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MotoGPでKTMが大躍進、その強さの秘密とは!【後編】

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
※記事内の画像出典元:motogp.com

今シーズン、MotoGPで大躍進を続けるKTMの強さの秘密に迫る第2弾。後編ではライダーにスポットを当ててみたい。

KTMの秘蔵っ子、ビンダー

前編でも伝えたように、KTMのMotoGPマシン「RC16」はシーズン4年目にして、ライバルを凌駕するほどの戦闘力を発揮し始めた。

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一方で、今年MotoGPクラスにルーキーとして登場したブラッド・ビンダーの実力も認めるべきだ。南アフリカ共和国出身の24歳で、2009年からレッドブルMotoGPルーキーズカップに参戦を開始。その後GP125からMoto3へ乗り換え、2016年にはKTMのマシンでMoto3クラスのチャンピオンに。

2017年からはMoto2クラスにチームはステップアップすると、引き続きKTMから参戦。初年度でランキング8位、次年度に3位、3年目となる2019年には5勝を挙げランキング2位を獲得すると、2020年から最高峰クラスに昇格。そして、わずか3戦目にして今回の快挙となった。

ビンダーはそのレースキャリアのほとんどをKTMと共に歩んできた、いわばKTMの秘蔵っ子であり、歳は若いがKTMを知り尽くしたベテランという見方もできる。

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さらに昨年のオフシーズンには、ダニ・ペドロサ(KTMテストライダー)のコーチングを受け、MotoGPマシンを乗りこなすためのノウハウを徹底的に学んだらしい。後進育成という意味でもペドロサの貢献度は計り知れない。

KTM勢による表彰台争いが日常化

さらに、KTMの地元オーストリアで開催された第6戦スティリアGPではKTMのサテライトチームから参戦しているオリベイラ(レッドブルKTMテック3)が最終ラップまでもつれた接戦を制して優勝。競り合いの末、痛恨のミスで後退したポル・エスパルガロが3位となりダブル表彰台を獲得。

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第6戦終了時でコンストラクターポイントでもヤマハ、ドゥカティに次ぐ3位に浮上している。KTMの実力はもはや伝統的な強豪ファクトリーチームと肩を並べるレベルに迫っていると考えていいだろう。

マルケスの不在、コンセッションも有利に

ただ、そうは言ってもレースは何が起こるか分からない。事実、絶対王者のマルク・マルケス(レプソル・ホンダ)が負傷欠場している今、MotoGPクラスの勢力図は本来の実力どおりになっていないという意見もある。その中で頭角を現し始めた新進気鋭の若手ライダーたちが、「マルケス不在の今がチャンス」と勝ちに急いでいる。

それがここ数戦のラフプレイとも言うべき、激しすぎるバトルの末のクラッシュという展開にもつながっているようだ。

「コンセッション」もKTMに有利に働いてきた。これは簡単に言うと優遇措置で、2013年から新たに参戦しながら勝利のないメーカーに適用されるもの。シーズン中に使えるエンジン基数やホモロゲ制限の緩和、テスト走行やワイルドカード回数といった部分でアドバンテージが与えられている。その分、マシン開発を急ピッチで進められたわけだ。

今シーズンはKTMとアプリリアがコンセッションを得ていたが、ただし、すでに今期2勝を挙げたことでKTMのコンセッションは消滅。来シーズンは強豪ライバルたちと同じ条件でレースを戦うことになるはずだ。

いずれにしても、KTMの大躍進によってMotoGPの見どころが増えたことはファンとしては嬉しい限り。今週末のサンマリノから始まる3連戦にも注目したい!

※原文より筆者自身が加筆修正しています。

画像出典元:motogp.com

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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