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即席雪かき道場2024年版 コンパクトかつインパクトのある雪かきはこうあるべき

斎藤秀俊水難学者/工学者 長岡技術科学大学大学院教授
雪国の人でも滑る所からさらに滑る所に足を置いた瞬間にしりもちをつく(筆者撮影)

 今シーズンに入り本格的な雪に見舞われた関東甲信。都心でもこの夜半は雪景色でしょうか。すでに深夜に入り、自宅に戻った方々がこの記事を読んでいる時間でしょう。明朝、この積雪が凍ってさらに滑ります。雪国の住人が言うのですから間違いありません。さて、その固い雪をどうやって片付け(雪かきす)ればよいでしょうか。

コンパクトかつインパクトのある雪かきとは

 雪が積もって地面の表面で固まり氷となれば、どこでも滑るものです。全てを雪かきしていたら、氷のような雪の重さに耐えかねて片付ける身が持ちません。そこで、コンパクトかつインパクトのある雪かきを実施し、身体への負担を少なくしつつスリップによる転倒事故を防止しましょう。

 ポイントは、一点集中。特に家の玄関先での雪かきをしっかりすることにつきます。雪国でも玄関先が最もよく滑ってけがをする箇所として知られています。カバー写真をご覧ください。玄関先のこのような段差は特に要注意です。上段は完全に凍っていて、めちゃくちゃ滑ります。一方下段も滑るのですが、滑る程度が違うのです。そのため、下段をそろりと歩き、同じように滑ると思って上段に足をかけた瞬間、雪国の人でもすってんころりとしりもちをつきます。筆者はここで腰を痛めました。

 人は、歩いていて滑らない経験が続いている時、いきなり滑る地面に足を着地させるとすってんころりんと転倒してしまいます。この現象は、子供がプールサイドを走っていて、プールのオーバーフローに足をついた瞬間に滑って転倒する現象でよく知られています。

「ペンギン歩きで滑らないように」と啓発ニュースが流れているところではありますが、滑らない部分から滑る部分に一歩を踏み出した時、ペンギン歩きでも転びます。とにかく、一日の始めの一歩となる自宅の玄関前の階段の雪かきが基本中の基本の場所になります。

実技演習

◆階段の雪かきー 明朝一番の仕事

 図1(a)をご覧ください。ここは段差とともに面積のある階段になります。雪が積もった後に少し人が上り下りをして、すでに固まって地面にへばりついています。こうなる前に、やわらかい雪の状態のうちにスコップを使って雪かきをしておくことが重要です。

 でも、全ての雪をかくとなると身体にかなりの負担がかかるのと、除雪した雪の処理に困ることになります。そこで図1(b)のように、最小限の人の通り道の幅だけ雪をかく方法があります。こうすれば、課題はいずれも解決することができます。

図1 家の前の階段の雪かき。人の通り道だけを作れば雪かきの負担が少ない(筆者撮影)
図1 家の前の階段の雪かき。人の通り道だけを作れば雪かきの負担が少ない(筆者撮影)

◆道つけ- まだやわらかい雪のうちに

 平面の通り道であれば、スノープッシャーでいっきに雪かきをする方法があります。動画1をご覧ください。湿った雪であれば片道一回でほぼ人の通り道を作ることができます。ただし、この方法も雪が冷えて固まると使えなくなるので、雪が降っている中で行う作業になります。

動画1 スノープッシャーでいっきに道つけする方法(筆者撮影、30秒)

◆固くなった積雪には融雪剤

 カチカチに固まった日陰の残雪に人力はそうそう歯が立たず、プラスチックの除雪器具ごときで削ろうとしても片付けられるものではありません。そういうやっかいな残雪にはホームセンターなどで手軽に入手できる市販の融雪剤をまいて、融かしてからきれいに片付けましょう。

 市販の融雪剤は小さなツブツブ、顆粒の形状です。固まってカチカチになった雪の上にまくとただちに雪を融かしていきます。図2をご覧ください。下の写真の紫色のスノープッシャーの先端の少し先の積雪の部分を見てみると、アリの巣の出入り口のような小さな穴がポツポツと点在していませんか?融雪剤の顆粒は上のイメージ図で表現されているように、穴を掘るかのようにして、カチカチの雪を表面から融かしていくのです。そのため、小さな穴を固い残雪の表面に見ることができるのです。融雪剤をまいてから少し時間を置くと雪がサクサクのシャーベット状になり、写真にあるようなプラスチック製のスノープッシャーでも比較的簡単に除雪することができます。

図2 上:融けた水が融雪剤から地面に向かって流れ落ちる様子を描いた断面イメージ図、下:地面から固い雪をはがしながら片付ける様子(筆者撮影)
図2 上:融けた水が融雪剤から地面に向かって流れ落ちる様子を描いた断面イメージ図、下:地面から固い雪をはがしながら片付ける様子(筆者撮影)

 取り除いた雪の塊を側溝に詰め過ぎないようにします。側溝の水の流れは、雪の塊を流すようにはできていません。側溝に流れる水を、雪の塊がどこかで止めてしまったら、その周辺は大洪水になる場合もあります。雪国でもシーズンごとに床下浸水事故が発生するくらいのひどい目に遭います。

 雪捨てに水路を使うときにも要注意です。新潟では今シーズンに入り雪捨て中と思われる水路転落死亡事故が2件発生しています。雪の水路の水温は零度近くになることもあります。足だけ浸かったとしても、陸に這い上がれなければ、数時間も命が持たないかもしれません。

さいごに

 明朝はいつもより早く起きてまずは自宅の玄関先の除雪から始めましょう。

水難学者/工学者 長岡技術科学大学大学院教授

ういてまて。救助技術がどんなに優れていても、要救助者が浮いて呼吸を確保できなければ水難からの生還は難しい。要救助側の命を守る考え方が「ういてまて」です。浮き輪を使おうが救命胴衣を着装してようが単純な背浮きであろうが、浮いて呼吸を確保し救助を待てた人が水難事故から生還できます。水難学者であると同時に工学者(材料工学)です。水難事故・偽装事件の解析実績多数。風呂から海まで水や雪氷にまつわる事故・事件、津波大雨災害、船舶事故、工学的要素があればなおさらのこのような話題を実験・現場第一主義に徹し提供していきます。オーサー大賞2021受賞。講演会・取材承ります。連絡先 jimu@uitemate.jp

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