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ふたたび雪崩のごとくの公開延期。007、キングスマン…。公開早まるゴジラ新作には期待も

斉藤博昭映画ジャーナリスト
ダニエル・クレイグのボンド最後の勇姿は、いつスクリーンで観られるのか…(写真:REX/アフロ)

もう、このまま劇場で観られないのではないかーー。

そんな心配すら頭をよぎる、「007」最新作のまたしても公開延期のアナウンスである。

ダニエル・クレイグがジェームズ・ボンドを引退する記念すべき一作『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』は、世界が平穏であったら2020年の4月に公開されるはずだったが、新型コロナウイルスの影響で一旦は同年11月に延期。クリスマスムービーの目玉になる予定が、感染状況が収まらず、2021年4月2日に再延期。今度こそ大丈夫かと思われたものの、相変わらす状況は好転せず、10月8日に再々延期となってしまった。じつに1年半もの待機期間となる。ここまでの事態は、さすがに予想できなかった。

映画ファンの間には「またか……」という諦めの空気が流れるばかり。延期が繰り返される間に、Netflixなどでの配信への移行も交渉されたが、金額が折り合わなかったりして、そちらも断念(劇場のスクリーンで観たいので、これには安堵した)。しかしこのまま公開が延び延びになっていけば、作品への興味もどんどん失われかねない。はたして10月には本当に公開されるのか。先が見えない焦燥感だけが漂う。

ディズニー、ソニーからも続々と公開延期が

「007」だけでなく、時期を同じくして他のハリウッド大作の延期が続々とアナウンスされた。

ディズニーは、全米3月12日公開の『キングスマン ファースト・エージェント』を、8月に延期することを発表。日本も同時公開の予定だったので、当然のごとく先送りになるだろう。

ソニー・ピクチャーズは、『ピーターラビット2/バーナバスの誘惑』を4月2日から6月11日に、『ゴーストバスターズ/アフターライフ』を6月11日から11月11日に、そしてマーベルの新キャラクター映画『モービウス』を10月8日から2022年の1月21日に、それぞれ全米公開を延期することに決定した。この結果、日本での公開日もこれから決まる状態に。『ゴーストバスターズ』も『モービウス』も、ともに当初は2020年7月に公開が予定され、サマームービーで盛り上がるはずだった。『モービウス』はそこから一旦、2021年3月に変更され、さらに10月、2022年と、他の作品との関係でドミノ的に公開時期が延びていく……という、またしてもの流れだ。

この流れに、まだ歯止めはかからないのかーー。

今後、直近で注目されるのは、全米5月7日公開の『ブラック・ウィドウ』、同5月28日公開の『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』の動向となる。さすがに5月には状況が好転していると期待したいが、この期待、何度も裏切られてきただけに、はたして……。2021年の夏には『トップガン マーヴェリック』も待機している。

緊急事態宣言の解除が見えないと、日本映画も…

日本でも今回の緊急事態宣言によって、話題作の公開延期が相次ぐようになった。1月15日公開予定だった、ブラムハウスのホラーコメディ『ザ・スイッチ』が公開の1週間前に延期を発表。続いて1月23日公開の『シン・エヴァンゲリオン劇場版』も延期が決まった。さらに2月7日までという緊急事態宣言の期間がどうやら延長されるのでは……という空気が濃厚となるなか、2月5日公開、岡田准一主演の続編『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』も延期となってしまった。主要都市を擁する都道府県のシネコンが、基本的に20時までの上映回で終わらせ、不要不急の外出を控えるようにガンガン言われている状況で、大ヒットを見込んだ作品が公開を躊躇するのは、仕方ないことではあるが。

小栗旬も出演のゴジラとキングコングの激闘は異例の前倒し

しかし、このような状況で、逆に公開が早まった作品もある。『ゴジラVSコング(原題)』だ。5月21日に予定していた全米公開日が急遽、3月26日に前倒しされたのだ。同作は当初、2020年3月に公開予定で、11月に延期、2021年5月に再延期されていた。このコロナ禍の時期に、わざわざ公開を早めちゃっていいの? 『ゴジラVSコング』はワーナー・ブラザース作品で、全米では劇場公開と同時に同社のストリーミングサービス、HBO Maxでの配信もスタートさせる。さまざまな論議を呼ぶ、この同時公開形態だが、『ゴジラVSコング』に関しては共同製作のレジェンダリー側と和解がもたれた。『ワンダーウーマン 1984』と同じく、全米での劇場公開と配信の同時スタートによって、HBO Maxの会員へのアピールを維持したい。そのために公開の前倒しに踏み切ったとも考えられる。小栗旬も出演している『ゴジラVSコング』。これに伴って、日本での公開が早まる可能性もありそうだ(日本ではワーナーではなく東宝が主導の配給)。

ちなみに『ゴジラVSコング』は1月24日(現地時間)に待望の予告編が解禁となる。

このようにワーナーの作品は当面、全米での同時配信が決まっているので、今後も公開延期になる可能性は少なそう。HBO Maxのサービスが始まっていない日本など各国では、映画館が通常どおり営業していれば、順当に公開されるはずだ。

2月26日全米公開で、アニメと実写が融合した『トムとジェリー』も、日本では予定どおり3月19日に公開されるし、浅野忠信真田広之が参加した人気ゲームの実写化『モータル・コンバット(原題)』の全米4月16日公開も確定のまま。日本公開もその直後くらいに決まってくるのではないか。

『トムとジェリー』(c) 2020 Warner Bros. All Rights Reserved. 3月19日(金)全国ロードショー  配給:ワーナー・ブラザース映画
『トムとジェリー』(c) 2020 Warner Bros. All Rights Reserved. 3月19日(金)全国ロードショー  配給:ワーナー・ブラザース映画

ワーナー作品以外でも、やはり人気ゲームのハリウッド実写化『モンスターハンター』は3月26日に日本公開だが、すでに全米では公開済みなので、今のところ予定どおり。日本の状況次第である。

2月を何とかしのいで、3月にコロナの状況が少しでも好転すれば、少なくとも日本ではハリウッド大作の公開が続く予定ではある。そして日本映画でも3月は『奥様は、取り扱い注意』や『騙し絵の牙』、4月からゴールデンウイークに向けて『名探偵コナン 緋色の弾丸』、『キネマの神様』、『るろうに剣心 最終章The Final』と、大ヒットを期待できる作品がいくつも公開されるので、あとは社会状況が通常に近づくことを祈るばかりだ。

映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、ヤングマガジン、クーリエ・ジャポン、スクリーン、キネマ旬報、映画秘宝、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。

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