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ハリウッド若手スターで、いちばん性格がいいのは、この人!?

斉藤博昭映画ジャーナリスト
『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々:魔の海』11月1日(金)公開

取材で見え隠れする、スターの素顔

スターたるもの、性格がどうあれ、カリスマ性や演技力を備えていれば十分。でも性格がよければ、さらに応援したくなってしまう。

もちろん彼らの本当の性格を知ることなんて不可能だが、取材などを通して、偽りのない素顔が伝わってくることはよくあるのだ。

性格のいいスターといえば、ヒュー・ジャックマンが有名。

基本的にインタビューというのは、俳優にとって、あまりやりたくない仕事でもある。余計なことを質問されて嫌な気分にもなるし、だいたいスターであればあるほど、多忙なスケジュールの合間をぬって、貴重な時間をとるわけだから、単純に「面倒」なのである。当然、やる気のなさが露骨に出てしまうスターがいるなか、ヒューはつねにサービス精神旺盛で応じてくれる(撮影でヘトヘトの現場でも!)。取材を受けるからには、きっちりと…という真摯な姿勢は、性格の良さも関係しているはずだ。

ヒューのようなベテランは別として、伸び盛りの若手スターは、自分の個性を押し出そうと妙に別人格を装っていたり、インタビューへのやる気のなさが出てしまったりして、素顔が判別しづらいことが多い。

そんな若手の中にも、ナチュラルボーンな性格の良さがにじみ出てしまう俳優が、たまにいる。ちょっと前なら、ザック・エフロンか。『ハイスクール・ミュージカル』で日本でも人気を呼んだ彼は、直接会うと印象の良さが倍増する貴重なスター。さまざまな機会でインタビューした人たちも、口を揃えて「いい人」と誉めちぎっていた。そんなザックも、最近はコカイン中毒でリハビリ施設に入るニュースなど、「性格がいい」という長所がかすんでしまうネタが増えてしまった。

作り物ではない、相手をなごませる本能

では、現在のハリウッド若手でダントツに性格のいいスターは誰か? それはローガン・ラーマンかもしれない。

ビバリーヒルズで生まれ、01年の『パトリオット』でメル・ギブソンの息子を演じるなど、子役時代から活躍した経歴で、ハリウッドの裏も熟知。一見“すれた”若手スターと思うかもしれない。ところがこの人、ヒュー様並みの性格の良さなのである。2年前、『三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』で来日したときも、取材した人たちに軒並み好印象を与えた。その性格は今も変わっておらず、間もなく日本公開される『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々:魔の海』の取材でインタビュールームに現れた彼は、爽やかな笑顔をたたえ、好青年そのものだった。

3年ぶり、2度目となるパーシー・ジャクソン役。海の神ポセイドンの息子という設定なのだが、この日、ローガンの左の手首には木製の数珠が…。

「僕はけっこうスピリチュアルな人間かもしれない。韓国に行ったとき、仏教の寺院で数珠を買ったのだけど、それが壊れてしまって、チベットに住んでいた僕の友人が買ってきてくれたのがコレだよ。とても美しいよね」と、素直に微笑みながら、数珠を見せてくれる。

タイトルにあるとおり、海でのアクションが見どころとなるこの続編で、ローガンは海の水を操り、サーフィンのような豪快な海上アクションも披露しているが、彼の口をついて出たのは、意外なコメントだった。

「子供の頃、僕は自分自身が大嫌いだった。インタビューを受ける自分のことも嫌いだった。それが今は、とても快適な気分なんだ。たくさんのことを学んで、自分を素直に認め、コメントできるようになった」

21歳にして、こんな発言をしてしまうローガン。彼の現在の“性格の良さ”は、子役時代からの多くの苦闘を経た末に、手に入れたものなのかもしれない。すでにヒュー・ジャックマンの精神の域に達している可能性も…。

同性の共感も誘う、希有な存在感

この秋、ローガンの主演作がもう一本、日本で公開される。『ウォールフラワー』だ。

「ハリー・ポッター」シリーズを卒業したエマ・ワトソン、『少年は残酷な弓を射る』の個性派若手俳優エズラ・ミラーと共演したこの青春映画でローガンは、先の『パーシー・ジャクソン〜』でのコメントをなぞるように、多くの屈折を抱えた主人公が、壁の花=ウォールフラワーから、友情と勇気によって人生を新たに踏み出すドラマを、まっすぐに演じている。彼の俳優としての成長も鮮やかにシンクロし、観ているこちらの心を激しく揺さぶってくるのだ。

こう言っては失礼だが、「正当派イケメン」とは違う親しみやすいマスクゆえに、とくに同性からの共感を誘うのもローガン・ラーマンの持ち味。『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々/魔の海』と『ウォールフラワー』の連続公開で、日本でもファンが増えてくれればいいと思う。「将来は映画を撮りたい」と、撮影現場ではつねに監督の仕事ぶりを観察しているようで、何年後かには、ジョージ・クルーニーやベン・アフレックのような存在になってもらいたい。そしてその時まで、現在の性格の良さを維持してほしいものである。

パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々:魔の海

11月1日(金)映画サービスデー TOHO シネマズ スカラ座他全国ロードショー

(c)2013 Twentieth Century Fox.

ウォールフラワー

11月22日(金)TOHO シネマズ シャンテ他全国ロードショー

映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、ヤングマガジン、クーリエ・ジャポン、スクリーン、キネマ旬報、映画秘宝、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。

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