全貌解禁!攻殻機動隊→『ゴースト・イン・ザ・シェル』は成功したか。監督・スカヨハの思いとともに

(写真:ロイター/アフロ)

4月7日に日本で公開される『ゴースト・イン・ザ・シェル』は、日本発のコミックおよびアニメーション作品を、ハリウッドが実写化するという、注目のケースだ。過去にも「マッハGoGoGo」や「ドラゴンボール」、そしてこれは同じアニメとしての再生だが「鉄腕アトム」といった人気作品がハリウッドで映画化され、どれも「大成功」とは言い難い結果になっていた。

その意味で今回の『ゴースト・イン・ザ・シェル』に、期待と不安が入り交じっているのは事実だろう。士郎正宗の原作「攻殻機動隊」と、そこから派生した押井守監督によるアニメーション作品、さらにTVシリーズも含め、日本のみならず海外にもマニアックなファン層は拡大した。スティーヴン・スピルバーグが早くから実写化の権利を得て、彼自身の手を離れたものの、ようやく実写版プロジェクトがスタート。その後も、主演の少佐役にスカーレット・ヨハンソンがキャスティングされ、「日本人のキャラクターを、なぜハリウッド女優に?」などファンの論争がBuzzったりもして、話題は途切れなかった。

ファンへの愛か、一般客へのアピールか

まだ完成前に、筆者はスカーレット・ヨハンソンにインタビューした際、こうしたファンからのプレッシャーに対して、彼女は次にように語った。

オリジナルの作品に対して、私たちが込めた思いやオマージュを素直に受け取ってほしい。この作品は、オリジナルの「攻殻機動隊」へのラブレターのようなものなの。

このスカーレットの言葉どおり、今回の『ゴースト・イン・ザ・シェル』には、「攻殻」ファンにとってオリジナル版がフラッシュバックするシーンがたっぷり用意された。少佐(=オリジナル版の草薙素子)の義体化など重要なシーンはもちろん、たとえば“仕事”を頼まれる清掃局員コンビの風貌や会話など細かい部分を、押井守作品をそのままなぞっていたりする。もちろんバセットハウンドも登場(でも、ちょぴり犬種が違ってる!?)。多脚戦車の暴走っぷりなどもファンにはうれしい。これを引用やオマージュ、あるいはスカーレットの言うように「ラブレター」と受け取るかどうか。そこに賛否の分かれ目があるかもしれない。

実際に海外のレビューでは「アニメ作品を丹念に再現した例。まさにコスプレと呼んでもよい様式だ」(THE WRAP)などという表現も出ている。

そういった意味で、「攻殻機動隊」の世界観をまったく知らない人にとっては、ストーリーがややわかりにくい可能性もある。とくに今回の敵であるクゼが仕掛けるサイバーテロについては、その意図や犯行方法など、「攻殻」に親しんだ人も不可解と感じるかもしれない。

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では、「攻殻」を知らない人には楽しめないのか? そんなことはない。むしろまっさらな感覚で向き合う方が、新鮮な驚きと興奮を味わえる作品ではないだろうか。他の映画で既視感があるとはいえ、立体広告も浮かぶ都市全体のビジュアルは、3D効果で美しく迫ってくるし、要所に出てくるさまざまなサイボーグ技術は、実写ならではの“リアル未来世界”として面白く観ることができる。芸者ロボットの奇怪な動きは素直にゾクゾクさせるし、細部まで映像への手抜かりはない。

そして何より、この『ゴースト・イン・ザ・シェル』は、スカーレット・ヨハンソンの魅力を最大限に引き出したと言ってよさそう。これまでも『アベンジャーズ』や『LUCY/ルーシー』で超人的アクションをこなしてきた彼女は、サイボーグとしての戦闘テクはもちろんだが、肉体にぴったりのボディスーツ姿は、オリジナル版の草薙素子よりもガタイ系。『アベンジャーズ』のブラック・ウィドウ以上に、戦闘マシンとしての説得力がある。なおかつスカーレットらしいセクシーさも放って、文句ナシの外見と動きを誇示する。

少しだけ、サイボーグ風のメイクをしているわ。真珠のような蛍光色のファンデーションでプラスチックに見せる皮膚にしたし、睫毛も過剰に付けた。そしてボディスーツのしわや、アップになった時の毛穴は視覚効果で処理されて、完璧なサイボーグになったの。

ジャパンプレミアでのスカーレット・ヨハンソン (c) 2017 Jun Sato
ジャパンプレミアでのスカーレット・ヨハンソン (c) 2017 Jun Sato

と、スカーレットも微笑みながら語ってくれた。今回の実写版では、オリジナル版にはなかったヒロイン=少佐のアイデンティティが深く追求される(後半は、サイバーテロ事件より、そちらの物語がメインになる)。劇中で「ミラ」とか「キリアン」とか、少佐の名前らしき単語も出てくるが、彼女の脳とハートはどこから来たのか……という物語で、スカーレットの渾身の演技も見ものだ。

監督がもっとオタクな人だったら、本作は大きく変わっていたかもしれない。よりエッジが効いたマニアックな作風か、あるいはそうなりすぎて一般観客を完全に遠ざける作品になったか。その点で、明らかにオタク気質ではないルパート・サンダースは、とりあえず正解だった気もする。

監督は筆者とのインタビューで次のように語っていた。

原作コミックではなく、多くの要素は押井さんのアニメに基づいている。ただ、押井さんの作品は頭脳的で、感情も抑え気味だから、そのまま実写にするのは難しい。もっとエモーショナルな部分を入れる必要があった。自分が入れたい要素、オリジナルのファンが絶対に見たい要素を、まずグラフィックノベルとして組み立て、ストーリーを形成した。サイバーパンクの精神だけは忘れずにね。

ジャパンプレミアでのサンダース監督 (c) 2017 Jun Sato
ジャパンプレミアでのサンダース監督 (c) 2017 Jun Sato

基本的に「攻殻機動隊」のファンではあるようだが、マニアック信奉者ではないという印象のサンダース監督。逆に冷静な視点で、作品を構成した面もあるだろう。ちょっぴり残念なのは、『スノーホワイト』もそうだったが、アクション場面の演出がやや粗雑な点。このあたり、もう少し「アクション愛」のある監督に撮ってほしかった、というのは贅沢な願望か。

日本人として「確認すべき」作品に

荒巻役のビートたけしのほか、桃井かおりは重要な役を任され、福島リラに至っては、キャプチャー技術を使った芸者ロボット役と、日本人キャストの見せ場も多数。結果的に、日本人としては「絶対に観ておきたい」作品には仕上がっている。もちろん賛否両論は起こるだろう。しかし、日本で生まれ、世界中にファンを広げた作品が、ハリウッドによってどのように生まれ変わり、実写で表現されるのか。それ自体を確認する意味は、少なくとも「ドラゴンボール」などの先例に比べれば、今回の『ゴースト・イン・ザ・シェル』は圧倒的に大きいと言える。今後も「NARUTO」や「ポケモン」などで続く、ハリウッド実写化へ向けての新たな一歩としても……。

『ゴースト・イン・ザ・シェル』

4月7日(金)ロードショー 配給:東和ピクチャーズ

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