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細部に宿る愛。映画がどう作られるか貴重な体験となる「ハリポタ」スタジオツアー

斉藤博昭映画ジャーナリスト
施設内のレストラン、バックロットカフェにはこんな装飾も

甘みもちょうどよく、意外なほどにグイグイ飲めてしまう、あのバタービールに酔いながら、あらゆるセットを目の前で体験するうちに、「ハリー・ポッター」のキャラクターになった錯覚におちいる……。

確かにそうだろう。しかしそんな喜びの感覚以上に、重要な展示の数々は、サプライズと、未来への希望を与えるかもしれない。それは、映画作りの舞台裏、しかもかなりプロフェッショナルな部分だ。

いよいよ6/16にオープンが迫った「ワーナー ブラザース スタジオツアー東京 - メイキング・オブ・ハリー・ポッター」が、撮影時のセットや衣装、小道具の再現、さらにクィディッチやブルーム(空飛ぶ箒)のエクスペリエンス(疑似体験)などで「ハリー・ポッター」や「ファンタスティック・ビースト」のファンを満足させるのは、ある程度、予想どおり。バタービールもUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)で、すでに味わった人も多いことだろう。

しかし、このスタジオツアーの見どころのひとつに挙げたいのが、細部への半端じゃないこだわりである。

「ハリポタ」「ファンタビ」の名シーンを思い出すさまざまな原寸大の世界、そのスケール感を満喫しながら、細かいネタを発見できるので、思った以上に長い時間を過ごしてしまう。とくにオススメなのが、ハリーの“実家”であるプリベット通り四番地、ダーズリー夫妻の家である。

ハリーが暮らしていた家が映画そのままに建っている。
ハリーが暮らしていた家が映画そのままに建っている。

ダーズリー家の内部は、映画のワンシーンが再現されている。
ダーズリー家の内部は、映画のワンシーンが再現されている。

ハリーが生活していた階段下の小部屋もこのとおり。
ハリーが生活していた階段下の小部屋もこのとおり。

食事の後の皿もそのまま。生活感が満点。
食事の後の皿もそのまま。生活感が満点。

その他にもセットの隅々の美術をすべて確認しながら歩く楽しみもある。

ダイヤゴン横丁の暗がりの隅っこに貼られた、おなじみの指名手配の紙。うっかり通り過ぎてしまう場所に、たくさんの発見が。
ダイヤゴン横丁の暗がりの隅っこに貼られた、おなじみの指名手配の紙。うっかり通り過ぎてしまう場所に、たくさんの発見が。

そしてもうひとつ、このスタジオツアーで心から推したいのが、セットやエクスペリエンスの間にある「展示」部分だ。

セットを構成する美術(プロダクションデザイン)や、クリーチャーのモデルコンセプトアート特殊効果の説明、さらに音響がどのように作られるかの解説やサンプルなど、映画の現場の本格的な舞台裏を垣間見せてくれるのである。この部分は残念ながらオープン前ということで写真を掲載できないのだが、ある意味、貴重すぎる展示の宝庫。時間をかけてじっくりと鑑賞してほしい。

スタジオツアー東京のヘッド オブ ショー エクスペリエンス(オペレーション責任者)の小野里尚樹氏も次のように語る。

「映画がどうやって作られるのか。将来的には、この施設を通じて映画製作を学んでもらうクラスの開催なども視野に入れています。ここに足を運んでくれた子供たちが『こんな風に映画が作れるのか!』『自分で絵コンテを描いてみたい』『俳優になりたい』などと感じてくれる。そんな光景が現実になることを信じています」

そのうえで助けになるのは、スタジオツアーの各所に配置されたスタッフだ。テーマパークのいわゆる“キャスト”ではなく、彼らは“インタラクター”と呼ばれる。意味はお客さんとの相互作用を起こす役割。

「インタラクターにどんどん話しかけてみてください。2倍、3倍の楽しさを提供してくれると思います。しかも自然なかたちで皆さんに接してくれるはずなので、ぜひ積極的に」と小野里氏。

スタジオツアーと銘打っているように、ここはテーマパークとは一線を画した場所になりそうだ。世界最高峰のスタジオが、どのように大作映画を作ってきたのか。その片鱗をリアルに体感させるという意味で、日本でも貴重なスポットとなるのは間違いない。

ホグワーツ男子寮の寝室。枕元の小机にそれぞれのキャラクターの持ち物を確認できる。
ホグワーツ男子寮の寝室。枕元の小机にそれぞれのキャラクターの持ち物を確認できる。

ハリーとロンが乗った空飛ぶ車の向こうには、シリーズに何度も登場するホグワーツ・ブリッジが。
ハリーとロンが乗った空飛ぶ車の向こうには、シリーズに何度も登場するホグワーツ・ブリッジが。

おなじみのナイトバスと電話ボックス。
おなじみのナイトバスと電話ボックス。

バックロットカフェのメニューのひとつ。
バックロットカフェのメニューのひとつ。

オリバンダーの杖の店を思わせるコーナーなど、ショップエリアは巨大。
オリバンダーの杖の店を思わせるコーナーなど、ショップエリアは巨大。

ここからホグワーツ行きの列車に乗り込める、キングス・クロス駅の9と3/4番線のホーム。
ここからホグワーツ行きの列車に乗り込める、キングス・クロス駅の9と3/4番線のホーム。

「ワーナー ブラザース スタジオツアー東京 - メイキング・オブ・ハリー・ポッター」

日時指定の事前予約制。料金は大人6300円、中人(中・高生)5200円、小人(4歳~小学生)3800円。チケットは公式サイトで発売中。

※画像はすべて筆者撮影

映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、ヤングマガジン、クーリエ・ジャポン、スクリーン、キネマ旬報、映画秘宝、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。

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