本代表に選出されてきた逸材。高校日本代表、U20日本代表を経て、一昨年のアジア勢と対戦した春の日本代表で初キャップを獲得した。

 さらに昨年もPRC(パシフィックラグビーカップ)に参戦したジュニア・ジャパンと、春のアジア選手権を戦った若手中心のラグビー日本代表での活躍がジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)の目に留まり、6月、11月の日本代表にも抜擢され、桜のジャージーを着て躍動し、2019年ワールドカップで対戦することが決まっているアイルランド代表戦でもトライを挙げた。

 共同キャプテンのSH流大らも含めて、野口は今年からサンウルブズの指揮官も兼任することになったジョセフHCが見出した若手選手の一人で、当然ながら今年のサンウルブズにも選ばれるのでは……と思っていたが、当初はその名はなかった。

◇2月に入ってからサンウルブズに追加招集!

 しかし、野口は4月から加入するパナソニック ワイルドナイツの一員として戦った10人制の国際大会「ブリスベン・グローバル・テンズ」に出場した後、サンウルブズに追加招集された。

 その理由を、ジョセフHCは「プレシーズン合宿でケガ人が出た。野口はテストマッチ経験者です。大学の試合でレベルが落ちてしまうところもあるので、継続して強化、育成したいので呼びました」と説明した。ただ野口本人も「何かあるかもしれないので」と卒業旅行の予定を入れず、いつ呼ばれてもいいように準備を怠っていなかった。

 サンウルブズは基本的にはアタックもディフェンスも、昨年11月の日本代表が採用していた戦術で戦っており、すでにチームの動き自体には慣れていた野口は2月12日の週に合流すると、メンバー外ながら早速、いい動きを見せて、レギュラー組から何本もトライを挙げる。

「練習の中で、相手がどういうチームなのかイメージを持って、アタックやディフェンスをしています。前を見てプレーできているのかもしれません。空いたスペースを突いていました」(野口)

 またこの1年間は東海大ラグビー部のキャプテン、日本代表、そして教育実習など忙しい日々を送っていため、パンクすることはなかったというが、「(個人としては)状況がすごく良くて、(サンウルブズには)途中参加ですが、自分としてもコミットしてきていますし、プレーの面で集中しやすい。いろんな状況を考えるとプレーに徹することができるのは大きい」と、ラグビーだけに集中できている。

◇ケガ人が相次ぎ、2試合目で初のメンバー入り

 さらに先週のブランビーズ戦でBKのメンバー、特にバックスリー(WTBとFBの総称)のFBジェイソン・エメリー、WTBレメキ ロマノ ラヴァが骨折してしまい、今週に入って、初戦で大活躍したWTBホセア・サウマキも練習中に膝をひねったため、今週のレベルズ戦で野口に控えながらメンバー入りし、サンウルブズで初のチャンスが回ってきたというわけだ。

 スーパーラグビーデビュー戦に臨む野口に対してジョセフHCは「見ていて非常にワクワクする選手です。スーパーラグビーの試合に出る前が大学の試合というのはあまりいい準備ではないですが、経験を与えたいと思います」と期待を寄せた

 野口は23番を背負ってベンチスタートであり、FBかWTBとして途中出場する可能性が高い。「(スーパーラグビーに)出場できたらすごくうれしいですし、責任を果たさないと行けない。チャレンジして自分の持ち味を出したい。そして、ただ試合に出るだけでなく、試合に勝つイメージを持って(自分の)仕事がしたい」

◇サンウルブズでさらなる成長を遂げるか

 「そんなに足が速くないので」と謙遜する野口の持ち味は、アタックでもディフェンスでも判断力である。WTBでもFBでも出場したら、特にディフェンスでは広いスペースをカバーすることが欠かせない。

 野口は「フィールディングの部分をしっかりしたい。レベルズはボールを大きく動かしてくるので組織として、ディフェンスは前で止め続けることとが大事です。勢いをつけられて、どんどんゲインされないよう、自分としては後ろでカバーしたい。コミュニケーションを取っていい組織ディフェンスがしたい」と意気込んでいる。

 まだ22歳、この3月まで東海大4年生の野口だが、「2019年を狙える位置にはいると思うので頑張りたい!」と、もちろんワールドカップ出場も視野に入れる。テストマッチだけでなく、サンウルブズで新たにスーパーラグビーという世界の舞台を経験し、さらなる進化を遂げることができるか。

サンウルブズ公式HP 

※今年もサンウルブズ戦を全試合放送するJSPORTSのHP

スポーツライター

ラグビーとサッカーを中心に新聞、雑誌、Web等で執筆。大学(西洋史学専攻)卒業後、印刷会社を経てスポーツライターに。サッカーは「ピッチ外」、ラグビーは「ピッチ内」を中心に取材(エディージャパン全57試合を現地取材)。「高校生スポーツ」「Rugby Japan 365」の記者も務める。「ラグビー『観戦力』が高まる」「ラグビーは頭脳が9割」「高校ラグビーは頭脳が9割」「日本ラグビーの戦術・システムを教えましょう」(4冊とも東邦出版)「世界のサッカー愛称のひみつ」(光文社)「世界最強のGK論」(出版芸術社)など著書多数。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。1975年生まれ。

斉藤健仁の最近の記事