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異例/予想外の宣伝となった2作。ジブリ「君たち」2週連続1位か、トムの「ミッション」トップ奪取は?

斉藤博昭映画ジャーナリスト
ストライキ直前、NYではプレミアが行われた「ミッション〜」最新作(写真:REX/アフロ)

異例の「前宣伝ナシ」で7/14の公開に踏み切った、スタジオジブリの新作『君たちはどう生きるか』は、公開週末の4日間で興行収入21億円を超え、あの『千と千尋の神隠し』を上回るなど、スタジオジブリ史上でも最高のスタートダッシュを記録した。前宣伝ナシは、とりあえず成功につながったと言える。

ただ、その「宣伝ナシ」「前情報ゼロ」という話題が、公開前にむしろ盛り上がり、それ自体が社会的に大きなプロモーションになったのも事実。そのうえで、どんな作品かわからない興味、まっさらな気持ちで作品に接したい気持ちで、公開週に観客が集中したとも考えられる。

公開から1週間が経ち、作品の評判が少しずつ広がって、そのうえで今後どれくらいの集客となるか。公開後も、宣伝戦略と作品の内容についてメディアの記事やSNSで大きなネタになっていることから、2週目以降の数字が注目される。

その2週目、つまり今週末(7/21〜)は、夏の話題作『ミッション:インポッシブル/デッドレコニングPART ONE』が公開となる。こちらも宣伝/プロモーションでは異例の事態となった。7/18〜19という絶好のタイミングで行われるはずだったトム・クルーズらの来日イベントが、直前の全米映画俳優組合のストライキで中止になってしまった。「ミッション」シリーズでは過去の全6作すべてで来日プロモーションを行っていたトムだけに、直前の盛り上げができなかったことで、作品の宣伝としては大きな痛手となった。

一方で、ストによるトムの来日中止というニュースがメディアで大きく取り上げられることで、作品の認知度が高まった部分もあるだろう。もともと「ミッション」シリーズは、安定した人気を誇り、過去4作の興行収入がどれも50億円前後。昨年の『トップガン マーヴェリック』の大ヒットもあって、トム・クルーズ主演作のポテンシャルは健在だ。

『デッドレコニングPART ONE』は、映画批評サイト、ロッテントマトでも批評家96%/観客94%のフレッシュ(良い)という異例の高数字を獲得。絶賛で迎えられている。『君たちはどう生きるか』の未知数的な前評判とも異なる。

ただ過去の例を振り返ると……

2018年『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』 初登場2位

(『劇場版コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命』が2週目でも1位)

2015年『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』 初登場2位

(『ジュラシック・ワールド』が同週公開で1位)

2011年『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』 初登場1位

2006年『M:i:Ⅲ』 初登場1位

2000年『M:I-2』 初登場1位

1996年『ミッション:インポッシブル』 初登場1位

直近の2作が2位デビューとなっている。今回もジブリの新作が前週に公開ということで、全米など各国が7/14だった公開を、あえて日本では1週遅らせたとも考えられるし、遅らせることでトム・クルーズの来日の日程も調整しやすくなったはず。

前宣伝のアリ/ナシにかかわらず、宮崎駿監督の最後の作品ということで『君たちはどう生きるか』の爆発的ヒット、つまり2週目に強敵が現れてもトップを維持することは、ある程度、予想されていた。『デッドレコニングPART ONE』も、おそらく「2位目標」だったかもしれない。しかし作品自体の評価が高いことで、健闘も期待される。

「ミッション」シリーズの前作『フォールアウト』は公開週末3日間の興行収入が8億6814万円だった。通常の週なら悠々とトップに立つ数字(にもかかわらず2位だった)。『君たちはどう生きるか』は、公開週末4日の数字(21億円)から、2週目で下がるとはいえ、2週連続1位は射程圏内か。また、『デッドレコニングPART ONE』と『フォールアウト』の公開週の数字の比較は、「トム・クルーズ来日の効果」という点でも注目される。

ひとつの指針として、7/21のTOHOシネマズ新宿での座席の売れ行き状況を、11:00の同時刻の時点で確認すると……

『ミッション:インポッシブル/デッドレコニングPART ONE』

IMAXレーザー 15:00の回 平日昼間だが、4時間前でほぼ完売状態。

TOHOシネマズ新宿のHPより
TOHOシネマズ新宿のHPより

『君たちはどう生きるか』

同じくIMAXレーザー 18:30の回 週末の夜ということで、7時間半前ながらこちらも上々

TOHOシネマズ新宿のHPより
TOHOシネマズ新宿のHPより

いずれにしても今週末は高いレベルでのトップ争いとなるのは確実で、映画館は大いに賑わいそうだ。

映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、ヤングマガジン、クーリエ・ジャポン、スクリーン、キネマ旬報、映画秘宝、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。

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