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「007」で可愛すぎて人気のアナ・デ・アルマス。12年前に来日。自身の衝撃写真にサイン求められ…

斉藤博昭映画ジャーナリスト
『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』のプレミアでのアナ・デ・アルマス(写真:ロイター/アフロ)

東京都などの緊急事態宣言が解除された10/1に公開が始まり、着実にヒットを続けている『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』。この1ヶ月半ほどの間で、多くの人を夢中にさせたキャラクターがいる。ジェームズ・ボンドがミッションで訪れたキューバで、彼のサポート役となる、CIAの新米エージェント、パロマだ。

新米だけあって登場した瞬間は、「この人で大丈夫?」という危なっかしさを漂わせつつ、いざミッションとなれば、キレキレのアクション天才的な瞬発力頭脳プレーでボンドを完璧に援護。去り際も超カッコいいうえに、ボンドガールとしての艶やかな魅力も満点! 登場シーンが短かったこともインパクトを増し、「もっと観たかった」という渇望感を高めた。映画の感想には「パロマを主人公にスピンオフを作ってほしい」というラブコールも並ぶなど、パロマ愛、そして演じたアナ・デ・アルマスへの賞賛がダダ漏れ状態である。

アナ・デ・アルマスは、この「007」で間違いなく、トップスターへの階段を駆け上がるだろう。4年前の大作『ブレードランナー 2049』のヒロイン役(と言っても、人工知能搭載のシステムで体現されたキャラ)がステップとなり、やはりダニエル・クレイグと名コンビをみせた『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』という傑作ミステリーを経て、完全開花した印象。

そのアナは、すでに『ブレードランナー 2049』でファンになった人も多く、同作のキャンペーンで2017年に来日を果たしていたことは、映画ファンにも知られている。

しかしそこから遡って2009年。すでにアナは日本に来ていた。自身の作品が日本の映画祭で上演され、招待されていたのだ。

2009年のラテンビートで来日した時のアナ・デ・アルマス。(提供/ラテンビート映画祭)
2009年のラテンビートで来日した時のアナ・デ・アルマス。(提供/ラテンビート映画祭)

ラテンビート映画祭。現在も続く、この映画祭は、スペインやラテンアメリカを中心に選りすぐりの作品を上映。ここから日本公開につながったものも多く、映画ファンには根強い人気を誇っている。

その第6回(2009年)の上映作品で、スペイン映画『セックスとパーティーと嘘』に主演したのが、アナ・デ・アルマス。同作は、アルコールやドラッグ、あらゆる快楽に見境なく溺れる若者たちを描いたセンセーショナルな問題作。

ラテンビートを創設し、現在もプロデューサー/プログラミング・ディレクターを務めるスペイン人のアルベルト・カレロ・ルゴさんは、当時のアナに接して、現在の「007」での大人気にも大いに納得していると語る。「彼女はいつか、世界的にビッグスターになる。大器の予感を、その時すでに味わっていました」とアルベルトさん。

いや、でもアルベルトさん。今だから、そう言えるんでしょう……と、ツッコミを入れようとすると、彼はこんな秘話を語ってくれた。

「当時、アナのことを日本で知っている人は、ほぼいないだろうと思っていました。ですから彼女が舞台挨拶を終えて、劇場の外に出たときの光景に私は驚いたのです。

そこには、15〜20人くらいの男性ファンが待ち構えていました。年齢は20代から40代くらい。彼らはみな手に写真を持っており、アナにサインをしてほしいと集まってきたのです。

私はその写真を見て、愕然としました。アナの一糸まとわぬ姿の写真だったからです。それは、キューバ生まれの彼女が、キューバ国立演劇学校時代に参加し、彼女を一躍有名にした『カリブの白い薔薇』という映画のカットでした。

たしかにその映画で、彼女は10代にもかかわらず惜しげもなく脱いでいました。でもよりによって、そんな写真にサインを求めるなんて……」

『カリブの白い薔薇』は、アナ・デ・アルマスを一躍、キューバで有名にした作品。娼館に住み、アメリカへ渡ることも夢みる16歳の少女というヒロイン役で、すでに未来のスターを予感させる輝きを放っていた。実際にこの作品をきっかけに、スペインのプロデューサーに注目された彼女は、スペインの国籍を取得して同国へ移住。スペインの映画界からハリウッドへと進出していったのである。

この『カリブの白い薔薇』は、ラテンビートの少し前に日本でもDVDが発売されていた。おそらくそれを観て、アナの魅力に夢中になったファンが、作品の画像をプリントアウトしてきたと思われるが、冷静に判断すれば、ハラスメントになりうる。

アルベルトさんがさらに驚いたのは、その後のアナの行動だった。

「21歳の女性が、自身のそんな写真を突きつけられ、サインを求められたら、どんな気分になるでしょう? 私は横で不測の事態を恐れ、警戒していました。

ところがアナは、笑顔で写真を受け取ると、サインを始めたのです。しかもそのサインで、見事に写真のバストの部分が見えないようにしました。まるで『サインはするけれど、見せたくない部分は隠してね』と伝えるような、この余裕の行動。それを瞬時にこなすことに私はびっくりしました。

ユーモアも感じられましたし、そこで私は、『この人は、いつか大物になる』と確信したのです」

ラテンビートの上映を終えたアナは、映画祭のスタッフとともに浅草や渋谷へ遊びに行き、初めての日本を満喫していたという。

ラテンビートで来日した直後、2010年のアナ・デ・アルマス。
ラテンビートで来日した直後、2010年のアナ・デ・アルマス。写真:Splash/アフロ

16歳で出演した映画で大胆な演技に挑み、未来の輝きを予感させたアナ・デ・アルマス。むしろ「007」での超ブレイクは遅すぎたのかもしれない。

しかしこの後も、『アベンジャーズ』シリーズのルッソ兄弟が監督で、クリス・エヴァンス、ライアン・ゴズリングと共演のアクションサスペンス『The Gray Man(原題)』、あのマリリン・モンローを演じる『Blonde(原題)』など、彼女の快進撃は続く。

その原点『カリブの白い薔薇』は、日本でも現在、DVDレンタルなどで観ることができる。また、2009年のラテンビートの動画では、こちらの1:48くらいからインタビューに答える彼女の姿が収められている。

映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、ヤングマガジン、クーリエ・ジャポン、スクリーン、キネマ旬報、映画秘宝、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。

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