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マーベル最新作にスター・ウォーズ愛が充満!? ディズニーが結びつけた両メガヒット作

斉藤博昭映画ジャーナリスト
『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』

マーベル・シネマティック・ユニバースの最新作『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』が、4月29日に日本で公開される(全米では5月5日公開)。公式的には「キャプテン・アメリカ」のシリーズ第3作なのだが、物語としては、昨年公開された『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(そしてちょっぴり『アントマン』)の続きになっている。

『ウルトロン』で、ソコヴィアという国が受けた壊滅的被害なども原因となり、アベンジャーズがキャプテン・アメリカアイアンマンの2大派閥に分かれ、戦いを余儀なくされる展開。そこにスパイダーマンや、今後、主演作が待機するブラックパンサーも参戦し、もはや『アベンジャーズ』をも超える“ヒーローオールスター大感謝祭”のような豪華なノリで、ハルクやソーは出演していないのに、その不在の寂しささえも感じさせない。『アベンジャーズ』的な満腹感を存分に味わえる仕上がりになった。

そして、この『シビル・ウォー』で、過剰なまでに出てくるのが、あの人気シリーズへのオマージュだった。セリフの中に、不必要なまでに頻出する「帝国」や「逆襲」という単語…。そう、『スター・ウォーズ』である。ストーリーの要所に、さり気ないオマージュを盛り込みつつ、近年のマーベル作品で、なぜが何度も出てくる「ある衝撃描写」が、今回、忘れがたい演出で描かれ、『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』を思い出さずにはいられない。シリーズの中の位置づけとしても、この『シビル・ウォー』の、物語としてのダーク&シリアスな転換は、『スター・ウォーズ』のエピソード4からエピソード5を連想させたりもする。「スター・ウォーズ」ファンの中でも『帝国の逆襲』は人気が高いので、そのあたりの目配せに、素直に胸が熱くなってしまうのだ。

現在、『アベンジャーズ』を軸としたマーベル作品も、『スター・ウォーズ』も、世界で配給するのは、ディズニー。ファンが喜ぶネタとして、2つの特大人気シリーズの、心躍る「つながり」が作られたのも、同じディズニー傘下ゆえ…というのは極論にしても、気兼ねなく可能になった部分はあるだろう。

『シビル・ウォー』におけるキャプテン・アメリカとアイアンマンの“両雄激突”は、先日公開されたDCフィルムズの『バットマンvs スーパーマン ジャスティスの誕生』と比較したくなるが、DC作品の、とことんダーク&シリアスなムードに対し、マーベル作品は、希望やユーモアといった要素も濃厚。『シビル・ウォー』もダークに転換したのは、あくまでも「ストーリー上」であって、全体の作風は明るく、『バットマン〜』と真逆の印象。要所で過剰なまでに、そしてさり気なく「友情」エピソードが描かれ、やたら胸をキュンとさせるあたりも、究極のエンターテイメントを追い求めるディズニーと、マーベル作品が起こす絶妙な化学反応だ。

『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』

4月29日(金・祝)、全国ロードショー

(c) 2016 MARVEL

映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、ヤングマガジン、クーリエ・ジャポン、スクリーン、キネマ旬報、映画秘宝、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。

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