冬場のワカサギ釣りに潜む危険 極寒の水に落ちたときの対処法は(1月10日16:30図追加版)

湖での氷上のワカサギ釣りの様子(写真:Fujifotos/アフロ)

 ワカサギ釣りのシーズン真っ盛りです。この3連休に出かける方も多いと思います。大自然の風景を楽しみながら遊び、釣れたワカサギは天ぷらや唐揚げにして美味しく頂けます。今季は暖冬の影響で、ワカサギ釣りの楽しみ方がいつもと少々違うかもしれません。太陽が暖かくて気持ちがいいからと言っても、水温はだいぶ冷たい。例年なら隠れて見えない、思わぬ危険をチェックしてみませんか。

ワカサギ釣りの場所選び

 管理釣り場と自由釣り場があります。管理釣り場では、管理人が魚資源ばかりでなく、氷の厚さをチェックしたり、安全な釣り環境を確保したりしています。自由釣り場には、それらがありません。

 管理釣り場によっては、屋形船やドーム船をシーズンに準備して、快適な環境の中で釣りを楽しめるようにしてあります。船の中では、雪や雨、風や冷気を遮断して、ストーブで暖をとれるようになっており、快適な状態でワカサギ釣りを楽しむことができます。

今年の冬は潜む危険に注意

 今季、暖冬傾向の地域が目立ちます。いつもの冬なら暖かい屋形船内とか、十分な厚さの氷の上とかで楽しむワカサギ釣りですが、中途半端に気温が上がっているため、暖かな陽ざしのもとで屋形船からボート釣りに変えたり、桟橋釣りに変えたりしがちです。

 屋形船やドーム船の内部は落水しづらくなっていたり、落水してもすぐに上がれるようにしたりしてあります。ところが、ボートや桟橋では落水の危険性が高くなります。一方氷上では、今後気温が下がってきたとしても、氷の厚さが安全値に達せず、あるいは厚さが一定せずといった危険が潜みがちです。

だから、こんな工夫を

 要するに、落水しないように工夫しましょう。

 手漕ぎボートではボート内で立ち上がったり、歩いたり、強い風を受けたり、高い波を受けたりすると傾いたり、転覆したりして、落水します。ボートが安定するように常に体の姿勢を低くしておくことが重要です。

 桟橋では凍った表面で滑ったり、強風で物や体が飛ばされたりしないように心がけます。

【参考】冠水地域で活躍する小型ボート 被災地の状況に合わせた操船が必要

 万が一の落水に備えることも重要です。

管理人が常駐し、管理された釣り場で楽しむ

 事故の起こりやすい箇所に入らないように気を付けてくれます。また、事故が発生したら、すぐに救助のための手配をしてくれます。

ライフジャケットを着用

 冷水に落ちると、ただちに呼吸が荒くなり、つまりコントロールが効かなくなります。これを冷水刺激過呼吸といいます。ライフジャケットで顔が水面に出るようにします。

携帯電話で緊急通報できるように

 陸にいる人が救助隊を呼ぶことに使えます。また防水スマートフォンも増えています。水の中からでも直ちに救助隊を呼ぶことができます。

頭と両手の保温を十分に

 冷水で頭と両手が冷えないようにします。陸にいる人は厚手の帽子や手袋を渡します。

冷水と氷に潜む危険について少し詳しく

 桟橋からの落水や、氷が割れて落ちる場合も含めて、冷水に落水すると命の危険に直結します。その理由は落ちたことにより引き起こされる様々な現象によります。

落水直後の過呼吸

 冷水の刺激によってただちに過呼吸が始まります。体が慣れるまで数分くらいは続きます。この時に顔が水に浸かると水を誤嚥することになり、窒息の原因になります。

しばらく後の筋肉の硬直

 溺水時に、絶対に冷やしてはいけない体の部位があります。頭と両手です。まず両手からお話しすると、冷えて筋肉の動きが鈍くなり(これを硬直といいます)両手が動かなくなります。自力で船に上がるとか、陸に近づくとか、最後の手段が使えなくなります。特に前腕と手部は熱放散しやすく、さらに緊急時には熱の供給が遮断されるので、すぐに冷えます。

さらに冷えると意識消失

 頭部も熱放散しやすい部位です。ただ、緊急時には熱を供給し、最後まで冷えから頭部を守ろうとします。冷えなければ意識は保てますが、いよいよ頭部も冷えてしまうと意識がなくなります。

 上述のうち、冷水中での過呼吸と筋肉の硬直については、筆者も体験済みです。両方とも頭でコントロールすることが不能となり、パニックの要因に十分なり得ます。なお、図1に体の冷えをわかりやすく図示します。データにつきましては、下の参考資料より引用しました。(1月10日16:30追加)

