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ゴールデン・グローブ賞、超直前予想!

斉藤博昭映画ジャーナリスト
昨年のゴールデン・グローブ賞授賞式でのレッドカーペットより

映画業界の注目が集まるゴールデン・グローブ賞の授賞式が、間もなく、1月12日夜(ロサンゼルス現地時間/日本は13日)に開催。「ハリウッド外国人映画記者協会」の会員による投票で決まるこの賞は、アカデミー賞の最大の前哨戦として位置づけられている。

そこで発表直前に、映画部門の主要賞の行方を予想してみた。

★5つの「確定」から、★1つの「ノミネートで幸運」まで、受賞の可能性をランク付け。

「ドラマ部門」「コメディー/ミュージカル部門」の区分けに疑問もある作品もあるが、 例年になく混戦が予感されているので、サプライズの受賞も含め、結果を楽しんで待ちたい。

作品賞(ドラマ部門)

『それでも夜は明ける』★★★★

『キャプテン・フィリップス』

『ゼロ・グラビティ』★★★★

『あなたを抱きしめる日まで』

『ラッシュ プライドと友情』

ここは2強の争い! 最多ノミネートの『それでも夜は明ける』が有利だが、『ゼロ・グラビティ』は世界的な観客の支持も後押しになっている。

作品賞(コメディー/ミュージカル部門)

『アメリカン・ハッスル』★★★★

『her/世界でひとつの彼女』★★★

『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』★★

『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』★★

『ウルフ・オブ・ウォールストリート』★★★

ドラマ部門以上の激戦。最多ノミネートの『アメリカン・ハッスル』を、すべての作品が逆転するポテンシャルを秘めている。『her〜』、『ネブラスカ』などは「ドラマ部門」がふさわしかった気も…。

監督賞

アルフォンソ・キュアロン『ゼロ・グラビティ』★★★

ポール・グリーングラス『キャプテン・フィリップス』★

スティーヴ・マックイーン『それでも夜は明ける』★★★

アレクサンダー・ペイン『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』★★

デイヴィッド・O・ラッセル『アメリカン・ハッスル』★★★

ドラマ部門とコメディー/ミュージカル部門が一緒になったここでの受賞作が、アカデミー賞の作品賞にに直結する可能性が大(昨年の『アルゴ』と同様)。誰が選ばれても、この部門で初受賞となる。

主演男優賞(ドラマ部門)

キウェテル・イジョフォー『それでも夜は明ける』★★★

イドリス・エルバ『Mandela』★★

トム・ハンクス『キャプテン・フィリップス』★★

マシュー・マコノヒー『ダラス・バイヤーズクラブ』★★★★

ロバート・レッドフォード『オール・イズ・ロスト~最後の手紙~』★★★

体重を大幅に減らしたマコノヒーがやや優勢だが、77歳のロバート・レッドフォードには「功労賞」的な評価もある。昨年亡くなったマンデラ元大統領を演じたエルバは、タイムリーという意味で大逆転も!?

主演女優賞(ドラマ部門)

ケイト・ブランシェット『ブルージャスミン』★★★★★

サンドラ・ブロック『ゼロ・グラビティ』★★

ジュディー・デンチ『あなたを抱きしめる日まで』★

エマ・トンプソン『ウォルト・ディズニーの約束』★★

ケイト・ウィンスレット『とらわれて夏』★

今年の全部門で、最も確定度が高いのが、このケイト・ブランシェット。これまでの賞レースを軒並み制しており、他の候補者は授賞式をゆったり楽しめることだろう。

主演男優賞(コメディー/ミュージカル部門)

クリスチャン・ベール『アメリカン・ハッスル』★★★

ブルース・ダーン『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』★★★★

レオナルド・ディカプリオ『ウルフ・オブ・ウォールストリート』★★★

オスカー・アイザック『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』★★★

ホアキン・フェニックス『her/世界でひとつの彼女』★★★

この部門も大激戦。カンヌ国際映画祭でも受賞したブルース・ダーンを中心に、アカデミー賞では嫌われているディカプリオやホアキン・フェニックスには同情票も加味されそうだし、ベールとアイザックは、作品が気に入った人なら必ず投票しそう。

主演女優賞(コメディー/ミュージカル部門)

エイミー・アダムス『アメリカン・ハッスル』★★★

ジュリー・デルピー『ビフォア・ミッドナイト』★

グレタ・ガーウィグ『Frances Ha』★★

ジュリア・ルイス=ドレイファス『Enough Said』★★★

メリル・ストリープ『8月の家族たち』★

これまでもノミネート経験豊富なエイミー・アダムスが受賞に近そう。ジュリア・ルイス=ドレイファスはテレビ部門でもノミネート。『Enough Said』で共演したジェームズ・ガンドルフィーニが昨年急死し、彼への敬意が込められて…という可能性もある。

助演男優賞

バーカッド・アブディ『キャプテン・フィリップス』★

ダニエル・ブリュール『ラッシュ プライドと友情』★

ブラッドリー・クーパー『アメリカン・ハッスル』★★

マイケル・ファスベンダー『それでも夜は明ける』★★★

ジャレッド・レト『ダラス・バイヤーズクラブ』★★★★

HIVに感染した役で、しかも女装姿。賞レースが好む演技をみせたレトが、前哨戦でも受賞を重ね、一歩リード。対抗は悪役を嫌味たっぷりに表現したファスベンダーか。

助演女優賞

サリー・ホーキンス『ブルージャスミン』★★

ジェニファー・ローレンス『アメリカン・ハッスル』★★★★

ルピータ・ニョンゴそれでも夜は明ける』★

ジュリア・ロバーツ『8月の家族たち』★

ジューン・スキッブ『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』★★★

昨年、アカデミー賞でも主演女優賞に輝き、今やハリウッドを代表するスターとなったローレンスが、今年も実力と強運で勝ち取りそう。ただ、大逆転が起こるとしたら、この部門のような気もする。

外国語映画賞

『アデル、ブルーは熱い色』(仏) ★★★★

『The Great Beauty(La Grande Bellezza)』(伊・仏) ★★

『偽りなき者』(デンマーク)★★

『ある過去の行方』(仏・伊)★★

『風立ちぬ』(日) ★★★

最後に、日本人としては期待のこの部門。アニメーション部門ではなくこちらに回った『風立ちぬ』に受賞してほしいが、カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した『アデル〜』を落とすという選択は、なかなか難しいかも…。

※写真は筆者撮影

映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、ヤングマガジン、クーリエ・ジャポン、スクリーン、キネマ旬報、映画秘宝、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。

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