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2作目が傑作となる3部作の法則を証明!? 『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』

斉藤博昭映画ジャーナリスト
ライトセーバーを手にしたレイに、新たな、そして予想外の試練が……

いよいよ日本でも公開が始まる『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』。

前作『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』に続く物語で、新たな3部作の真ん中に位置する。

現在(12/14)、映画批評サイト、ロッテントマトの数字は94%という高い数字を記録。『フォースの覚醒』の93%を上回っている。続編が1作目の仕上がりを上回るのは、比較的、少ないケースだが、この『最後のジェダイ』の仕上がりには、『スター・ウォーズ』最初の3部作が重なり合ってしまう。

ロッテントマトの数字を振り返ってみると…… ※12/14現在の数字 ※最初の数字は評論家、()内は一般観客の評価

『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』 93%(96%)

『〜エピソード5/帝国の逆襲』 94%(97%)

『〜エピソード6/ジェダイの帰還』 80%(94%)

「4」と「5」の数字が今回とまったく同じなのである。実際にスター・ウォーズ・ファンからは「『帝国の逆襲』がいちばん好き」という声をよく聞く。ひとつの世界観、その設定を伝える1作目と違い、2作目では、すでにおなじみとなったキャラクターを使って野心的なチャレンジが可能で、そのチャレンジがうまく機能すれば、さらなる傑作となる。これは特に「3部作」で顕著であり、今回の『スター・ウォーズ』新3部作でも、次のエピソード9ではひとつの完結を迎えるわけで、『最後のジェダイ』=エピソード8は完結を考えなくてもいい「自由度」がある。その結果と言っていいかもしれない。

『最後のジェダイ』はすでにレビューも出ているのでここでは詳しく書かないが、あえて特筆すべき点は、シリーズの精神を受け継ぎつつ、シリーズファン以外も入り込みやすい作り、だろう。

何度かセリフに出てくる「希望」という言葉を胸に、戦いに身を委ねるキャラクターたち。その戦いに伴う、さり気ない自己犠牲。

ライトサイド(光)とダークサイド(闇)の混沌に葛藤するメインキャラクター。一方で、最近のアクション大作と明らかに違う登場人物の「無鉄砲さ」もあちこちに溢れ、このあたりはシリーズの原点が甦って胸が熱くなる。

そして、邪悪な赤をキーカラーにしたバトル。

全体のストーリーがコンパクトなのに壮大スケールを実感させる魔法が、この映画には備わっていた。

ルーク・スカイウォーカーとレイの関係が、ヨーダと若きルークを連想させたり、AT-ATが闊歩するアクション、氷の惑星「ホス」と石の惑星「クレイト」の相似など、『帝国の逆襲』へのオマージュ感が強いのも、3部作の2作目という共通項と関係があるのかも。

このように3部作の真ん中が高い評価を受けた大ヒット作は他にもいくつかある。

3作のロッテントマトの数字の移り変わりを見てみると……。※同じく()内は一般観客

ロード・オブ・ザ・リング

91%→96%→94%(95%→96%→86%)

アカデミー賞作品賞を受賞した3作目の『王の帰還』より、なんと2作目『二つの塔』が上である。

『ロード〜』とも深い関係にあるこの作品も……

ホビット

64%→75%→60%(83%→85%→75%)

サム・ライミ監督の『スパイダーマン』3部作もその好例。

89%→93%→63%(67%→81%→51%)

さらに『マッドマックス』旧3部作

90%→98%→81%(70%→85%→49%)

こうして振り返ると、3部作の完結で数字が落ちるケースも多い。最初から「3部作」の想定ではなく、単に3作目の仕上がりがイマイチだったので、3部作になった、という結果もあるだろう。

やはり3作目は鬼門で、以下のように2作目まで高数字を維持したのに、3作目でガタ落ちするというシリーズ3部作もある。

ゴッドファーザー

99%→97%→67%(98%→97%→78%)

マトリックス

87%→73%→36%(85%→72%→60%)

逆に『トイ・ストーリー』などは、3作目の評価が高かったので、3部作として終わらず、4作目(現在製作中)につながっていたりする。

トイ・ストーリー

100%→100%→99%(92%→86%→89%)

他にも3部作はいくつかあるが、ちょっと待って、重要なものをひとつ忘れていた。『スター・ウォーズ』のエピソード1〜3である。

その数字の推移は……

55%→66%→79%(59%→57%→65%)

3部作の法則どおり2作目でわずかに評価が上がってはいるが、他の人気3部作と違って、全体に低い数字。なんとか最終章で盛り返すことができた、という印象だ。『スター・ウォーズ』といえば、どうしても最初の3部作の人気が高く、続く3部作は過剰な期待というハンデもあったため、なかなか正当な評価がされていない部分もある。

とりあえず、『フォースの覚醒』で鮮やかに復活し、『最後のジェダイ』がその復活を見事に受け継いだということで、シリーズファンは安堵することだろう。最終章は監督がJ.J.エイブラムスに戻るが、エピソード7〜9は、映画3部作=サーガとしての輝きを放つことになりそうだ。

『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』

12月15日(金)、全国ロードショー

配給/ウォルト・ディズニー・ジャパン

(C) 2017 Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、ヤングマガジン、クーリエ・ジャポン、スクリーン、キネマ旬報、映画秘宝、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。

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