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ヤバすぎて中国では上映見送りの『デッドプール』が台北に降臨!

斉藤博昭映画ジャーナリスト
中国語でのタイトル表記は『死侍』。主演ライアン・レイノルズもプレミアに登場

刺激的なマーヴェルのNEWヒーロー

アメコミヒーロー映画が乱立するここ数年、やや食傷気味の観客もいたが、2016年、このジャンルでは超異色となるヒーローの映画が公開される。『デッドプール』だ。

しかし先日(1月18日)、ショッキングな情報もとび込んできた。『デッドプール』の中国での公開が不可になったのだ。その理由として、中国当局は「バイオレンスとセックス描写の過激さ、不適切な言葉づかい」としている。つまり、それだけ刺激的ってこと!

北米に次ぐ世界第2の映画マーケットである中国で上映不可となれば、興行収入に大きな痛手となる。しかし、『デッドプール』の魅力は、まさに「バイオレンスとセックス、そしてダーティな台詞」。その部分を和らげてしまえば、デッドプールの存在意義も薄れてしまうので、現在、中国向けに“お行儀のいい”バージョンが用意されるという動きはみられない。

完成作品のレビューは現段階で、まだ書くことは許されていないが、特別上映ですでに観た「デッドプール」ファンの声は絶賛であふれており、マーヴェルのプロデューサー、スタン・リーも「私がカメオ出演した映画の中で、最も楽しんだ一作」とコメントしている。

ファンの熱狂に包まれた台北プレミア

その『デッドプール』のアジアプレミアが、1月21日、台北で開催された。中国本土で上映できない作品が、台湾で一大イベントを行うとは、なんとも皮肉である。折しも1月16日の台湾総統選挙で、中国の統一攻勢に警戒感を示す民進党が大勝利を収めたばかり。その選挙結果とハリウッド映画の上映問題は無関係ではあるが、選挙→上映不可決定→プレミアが、わずか一週間以内の出来事だったのだ。

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台北のランドマークである「台北101」の近くに位置する、「信義威秀(VIESHOW CINEMAS)」でのレッドカーペットには、地元の台湾を中心に、香港、シンガポール、マレーシア、日本など各国のマスコミが集結。午前8時から待っていたというファンもいるなか、主演のライアン・レイノルズが「世界で最もセクシーな男性」と紹介され、登場した。

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台北で、ハリウッドスターを招いてのプレミアは貴重な機会なので、その熱狂はすさまじい限り。ライアンも興奮気味で、「このカーペットを歩く前は時差ボケだったけど、一気にふっとんだよ。我愛台北(ウォーアイタイペイ)!」と叫びながら、ファンのサイン攻めに満面の笑顔で応じていた。

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台湾での本作の公開は2月10日、北米公開は2月12日。北米ではR指定(17歳未満は保護者同伴)という危険なヒーロー映画なので、どれだけヒットするのかにも映画業界は注目している。

『デッドプール』は日本では、6月、TOHOシネマズ 日劇1ほか全国ロードショー

『デッドプール』ストーリー

退役軍人の主人公ウェイドが、愛する女性を見つけ、幸福な未来が約束されたのも束の間、末期ガンであることが発覚。彼の戦闘能力の高さを見抜いたある組織が、ウェイドを捕らえ、人体改造の実験台にする。その結果、誕生したのが「デッドプール」だった…。

(c) 2015 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.

映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、ヤングマガジン、クーリエ・ジャポン、スクリーン、キネマ旬報、映画秘宝、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。

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