図1 低温環境下における人体の表面温度とおおよその熱放散度合い。頭部には最後まで熱が与えられるが放熱も激しいため、冷水でできるだけ冷やしたくない。手部は熱が与えられないばかりでなく放熱も激しく、すぐに動かなくなる。そのため、冷やしたくない。(筆者作成)
図1 低温環境下における人体の表面温度とおおよその熱放散度合い。頭部には最後まで熱が与えられるが放熱も激しいため、冷水でできるだけ冷やしたくない。手部は熱が与えられないばかりでなく放熱も激しく、すぐに動かなくなる。そのため、冷やしたくない。(筆者作成)

参考

 森本武利、”ヒトの体温調節”、繊維製品消費科学 44巻5号(2003) 256

 大森敏明ら、”対流―放射連成解析による人体表面の対流熱流束の予測”、生産研究 54巻1・2号(2002) 24

 2017年2月に岩手県のため池で4人の方がワカサギ釣り中に亡くなりました。氷の張った自由釣り場でしたが、氷が割れて次々と落水しました。一般的に人がのっても割れない氷の厚さは5 cm以上、安全率を見込むと10 cm以上です。ただ、これは次のような条件が成り立っての数字です。図2もご参照ください。(1月10日16:30追加)

氷の直下に隙間がないこと

 水の上に直接氷が張っていること。水面と氷との間に隙間があると氷は割れやすくなります。なぜかというと、氷と水で体重を支えるからです。

氷の厚さが一定であること

 少し暖かくなってくると、岸に近い方がむしろ氷が薄くなっていることがあります。要するに氷の厚さは常にまちまちです。

穴や亀裂がないこと

 材料工学では、これらを破壊源といいます。どんなに強い材料でも小さな傷や穴があると、そこから破壊が始まります。強度は10分の1以下に下がります。先日、ロシアで氷の上に駐車してあった車が次々と水に沈んでいきました。これは一台の車の下の氷が割れて、破壊が次々と伝搬して多数の車が沈んでいったと説明できます。

参考 氷上釣り客の車約40台が水中に... 気温上昇で氷が耐えきれず

 氷上釣りでは、穴があちこちにあいているのがあたりまえです。アイスドリルという穴あけ器具で穴をあければ、ヒビを作らずに氷に穴をあけることができます。ただ、全ての人がそのように穴をあけるとは限りません。大きな穴やヒビが広がる穴がすでにある場合には、要注意です。

 子供連れなら、子供が氷の上を走り回らないように注意しなければなりません。そのようにして、割れやすい氷にのり、落水した事故が北海道でありました。

図2 ワカサギ釣りの時に気を付けなければならない氷の危険性(筆者作成)
図2 ワカサギ釣りの時に気を付けなければならない氷の危険性(筆者作成)

万が一落水したらどうするか

 周囲の人は、とにかく落水したら119番通報して救助隊を至急呼びます。落ちた人に厚手の帽子や手袋を渡します。

 本人は、ライフジャケットの浮力でまず浮いて、過呼吸が収まるのを待ちます。冬季のワカサギ釣りでは、厚手の防寒具を着ている場合が多く、ライフジャケットがなくても浮く場合があります。あきらめずに図3のように背浮きになってください。冷水が背中に入り冷たいですが、じっとしていると体温で水が温まり、体温の奪われる時間を稼ぐことができます。

 後頭部が冷水に浸からないように少しだけ頭を挙げます。できれば、前腕から手部にかけても冷水に浸からないようにします。頭部も手部も上げることで体が沈むようなら、前腕は水に浸かってもかまいません。

 桟橋やボートからの落水だと、上陸が極めて厳しくなります。水面からの高さが10 cmまでなら腕力で上陸できますが、それ以上は梯子がなければ上がれません。

 氷が割れて落ちたら、背浮きのまま氷に近づき、のれそうなら腹ばいになって氷上に這い上がります。

図3 冷水での背浮き例。頭の帽子と両手の手袋が熱放散を防ぐ。また防寒具はよい浮き具になるので、ライフジャケットがなくても浮く場合がある(筆者撮影)
図3 冷水での背浮き例。頭の帽子と両手の手袋が熱放散を防ぐ。また防寒具はよい浮き具になるので、ライフジャケットがなくても浮く場合がある(筆者撮影)

まとめ

 大自然の中のワカサギ釣り。今季は暖かい冬だといっても、水の中は冷たいです。とにかく落水しないように十分気をつけたいものです。人や車がのっても割れない氷の厚さのデータや冷水中の人の生存可能時間のデータについては、「暖かい冬は氷が薄い。そして冷水には危険が潜んでいる」を参考にしていただければ幸いです。