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ハーレーダビッドソン「新型ブレイクアウト」人気NO.1パワークルーザーの実力とは!?

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
BREAKOUT 2023年モデル 画像出典:Harley-Davidson

排気量1900ccオーバー、航続距離も100km増しに

先日都内でハーレーダビッドソン2023年モデルの目玉、「新型ブレイクアウト」が初お披露目された。プレゼンターとして登壇したハーレーダビッドソンジャパン代表取締役の野田氏によれば、昨年は年間登録台数で久々に1万台を超え、米国以外での国際マーケットでもトップとなる販売台数を達成。「日本バイクオブザイヤー2022」外国車部門でも2年連続でアワードを獲得するなど絶好調が伝えられた。2023年はハーレーダビッドソン誕生120周年の記念すべき年であり魅力的なニューモデルが続々登場する予定だ。

ハーレーダビッドソンジャパン代表取締役の野田氏
ハーレーダビッドソンジャパン代表取締役の野田氏

その第一弾が日本でもトップクラスの人気を誇る「ブレイクアウト」の最新モデルである。煌びやかなクロームバーツに彩られた伸びやかで筋肉質なモダンチョッパースタイル、工場ラインから出た時点ですでにカスタムが完成したような美しいデザインが目を惹く。まさにキング・オブ・ザ・クルーザーに相応しい豪奢な佇まいである。

新型のポイントは大きく2つ。まず伝統のVツインエンジンが新設計となり従来のミルウォーキーエイト114から117へと進化。排気量も従来の1868ccから1923ccへと拡大した。改良型ヘビーブリーザーインテークによる吸入効率アップでエンジンパフォーマンスがさらに向上。

また、フューエルタンクが新デザインとなり容量も13.2Lから18.9Lへ拡大し、航続距離も100kmほど伸ばした。従来型でも十分すぎるスペックではあるが、そこに留まらないのがハーレーである。アメリカ本国からの「モアパワー&モアディスタンス!」の要望を受けてさらなるバンプアップを実現した。

デザイン面でも新型キャストホイールにクロームパーツをふんだんにあしらうなど、見た目もより力強くスタイリッシュに。ハーレーファンでなくとも所有欲をくすぐられる出来栄えである。車体色はハーレーのテーマカラーのオレンジを筆頭に4色を用意。メーカー希望小売価格は326万4800円(税込)で先代からは11万円ほどアップとなっている。

スペシャルゲストで格闘家の魔裟斗さんが登壇。「たまたま近所のハーレーの店で見たブレイクアウトにひと目惚れ。新型が出ると聞いて、ならば大型二輪免許を取って是非乗ってみたいなと……」
スペシャルゲストで格闘家の魔裟斗さんが登壇。「たまたま近所のハーレーの店で見たブレイクアウトにひと目惚れ。新型が出ると聞いて、ならば大型二輪免許を取って是非乗ってみたいなと……」

パワーだけでなくハンドリングと快適性も向上!?

ブレイクアウトの先代モデルがデビューした2017年、実は自分も海外メディア試乗会で乗っている。そのときの印象も踏まえて新型モデルの走りを予測してみたい。

当時、新世代ソフテイルファミリーとして生まれ変わったブレイクアウト。地を這うようなロー&ロングのシルエットに巨大エンジンが剥き出しで鎮座するド迫力のシルエットに圧倒された。排気量1868ccのVツインが叩き出す怒涛のトルクに乗せて240サイズの超ワイドタイヤが路面を掻きむしって加速する様は、強者ぞろいのハーレーの中でもとりわけ過激な一台と思った記憶がある。剛性を大幅に高めたシャーシと低い車体に加え、エンジンがフレームに直接マウントされるため鼓動感もダイレクト。それでいて高精度デュアルバランサーのおかげで不快な振動も少ない。過激なドラッグマシンにして悠々と街をクルーズしても楽しい懐の広いマシンだった。コーナリングも独特で図太いタイヤ故に倒し込みでは手応えがあるが、そこを大胆なアクションでねじ伏せて走るのが醍醐味。旋回中は広い接地面がしっかりアスファルトを捉えている安心感があり、フロント21インチの巨大ホイールの慣性力によって抜群の安定性を誇る。そして、乗るほどにハーレー流のスポーツマインドが伝わってくる硬派なマシンだった。

2017年にデビューした先代ブレイクアウト海外試乗会にて。ライダー:筆者
2017年にデビューした先代ブレイクアウト海外試乗会にて。ライダー:筆者

今回の新型ブレイクアウトも期待感しかない。その理由として、伝統のVツインエンジンはシリンダー径を102mmから103,5mmへと拡大し排気量を1868ccから1923ccへと55cc増やし、最大トルクも155Nmから一気に168 Nmへと上昇。最高出力も94 HP / 70 kW @ 5020 rpmから102 HP / 76 kW @ 5020 rpmへと大きく向上している。

一方で車重は5kg増しの310kgへ。キャスターやトレール、ホイールベースやシート高などのディメンションは従来どおりなのでハンドリングは大幅に変わることはないと思うが、やはり注目すべきはトルクの太さ。トルクとは簡単に言うと車体を押し出す力そのものなので、通常トルクが増すとアクセルに対して車体が機敏に反応するようになる。車重増加分を差し引いても、弾けるトルクによってハンドリングもより軽快になっているはずだ。

2023年型ブレイクアウト。見た目だけでなく走りもグレードアップしているに違いない。
2023年型ブレイクアウト。見た目だけでなく走りもグレードアップしているに違いない。

加えてビッグタンクの採用により航続距離が大幅に伸びたのは大きい。日本でも最近はガソリンスタンド数が減りつつあり、高速道路でも地方ではサービスエリアの間隔が離れている場合も多く、航続距離にして100kmも多く稼げる安心感は大きい。それとともにライザーによってハンドル位置も高く快適なライポジになったことも見逃せないポイント。つまり、本来のパワークルーザーとしての怒涛の加速を楽しむだけでなく、のんびりと長距離を旅するツーリングクルーザー的な使い方もできるモデルへと拡張性を高めたことが実は一番の魅力と言える。格段にプレミアム感を増したフィニッシュとも相まって、新型ブレイクアウトは価格以上のバリューを持った魅力的な一台となりそうだ。

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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